「コミュニティラウンド」の真骨頂!英国No.1ビールブランドBrewDogで分かるコミュニティ成功の秘訣
シリーズ「コミュニティラウンドがきた」。今回は、世界に販売網を広げるイギリスNo.1のクラフトビールブランド「BrewDog(ブリュードッグ)」について紹介します。
「コミュニティラウンド」を語るうえで外せないのがこのBrewDog。
BrewDogは創業以来、「Equity for Punks(パンク株)」と称した株式を発行して株式投資型クラウドファンディング(以下、株式型CF)を複数回実施しています。現在世界中に20万人以上の「Punks(パンクス)」と言われる株主たちを抱え、ファンを熱狂させています。
株式型CFを活用して自社商品のユーザー層などを株主に迎え入れることは、海外で「コミュニティラウンド」と呼ばれています。今回は、そのような「コミュニティラウンド」の魅力が詰まったBrewDogの戦略を覗いていきたいと思います。
BrewDogとは
BrewDogは、2007年にスコットランドで創業されたクラフトビールメーカーのユニコーン企業です。
同社は、“PUNK(常識に逆らう)”な精神をコンセプトに強いメッセージとともにファンを集め、日本を含め各国でグローバルに事業を拡大しています。現在では、イギリス最大手のクラフトビールメーカーです。
2023年には、バドワイザー・チャイナとのパートナーシップを締結し中国本土での販売拡大を進めるとともに、近隣のアジア諸国への進出拡大も視野にいれているようです。BrewDogが世界No.1のクラフトビールブランドになる日もそう遠くないかもしれないと感じさせる勢いで事業を拡大しています。
創業背景
公式サイトによると、BrewDogは既存のイギリスビールブランドのラインナップに飽き飽きしていた当時24歳のジェームズ・ワットとマーティン・ディッキーが2007年に創業。イギリスのビール市場にクラフトビールカテゴリーを作り、最大のミッションは、「自分たちと同じようにおいしいクラフトビールに情熱を持っている人を増やすこと」としています。
そのための手段の一つとして選んだのが、株式型CFを活用した「コミュニティラウンド」です。
ちなみにBrewDogが「コミュニティラウンド」というキーワードを使用しているわけではありません。しかし株式型CFによるコミュニティの広がりを背景にユニコーンにまで成長した経緯から、本記事では「コミュニティラウンド」の代表格と見て説明していきます。
「コミュニティラウンド」で熱狂的なファンを増やしサービスを拡大
BrewDogは、PUNK(な精神)に共感するクラフトビールファンを増やすための手段として2009年から「コミュニティラウンド」を複数回実施し、現在、世界に20万人以上の株主が存在しています。
創業期の早い段階から、ファンをただのファンで終わらせず株主になってもらうことで会社に積極的に関わる土壌を作った結果、BrewDogは急成長を遂げ創業からわずか2年でイギリスで最も成長しているビールブランドとなりました。
その後も「コミュニティラウンド」の実施により世界中のファンを巻き込み、創業から10年ほどでユニコーン企業にまで成長します。
※参考:PR TIMES STORY「イギリスNo.1クラフトビールブランド・ブリュードッグが、マーケティングにおいて大切にする『ファンとの関わり方』ブリュードッグ・カンパニー・ジャパン株式会社」
このようにBrewDogは、「コミュニティラウンド」を使ってサービスの早い段階からファンを株主とし、その輪を大きくし続けることで、サービスの拡大、会社の拡大といった結果を得ることになりました。
BrewDogは、カーボンニュートラルなど環境への取り組みを強化しており、2019年にはサステナビリティへの取り組み「BrewDog Tomorrow」を発表しました。プロジェクトに関し、「Equity for Punks Tomorrow」と称する「コミュニティラウンド」を実施し、5万人以上の新しい株主を迎えました。
「コミュニティラウンド」成功の秘訣は巻き込み力
ひとくちに「コミュニティラウンド」と言っても、ただ実施すればいいだけではありません。実施後に株主とどのようなコミュニケーションをとっていくか、どのように会社に関わってもらうかが重要です。
BrewDogがコミュニティを大きく成長させ、サービスの成長にもつなげることができた秘訣は何だったのでしょう?ヒントは、「巻き込み力」にありそうです。
以下は、BrewDogがコミュニティに対して行った3つの主な施策です。
①事業計画に合わせた複数回の「コミュニティラウンド」でファンを拡大
BrewDogは、自社の事業計画に上手く「コミュニティラウンド」を組み込んでいます。
例えば「Equity for Punks Tomorrow」の前後、BrewDogはオーストラリアとニュージーランドに新しいバーや醸造所をオープンさせる計画でした。このため、株式型CFプラットフォームは、オーストラリアのOn Marketを利用し、さらに投資家への割引特典を提供しました。メディアでの特集も組まれたことでPR効果が高まり、オーストラリアやニュージーランドで投資家を集め、株主コミュニティを形成することに成功しています。
②株主やファンを「パンクス」と呼び、“パンク”に共感する人たちを集める
「コミュニティラウンド」の成功のカギに「共感」があります。このサービスを応援したいかどうか、この企業が叶えたい世界観に賛同できるかどうか、といった共感が個人投資家が投資するうえで大事なポイントになるからです。
BrewDogは、“パンク”をキーワードに、時には過激とも取れるほど強いメッセージを発信しています。例えば、大手企業のビールを破壊する動画を公開したり、キャンペーンのためロンドンを戦車で走行したり、英国の国会議事堂の壁に創業者2人の写真をプロジェクターで投影したり。常軌を逸したマーケティングが、若者を中心にその都度話題になってきました。
こうした奇抜なプロモーションの背景にあるのは、利益優先で量産品を市場に投入する大手メーカーへのアンチテーゼとされています。「おいしいクラフトビールに情熱を持っている人を増やす」というミッションに向け、マス広告ではなく独自のプロモーションで、コミュニティへの関心と熱量を高めているようです。
③株主のコミュニティサイトを運営、自由に交流したり事業に参加したりできる
集まった仲間たちが自由に交流でき、一緒に何かを考えるプロセスがコミュニティをより強固なものにしていきます。
BrewDogはこれまで、新店舗の出店場所や新しいフレーバーについて、消費者がSNS上に投稿した意見を参考にして決めるなど、大手には真似しづらい手法で、コミュニティを事業に巻き込む施策を実施しています。
また、事業に直接的には関係のないことにコミュニティを巻き込んでいるのも特徴的です。直近では、ロシアのウクライナ侵攻を受けてコミュニティサイト内でスレッドが立ち上がり、収益のすべてをウクライナへ寄付する目的で「United for Ukraine」というビールの販売を開始し、多くの株主が賛同しビールを購入してウクライナを支援しました。
“パンク”という価値観が共有できていることで、顔も知らない会ったこともない株主同士にも“パンク”という共通言語ができ、それがコミュニティの連帯感につながっています。それゆえに、BrewDogに関することであってもそうでなくても、コミュニティ内では自由な交流が生まれています。
また、BrewDogは年に一度「BrewDog Annual Generak Mayhem」という株主とクラフトビールコミュニティのための年次集会を開催しています。
世界中の株主に向けて総会のストリーミング配信とアメリカの2つの会場でオフラインのイベントを開催しています。このように、ファンを巻き込み、飽きさせない仕掛けづくりがBrewDogが株主から熱狂的に愛される理由の一つになっているのではないでしょうか。
コミュニティの時代、どれだけファンを巻き込めるかがキーとなる
無数の商品やサービスで溢れるいま、選ばれ続ける企業になるためにファンコミュニティの力に目を向ける企業がより一層増えています。
BrewDogは、「コミュニティラウンド」を活用しながら、パンクな施策でファンを魅了してきました。同社が世界に20万人以上の株主を抱え成長を続ける背景には、一貫して価値観を体現する姿勢と圧倒的な巻き込み力がありました。
これからの時代に残っていくのは、ファンの心を掴んで(共感)離さない力(巻き込み力)かもしれません。
これからの企業成長に、「コミュニティラウンド」という選択肢
イークラウドでは、株式型CFで資金調達をするメリットの一つに「会社やサービスのコミュニティ形成」があると考えています。
スタートアップにとって資金集めは非常に重要です。どんなに良いサービス・良い企業であっても、資金が足りなければ事業を続けることができません。
しかし、会社や事業を応援してくれるファンの存在はお金では測れない価値があると思いませんか?
もし、世の中や社会を変えたいという会社の想いに共感し、熱狂してくれるファンがたくさんいたら、そしてそのファンが株主として事業を応援してくれたら..….。
そのコミュニティは、決して他社には真似できない競争力の源泉になるかもしれませんし、会社が描いているビジョンやミッションがより早いスピードで実現するかもしれません。
「コミュニティラウンド」は、起業家の思いとそれを応援したいと考えるファンやユーザーをつなぐこれからの新しい手段だと思っています。
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