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「人を動かす力」があるのは「自分の言葉」で語れる人

23年度まで広島県で教育長をされていた平川恵理さんが5月からVoicyを始められて、それを聴きながら感じたことについて。

平川さんは、本来人が持っている「学びに対する好奇心」を生涯生き生きと持ち続けることができるよう、身近な小学校・中学校の公立学校にいくつかの選択肢を持てるようにと教育改革を進められて来られた方です。
私はVoicyで野本響子さんと対談をされているのを聞いて、初めて平川さんのことを知りました。

平川さんが固定概念にとらわれず、子どもにとって良い教育の場を作り上げることへの信念を曲げず、情熱とそしてユーモアや遊び心を持って周りを動かしていく姿勢を持たれた方で、お話を聞いていると「こんな方がおられるのか」と明るい気持ちになるとともに、自分にも小さなことからでもできることがあるのではないかと思わせてくれるパワーを感じさせてくれます。

平川さんのお話の中で、私が好きなエピソードの1つは、公立学校の中に不登校の子どもや、通常の教室に行くのがしんどいと感じる子どものための居場所となる教室を1室つくった時のことです。

教室の名前はとても大事、と言うことで当初担当教員が出した案である「ステップアップルーム」を仮案として(平川さんはこれを「この名前はダサいけど、おじさんおばさんが考えたって出てこない」と話しています)、子どもたち自身にどんな名前だったらいいかを考えてもらっています。 子どもたちから出てきた本音に、私は「なるほど、そうだよね…」と深く納得でした。
子どもたちは、自分たちがその教室に行くとき教室の名前を口にする時、暗号のような名前がいい、と言ったそうです。

子どもたちにとって、スパイが使うような秘密のコードを言って通常教室を後にする、というのはドラマのワンシーンのように素敵です。そこには、確かに子ども自身が主人公になるシーンが存在します。

大人が押し付けた教育支援学級とか、かがやき、とかすくすく、とか子どもにとったらダサくてその言葉を使うだけでザコい自分にならざるを得ない名前。
教室の名前なんて、とないがしろしていて立ち止まって考えることがなかった自分の感覚がどんなに無感覚になっていたか、と言う気づきと、子どもたちの本音を引き出す平川さんの人として真っ直ぐな姿勢に胸を打たれました。

教室の名前はSSW (スペシャル・サポート・ホワイトルーム)となったそうです。「ホワイト」が出てきたのはその部屋を作るにあたって先生たちや関係者が自分たちで壁をペンキで白く塗っていて、部屋が白かったから、と言う小さなエピソードも素敵です。

私の息子が不登校になって、学校にもう一度戻ることをトライしていましたが、うまくいかず、学校とはもういいと諦めて学校に何か期待することもやめていました。ただ波風立てず、学校に行かなければいけない時期をやり過ごし、それとは別に息子にとっての人生を探さねば、と。

息子の通う中学校にも特別支援の別室は準備してもらっており、そこに通学することができました。でも、通常教室に戻れることが良いという前提や、たくさんある課題やテストの中でどれかできるものがありますか?という問いかけ、つけようがない成績表を学期の終わりに渡される無意味さなんかに、学校の物差しで測ったときに息子はほとんど何もできていない、無価値な人間であるように無言で突きつけられるように感じ、私自身も苦しくなっていました。

学校側は学校側の理論で、息子にとって良かれと思うこと、彼らなりにできることを精一杯してくれてるのだと分かるだけに、彼らのルールや基準の中に身を入れるのは息子にとっても辛かったと思います。

平川さんのように子どもにとって何が良いのかを学校の中の人にも真摯に模索してくれている人がいるかもしれない、と今回思いました。もちろん、その方法が私たちに合わないではないかもしれませんが、改めて私は学校と話し合う機会を持ってみようと言う気持ちが湧いてきました。
なぜ特別支援の教室があっても、学校に行きたくならないのか。
何が息子と私を追い詰めているのか。
じゃあ私たちは学校にどういう支援をしてほしいのか。

今までちゃんと考えてなかったことを言葉にする作業をして、誰か手を貸してくれる人を身近なところから探していこうと思えました。

平川さんのように「人を動かす力」を持つ人というのは、こんなふうに自分の気持ちに正直であり、自分が矢面に立って道を切り開く覚悟があり、それでいてきちんと人を信じている人であるのだなと思いました。

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