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【10代高校生】過食なしで低体重から回復

みなさんこんにちは4。
今回は「過食なしで、健康体重まで回復できる」という事例を紹介します。

摂食障害の方は一般的に、まず拒食期間のあとは、その反動で自然と過食になる、または治療のために体重を増やす過程を経て回復していきます。

私もよく、「拒食から回復するためには、自然な食欲に従って食べる期間が必要」というお話をします。いわゆる、「拒食回復期」と呼ばれる時期です。

多くの方は食欲をコントロールできなくなり「ムチャ食い」を経験しますが、中には無茶食いをせず回復できる方もいます。

その経験者の一人が、今回紹介する現在高校2年生のななさんです。

ななさんは私のクライアントさんで、現在通話4回が終了し、回復の最終段階に入っています。今回は回復までの道のりをインタビューし、過食をせずに回復できた理由を考察・解説したいと思います。

なんとななさん、めっちゃ丁寧にノートに記録をまとめてくださいました。貴重な資料をありがとうございます。ななさんの経験は、きっと多くの方に希望になると思い紹介させていただくことにしました。ご協力ありがとうございます。

【ななさんカルテ】
■症状:拒食回復期
■カウンセリング期間:2022年9月〜
■サポート内容
通話4回コース(週1回)終了後、継続(月1〜2回)

■プロフィール
149cm、現在41kg前後。通信制高校2年生。
拒食、運動強迫で最低31kg。
拒食で2回入院。無茶食いなしで、健康体重まで回復。
毎日2000kcalほど摂取できるが、食事のこだわり・会食恐怖がある
生理はまだ復活していない。
家族との仲は良好

【小中学生】〜摂食障害になるまで

まず、ななさんの摂食障害になるまでの歩みを紹介します。

お父様は単身赴任で離れて暮らし、お母様は2人の兄弟の野球観戦で忙しかったそう。きっと、お母様もお父さんに頼れず、「全部ひとりでやらなければ」という責任感から頑張っていたのかもしれませんね。
しかし、まだまだ甘えたりない小学生のななさんは、寂しさを抱えていたそうです。

中学生になり、両親に認められたい気持ちもあり、真面目に勉強をこなしオール5をキープ。いや〜すごい。なかなか全部完璧にやり切る人っていませんから、相当努力されたのでしょう。そして、そんな真面目な自分のイメージを崩すこともできず、次第に苦しさを感じるようになったそうです。

その裏で、ふつふつと「できない自分を知ってほしい、心配してほしい」という気持ちが大きくなっていったそうです。

そして、進学校に推薦が決まり、体系コンプレックスがあったため、ダイエットを始めました。ここから、摂食障害につながっていきました。

【高校1年】進学校についていけず拒食が悪化、入院

2021年4月 進学校入学(2月:51kg⇨4月⇨42kg)
レベルが合わず学年でworst3
毎朝体重が減っていくのが唯一の救い
学校では誰とも話さない

2021年5月 精神科受診
お母様と一緒にいる時間が長くなり嬉しかった
食事は豆腐とブロッコリー

2021年6月 入院(33.9kg)
家族がないてくれて、悲しいより嬉しかった

■1回目の入院生活

6月 33kg 800kcal〜1400kcal
7月 1600〜2200kcal
9月 39.4kg 退院

行動療法がとられる病院。体重を重視し、とにかく食事と体重を増やすことしか考えてくれない先生だったそうです。しかし、これが普通なんですよね。ほとんどの病院はこの方法がとられます。

このように行動制限をする目的は、自分自身の心に向き合うためです。

摂食障害さんにとって痩せるための行動をとることは、自分を傷つけないための手段であり、問題意識はほとんどありません。しかし、痩せるための行動をとることは、本当の問題から逃げていることを意味します。つまり、問題回避行動なんですよね。回避行動をとる限り心の問題に向き合えず、摂食障害は長期化します。
よく摂食障害の入院治療では、回避行動をやめさせるために行動制限を用いた治療を行います。回避行動を制限することで、心の問題に真剣に向き合わざるを得ない状況をつくります。そうして初めて当事者は「心の問題から逃げてはいけない」と気づくようになります。

行動制限を用いた入院治療は賛否両論ありますし、私自身も3回入院を経験して思うところはあります。ただ、心に向き合う必要性に気づくための行動制限は、必要だったと今では思うようになりました。

そういう意味でも、低体重からの回復のために、入院治療を行うことは私はアリだと思います。

ななさんは鼻チューブ、エンシュアから始まり、帰りたすぎて食事を800kcalから徐々に食べ、最終的に2200kcalまでカロリーアップ。39kgまで体重を増やしていったそうです。短期間で退院できたこと、努力の賜物ですね。

■退院後の悪化

9月 39kg
学校に行くも、誰とも話せないし、勉強もわからない

10月 不登校 運動強迫
雨の日も常にランニング、エアロビ、筋トレ、ラジオ体操、ゴミ出し、洗濯物、お風呂掃除

10月中旬 学校に行く決断
しかし、テストが全くわからず「痩せてみんなを見返す」と思うようになる

12月 通信制の高校に転校・バイトスタート 35kg
運動強迫が緩和、バイトのためにご飯を食べる

2月 マイルールが壊せない生活に疲れ始める
克服を決意するが、いざ体重が増えると許せない

3月 体も心も限界になり、再入院を自分から決意 33kg

ななさんの偉いところは、病気の声が強い中でも、「自分に見合った現実的な方法を考え続けた点」「外と接点を絶たなかった点」「限界を認められた点」だと思います。

よく、摂食障害が悪化し進学校をやめて不登校になると、引きこもりになるケースが多いです。私自身もそうでした。

不登校になり家にいることは、回復のための一つの手段であり、それ自体は悪いことではありません。しかし、どんなことにもメリットデメリットがあり、自宅療養もどちらの側面もあります。メリットで言うと、「学校から離れ、休養できる」という点。デメリットは、時間の余裕ができる分、病気の声が勝ちやすくなったり、目標を見失い元気になる動機が失われやすいという点です。

ななさんの場合は、通信制の高校に転校し、バイトをして、社会と繋がりを持ち続けたからこそ、「病気の声の限界」をしっかり感じることができたのだと思います。つまり、家にいたら好きなだけマイルールができたけど、学校もバイトもやりたい、となるとマイルールをやめなければならないと本能的に気付けますよね。その点で、社会と接点を持つことは大切です。(私は持つことができず、過食嘔吐が悪化し、回復が遅れました)

■2回目の入院

4月に再び入院。1600kcalから食事を始め、1ヶ月後には2600kcalのご飯を完食するようになりました。しかも、2600kcalを希望したのは本人だったそうです。

1回目の入院と大きく違う点は、主治医の先生が元当事者で病気に深い理解があったこと。また、退院体重を設定せず、心の問題にむきあうことに重きを置いたこともよかったですよね。痩せたい気持ちの裏にある心の問題に向き合い、健康な心を取り戻していった印象です。

退院時あたりから体重を教えてもらわないようにしているそうです。
(退院後から現在までだいたい41kgくらいだそうです。)

※2回の入院の意味

また、ななさんは入院を2回受けたことに意味があると私は感じます。
なぜなら、1回目に体重重視の治療を受け、「体重を増やすだけでは回復できない」と気付けたことが心に向き合うきっかけになったと思うからです。つまり、1回目の退院後から2回目の入院までに自分の心に向き合い、「無理せず生活できる方法」を考えた結果、「通信制の学校・バイト先・味方と感じられる家族」という、自分なりの安心できる環境をつくることができました。そこから、心の問題に向き合いながら体の治療をするために2回目の入院をしました。また、2回目は安心要素が用意された状態でのぞむことができたので、心に余裕を持ってじっくり自分と向き合えた印象です。

おそらく2回入院することは意図的ではなかったと思いますが、全てがつながっているなと感じます。

■退院後〜現在

退院後、学校に毎日通い、バイトも再開。自分のペースで少しずつ社会復帰していきました。
「病気がすべてではない」と思えるようになり、「10代らしい生活」を取り戻していきました。
「今の学校は嫌」と退院後は思っていたそうですが、今は「大学に行きたい」という新しい夢も見つけ、学校生活を楽しんでいるようです。

■カウンセリングの利用

9月末から私とカウンセリングを始めた時点で、回復ステージがだいぶ高い印象でした。

しかし、1番の問題は「お母さんの作ったご飯を2000kcal食べる」ことはできるけど、麺類やパン、外食が怖くてできない点です。また、夕食の時間は18:30には食べ始めたい、などのこだわりもまだありました。(生活面でのマイルールはほぼないようです)

カウンセリングでは徐々に食事の内容に変化をつけるために毎週、目標設定をしました。

しかし、私のアドバイスも吟味して、今の自分にでいないことは「できない」と伝えてくれたりと、適切な目標設定を自らすることができ、それにあわせて行動にうつすことができました。

例えば、
外食が怖かったけど、家族でうどん屋さんにいった
松屋でテイクアウトした
麺類が怖かったのに、焼きそばが食べられるようになった等

また、1番の大きな変化は「落ち込みが小さくなった・落ち込んでも立ち直るまでの時間が早くなった」点だと思います。人は誰でも落ち込みます。袖が軽いか、早く立ち直れるか、は一種のスキルですから。

■過食なしに回復できた5つの理由

(1)治療に踏み切るタイミング

早めに精神科受診をし、1回目の入院に踏み切るのが早かった点が英断でした。なぜなら、ここでずるずる悪化し、低体重の期間が長くなると、そのぶん反動で過食欲求がわきやすくなるからです。

また、退院後悪化しても「また入院すれば、せめて食事だけは安心して食べられる」と思えたことも、彼女の支えになったはずです。入院治療は賛否両論ありますが、「いざとなったら頼れる駆け込み寺」の存在を知っているだけでも、安心感は違うはずです。

(2)入院治療「2600kcal×心のケア」

2回目の入院生活が、非常に大きな効果を発揮したと感じます。
自ら2600kcalの食事を希望し、体の回復を促すとともに、元当事者の先生と信頼関係を築き、それが心の回復につながった印象です。

また、生理的な過食衝動がなくなる体重まで回復させてから退院したことも大きかったと思います。というのも、入院しても「自分が許せる体重までしか増やせず退院」というケースが多く、けっきょく低体重の値のままで、退院後に整理的な過食欲求と戦い、そこで拒食に戻ったり、排出行動を覚えてしまいます。そう言う意味でも、多少怖くても健康的な体重といえるレベルまで病院にお世話になり、それと同時に心のケアを並行することはとても効果的だと感じました。

(3)食べ始めから退院後も、バランスの良い食事

入院時から基本的な3食食べる食習慣をトレーニングし、退院後も継続したことで過食を防ぐことができたと考えます。

もし、入院せず自宅で食べ始めていたら、もしかしたら菓子パンやお菓子を優先させて、バランスの良い食事を心がけられなかったと思います。

また、退院後もバランスの良い食事を継続することで、過食欲の出る幕をなくすことができたと考えられます。

ただ、一つ彼女の課題は「バランスの良い食事しか食べることができない」ということ。そのため現在、徐々に許可食を増やす訓練をしています。

(4)退院後も治療を続けた

私が出会ったのは2回目の退院の後でした。彼女は通信の学校にもいき、バイトも行けています。だから、ぱっとみ「サポートなし」でもいいくらいに回復しているようにも見えます。しかし、学校や友人の悩みから落ち込みやすいところ、食事のこだわりがあることで心苦しさを感じるところ。それらの「摂食障害的な思考の影響」を認め、治療をやめなかったところがいいですよね。特に、体の治療ではなく「心の治療」に重きを置くカウンセリングを選択できたことが、彼女とそのご家族の素晴らしい判断だと思います。

(5)日記を書いた

毎日日記を書くことで、自分の気持ちを吐き出し、整理し、小さな変化を認めていくきっかけになったのだと思います。このように、ストレスを溜めない習慣を身につけられたことで、ストレスからの過食欲求がわく原因を、事前に解決することができます。

私の肌感ですが、日記を書く方は自己理解が深く、回復が早いです。
また、自分自身を客観的にみる思考が身につきやすく、それも回復を助けます。

まとめ:過食なしで回復するために必要なこと

「健康体重までは、食事を一定量以上食べる × 心のケア」

彼女は無茶食いのような食べ方は今まで一度もしたことがないそうです。しかし、入院中「お腹が苦しくても2600kcal食べ続ける」という行動はし続けました。つまり、拒食から回復するためには、「ある程度食べつづけ、体重を増やす期間が必要」だと言うこと。それが、規則正しく3食か、無茶食いか、という食べ方の違いなだけです。

しかし、私は無茶食いは推奨しません。なぜなら、満腹と空腹を感じづらい摂食障害さんは、無茶食いに依存し、過食症に移行しやすいからです。
その点でも、彼女の回復の道のりは素晴らしかったです。

彼女の例からも、摂食障害を悪化させないためには「食事のトレーニング×心のケア」の両輪が大切だとわかりました。

まだまだ彼女なりの課題はあり、克服の第二ステージに立っています。しかし、ここまで大きな壁を乗り越えてきた彼女なら、これからどんな壁も乗り越えていけると思います。

お母様からもメッセージ

お母様からもメッセージありがとうございました^^特にこの部分とても共感です。そうですよね、世間の当たり前や理想に自分を近づけず、自分の人生を歩んでいいんだよ〜と私も伝えていきたいです。

うまくいかないことがあっても、痩せることではなく、広い世界を見てさまざまな立場の人がいることを知ってほしい

今回はありがとうございました。
引き続き、一緒に頑張りましょう!

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