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なぜ、自己犠牲的な働き方をやめられないのか?③

献身的、だれかのために尽くす、
自分の能力や時間・お金を惜しみなく投じる…

教員の中には、
お腹の空いた子供のために
自分の頭をちぎって与えるアンパンマンのような人がいます。

でも、それが行き過ぎて、
自分の心身をすり減らすような働き方は誰も幸せにしません。

頭ではわかっていても、やめられない人が本当に多い。

そういう人は「自分がなんとかしなければ!!」という思いが強すぎるのだと、
前回のコラムで触れました。

今回は、さらにもう一つの特徴を挙げたいと思います。

それは「いい人すぎる」ということ。
もっといえば、自己犠牲的な働き方をする人は、
誰かにとって「都合がよすぎる」人なのです。

平日の超過勤務や土日の部活動。
保護者の対応や一人ひとりの子どものケア・・。

学校のため、生徒のため、という思いは立派ですが、
残業代も手当もろくに出ない今の労働環境の中で、
それをやるのは、いい人すぎます。
いや、学校や生徒のために都合がよすぎないですか??

具体例を挙げてみましょう。
ご存知の通り、教職員は残業代が支給されません。
教職という特性上、残業することを織り込んで、
「教職調整額」が支払われています。

ちなみに以前の僕の調整額は15000円弱でした。
残業時間は平均 月70時間でしたので、
単純に割ると、時給214円。
冗談でも笑えない額です。

「定額働かせ放題」という言葉がありますが、
子どものために身を尽くす職員は、
社会や子どもにとって、あまりに都合良い扱いを受けている、
という捉え方もできるのです。

それだけではありません。
自己犠牲的な働き方は実は、生徒もあなたも幸せにしていません。

「お腹すいた〜」といえば、
あなたがパンをくれる状況は、子どもにとって都合がよすぎています。

その子どもは、
いつか、あなたと離れ離れになるときにそなえて、
本当は、自分でお腹を満たす術を手に入れなければならないのに、
なまじあなたがパンを与えてくれると、
それに甘えてしまうのです。
食料を調達する方法、仲間と協力する能力が一向に育たなくなります。

空腹は苦痛ではありますが、
苦痛を回避するときこそ、人間はエネルギーを発揮するもの。

安易にあなたがパンを与えてしまうばかりに、
子どもの生きるエネルギーを奪ってしまっているとしたら、
それは本末転倒の教育になっています。
まして、あなたは自分のパンをちぎって、あなた自身を損ねているのですから、
誰も得しません。

あなたは「いい人」なのですが、
実は「目先がいい」ことにしか目を向けていないのかもしれませんよ。
いっときは、相手も喜んだ表情を見せてくれますが、
「都合がよすぎる人」というのは、
やってくれて当然、やってもらうのがデフォルト状態になっているので、
あなたがやらなくなると途端に不満が噴出します。

あなたが「都合がよすぎる人」のとき、
実は、相手も「都合がよすぎる人」です。

あなたにGiveするものがなくなったとき、
都合が悪くなったときには、
容赦なく、あなたのもとを離れていきます。

それはそれは、
寂しいし、恐ろしい人間の残酷な一面です。

あなたは、そんな状況をイメージしていませんか?
だから、「与える」「尽くす」ことがやめられなくなっているのです。

結果的に、ますます「都合がよい人」に陥ってしまいます。

自己犠牲的な人は
「Giveすること」に価値があると思い込みすぎていて、
「Giveしない自分」は許せない、認められない、
それでは誰にも愛されない、という恐れが潜んでいるのです。


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