インタフェースデザインの心理学 「人はどう記憶するのか」
「インタフェースデザインの心理学」で紹介されている100の方針を実例とともにまとめました。この記事では3章の「人はどう記憶するのか」に関連する8方針を見ていきます。
人はどう記憶するのか
019 ワーキングメモリの限界
「ちょっと覚えておく記憶」− 1分足らずの間だけ覚えておくと きに使う記憶− のことを「ワーキングメモリ」と呼ぶことにします。単位時間内に処理している感覚系からの入力量とワーキングメモリと のあいだには、一方が増加すれば他方が減少するという逆の相関があります。
画面が変わってもユーザーが情報を覚えていると期待してはなりません。あるページで読んだ文字や数字を別のページで入力させるようなことをしてはなりません。例えばエラーコードを確認しに戻らせる設計は最良か?
ワーキングメモリにあることを忘れてほしくないなら、ワーキングメモリを使う必要のある課題を完了するまで、他のことをさせないようにしましょう。ワーキングメモリは「じゃま」に弱いのです。
020 一度に覚えられるのは4つだけ
人は気が散ったり、情報の処理を邪魔されたりしなければ、3 個あるいは 4 個の事柄 をワーキングメモリに覚えておくことができます。
例えば詳細情報を得 るためのリンクを表示する場合、その個数を 3、4 個にします。それ以上の選択肢を準備する必要がある場合は3、4個のチャンクに分ける。
021 情報を覚えておくには使うことが必要
記憶したことを短期記憶から長期記憶に移動させるにはどうすればよいのでしょうか。基本的な方法は 2 つ。何度も繰り返すか、すでに知っていることに結びつけるかです。
新しい情報がすでに記憶されている情報と結びつけられれば、しっかりと記憶すること、つまり長期記憶に入れることが容易になり、取り出しも容易になります。
提供する情報に関連するスキーマをユーザーがすでにもっていることがわかったら、そのスキーマを必ず提示しましょう。既存のスキーマに情報を結びつけることができれば、その情報を学び、記憶することが容易になります。
022 情報は思い出すより認識するほうが簡単
何年もかかって開発されたユーザーインタフェースのツールやガイドラインは、 ソフトウェアやアプリケーションを使う際の記憶への負荷を軽くしてくれます。こういった機能が製品の使い勝手 を向上させるのは、想起の必要性を減らしてくれるからというのが主な理由です。
023 記憶は知的資源を大量に消費する
情報について思考し、記憶し、処理し、説明し、記号化するには、知的資源を 大量に消費します。
具体的なものを表す単語(テーブル、椅子)のほうが、抽象的なものを表す単語(正義、 民主主義)より長期記憶として覚えやすいです。
言葉よりも実際に見たもの(視覚的記憶)のほうが容易に思い出せます。
具体的な言葉や絵(アイコン)を使いましょう。抽象的な概念や画像より記憶しやすくなります。
024 記憶は思い出すたびに再構築される
出来事の記憶とは、その出来事を思い出すたびに改めて活性化される神経回路なのです。そのため、記憶は想起されるたびに変化する可能性があります。
ある製品について顧客をテストしたりインタビューしたりする場合、言葉を慎重に選 びましょう。使う言葉によって相手が「思い出す」ことや相手の答えが影響される可 能性があります。また、過去の行動についての自己申告を信用してはなりません。人は自分や他人がしたことや言ったことについて、正確には記憶していないものです。
025 忘れるのはよいこと
相手が情報を覚えているものと思わないようにしましょう。必要な情報は、その場で提供するか簡単に見つけられる方法を提示しましょう。
026 鮮明な記憶でも間違っていることがある
ドラマチックな経験や、心的外傷を負うような体験は、そのほかのことよりもより鮮 明に、より本当らしく記憶されます。こういったドラマチックな経験や、心的外傷を負うような体験の記憶には間違いが入 り込みます。
体験の記憶がいくら本当らしく思えても、その長期記憶が「正確な真実」とは言い切 れないことを頭に入れておく必要があります。インタビューで何かを思い出してもらうときには、相手が起こったと言う事柄の中に 不正確なものがある可能性を忘れてはなりません。
次回
ご一読ありがとうございました。
次は6章「人はどうすればヤル気になるのか」についてまとめます。
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