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投資金額24億円が10年で168億円に!? ヤフーの「YJ1号ファンド」の投資実績を徹底解説

株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームを運営している「イークラウド」代表の波多江です。

ベンチャーキャピタルは少人数のプロ投資家から集められた資金を運用する業態で、投資パフォーマンスについて詳細が公開されることはあまり多くありません。先般、ヤフーのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)として活動していたYJ1号投資事業組合(以下、YJ1号ファンド)が投資結果を公開しました。その結果は、投資金額24億円が10年で168億円になったという驚くべき結果であったことから注目が集まっています。

今回は、ベンチャーキャピタルはどのような考え方で投資先を選定してポートフォリオを組み、リターンを出しているのか、一般的な構造を説明し、YJ1号を事例に深掘りしてみたいと思います(もし、事実と違う部分などがございましたらご指摘ください)。

1.投資予算について

まず、ファンドとして集めた資金は全額が投資資金として使われる訳ではありません。資金の一部はファンドを運営するチームの人件費や活動費用、監査費用などの管理費用となります。管理費用を差し引いた残りが実際の投資予算となります(実際に何を管理費用に含めるかはファンドの方針により多少の違いがあります)。

一般的なケースでは年約2%程度が管理報酬とされ、ファンドの満期となる10年間管理報酬で必要とされます。10年をファンド満期とするケースでは、約2% × 10年=約20%は管理費用となり、約80%が実際の投資予算となります。

YJ1号も30億円のファンドとして設立されており、投資金額は24億円という数字が公開されています。これは、30億円 × 2% × 10年=6億円が管理費用となり、24億円が実際には投資された資金であるということだと思われます。

2.投資社数について

次に、ファンドの投資社数をみていきましょう。一般的には10社〜数十社に分散投資するファンドがほとんどです。投資する会社が増えると、投資先の検討が甘くなったり、モニタリングコストなども大きくなりやすく、成長支援のリソースも分散しがちになります。

また、10年のファンドの場合には、10年間ずっと新規投資するわけではなく、10年で投資リターンを出すことが目標になります。そこで、実際には当初2-3年程度が投資期間で、残り7-8年程度は投資先の成長を支援しEXIT(IPOやM&A等)支援に重点が置かれる期間となります。仮に3年間、毎Q投資すると12社、毎月新規投資をする場合には36社となります。

YJ1号では、19社に対して投資が行われています。公表されているプレスリリースや、IPOを果たした会社の開示資料等からは約2年間で17社に投資してきたタイミングも確認することができました。ほぼ毎月のペースで出資を続けていたことがわかります。

2023年6月19日追記:不明だった2社についても、確認することができたため一覧に追記いたしました。

3.なぜ、分散投資するのか

ベンチャーキャピタルが必ず分散投資をするのは、一部のスタートアップは非常に大きな成功を収める可能性がある一方で、多くのスタートアップでは投資元本が回収できない可能性があるということを見込んで投資戦略が立てられるためです。

一定数の企業数に分散投資することで、一部の企業が失敗した場合でも、成功した企業からのリターンにより全体で見ると投資リターンを出すことができる可能性を高めることができます。

例えば、評価額5億円のスタートアップ10社に全て同額の投資をすることにしたとします。そのうち投資したスタートアップが順調に成長し、東証グロース市場に時価総額が100億円でIPOを果たした場合、単純計算で投資した会社の株式価値は20倍になったことになります。

投資していた10社に1社がIPOし、9社は残念ながらIPOできず投資リターンもほとんどなかった(場合によっては9社は残念ながら倒産や清算をした)としても、1社が20倍になったおかげで全体の投資額でみても2倍のリターンが受けられることになります。

逆に、この1社への投資を見送ってしまっていた場合には、10年間のリターンどころか、元本もゼロということにもなる可能性があります(投資額以上の損失になることは、株式会社の性質上ありません)。

このようなリスクを理解しながら分散投資をするのがスタートアップ投資の醍醐味の一つです。

4.まとめ

YJ1号は出資した19社のうち12社においてIPO・M&Aを実現していますが、実際にこのような確率で結果を出すことができるのはほんの一握りのファンドです。

機会があれば、YJ1号の後継ファンドに投資したいと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、日本ではベンチャーキャピタルに対して、個人投資家が出資する機会が提供されることはほとんどありません。

今後、日本でも以前、解説したベンチャーキャピタル・トラストなどの制度が整えられることで投資機会が提供されるようになるかもしれません。

また、イークラウドでは、株式投資型クラウドファンディングのサービスを通じて厳選したスタートアップをご紹介しており、個人で分散投資することができるサービスを提供しています。

投資機会をご提供した会社が、9ヶ月でM&Aにより買収され、2.69倍のリターンを出すことができた事例もあります。
(全ての案件が、IPOやM&Aに至るとは限りません)

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