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甘美なマルレーナのところへ: L'altra dimensione/ Måneskin

Måneskin、調子いいじゃん……

 いわゆる後方彼氏面というやつで腕組みしております。
ユーロビジョン2021の優勝を掻っ攫ったイタリアロックバンドMåneskin(マネスキン)が新曲「MAMMAMIA(マンマミーア)」を発表いたしました。全世界を熱狂させるようになって初の新作リリースにふさわしく、英語での作詞。彼らの曲をイタリア語で楽しんできたもので、飛躍が嬉しいやら、寂しいやら。またイタリア語の曲も作ってくれよな……というわけで、今回はイタリア語の過去作品L'altra dimensione/別の次元へ」の歌詞を読んでいこうと思います。

L'altra dimensione の歌詞を
和訳してみる

 まずタイトル「L'altra dimensione」というのは「別の次元」という意味なのですが、歌詞の方を見ていると〈scappo via in un'altra dimensione/私は別の次元へと逃げる〉という表現で使われているので、それに習ってタイトルも「別の次元へ」と〈へ〉を付けさせていただいております。

E adesso giuro faccio le valigie
E scappo via in un'altra dimensione
Son stanco delle vostre facce grigie
Voglio un mondo rosa pieno di colore
Voi comprate amore con le carte Visa
Con le facce instrise sì ma di sudore
E adesso giuro faccio le valigie
E scappo via dalla dolce Marlena

さて、今、誓って荷造りをするよ
そして別の次元へオサラバするんだ
おまえらの灰色のツラにはウンザリだ
オレは彩りに満ちた薔薇色の世界が欲しい
おまえらはVisaカードで愛を買う
汗まみれの顔でな
さて、今、誓って荷造りするよ
甘美なマルレーナのところへオサラバだ

 メッセージそのものは分かりやすいですね。
 分かりやすいなかで気になってくるのが「マルレーナってどちらさま?」問題です。作品中での説明はありませんが、インタビューによるとマルレーナというのはマネスキンのメンバーが生み出した架空の女性で、彼らは彼女に美やメッセージを仮託しているのだとか。空想上のミューズですね。

Marlena sì portami a ballare
stasera Marlena, Marlena
Sì portami a ballare stasera Marlena
Marlena sì portami a ballare
stasera Marlena, Marlena
sì portami a bailar

マルレーナ、そうさ、オレを踊りへ連れてって
今夜、マルレーナ、マルレーナ
そうさ、踊りに連れてって、今夜、マルレーナ
マルレーナ、そうさ、踊りにつれてって
今夜、マルレーナ、マルレーナ
そうさ、オレを踊りに連れてって

 ここがサビにあたります。
 耳に残るので口ずさみやすいですよね。声に出していただけるように、マルレーナの名前以外のところをカタカナでご紹介しておきましょう。

portami a ballare/私を踊りに連れて行ってください
⇒ポルタミアバッラーレ

stasera/今夜
⇒スタセーラ

Amico mio devi essere felice
perchè il nuovo mondo sta per arrivare
E non c'è taglio non c'è cicatorice
che questa passione non possa curare
Io, io dalla polvere come Fenice
son risorto ed ho imparato anche a volare
Soltanto perché ho fatto le vagligie
Ed ho baciato la dolce Marlena

我が友よ、幸せでいてくれよ
だって新たな世界はすぐそこだ
切り傷も傷跡もない
この情熱は癒されない
オレは、オレは灰から不死鳥のように蘇る
オレは起き上がって飛ぶことも覚えた
ただ荷物をまとめただけで
そして甘美なマルレーナにキスしたのさ

 初級イタリア語学習者さんにご紹介しておきたいポイントといえば〈sta per arrivare/到着しようとしている〉あたりですかね。stare per +不定詞は「今にも~しかけている」という表現になります。
 ファンタジー作品好きの方なら「不死鳥」と聞くとわくわくしちゃいますよね。イタリア語で不死鳥は〈Fenice(フェニーチェ)〉です。ヴェネツィアの観光案内にしれっと載っているフェニーチェ劇場というオペラハウスも、和訳すると「不死鳥劇場」となっています。最初からこの名前のはずなんですが、もともと火災で焼失した劇場の後継施設として造られたうえに、自身も2度に渡って火災に遭った灰の中から甦っているんだから、名前に恥じないどころの騒ぎじゃないですよね。

Il ballo della vita
人生の乱舞だよ

 そしてシンプルながらも瞑想的なエンディングへ。
 このフレーズはそのままツアーのタイトルに採用されているので、きっとマネスキン的に重要な意味があるんだろうなーと思います。

 ちなみに英語で〈dance(ダンス)/踊り〉と最も近い単語は〈danza(ダンツァ)〉なのですが、ここで使われている〈ballo(バッロ)〉もまた踊りです。踊りは踊りなんですが、とくに ballo は〈舞踏会〉を表すことも多いので、この場合は人との関わりのなかで生きていく感じが表現されているのかも知れないですね。知らんけど。

 ちょっと短めになりましたが、今回はここまで。この曲を聴いてると、なんだか胸が熱くなるような、それでいてとろんと眠くなるような、不思議な気分になってきます。このいい気分をシェアできてたらいいんですが。

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