新・越境の方程式
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新・越境の方程式

TEXT by JUNKO TANAKA(ECOSYX LAB partner)

ポッドキャスト「越境する感性」始動

ナレッジエコロジストの紺野登さん(ECOSYX LAB 代表)と、新時代の越境人が語らうポッドキャスト「越境する感性」は、好評のうちにシーズン1の8人の方々とのトークを終え一つの区切りを迎えしました。
8つの奥深いトーク、こころ騒ぐ物語りを振り返りながら、また今後の展開をにらみつつ、変化の激流を越えて未来を構想するための新しい越境の方程式を探ってみたいと思います。


▶ポッドキャストを始めたワケ

——ポッドキャスト「越境する感性」を始めようと思われたきっかけは、なんだったのでしょうか?

紺野 インターネット上の「声」によるメディアが、欧米で急速に発展しているのを知り興味深く見ていました。面白そうなコンテンツもどんどん増えていって、いつでもどこでも好きな番組を無料で繰り返し聴ける気軽さ、楽しさはいいなと思っていました。

そうしたらあるとき、「紺野さん、本を書くのもいいけれど、声で伝えたらどうですか?」って言われたんです。ちょうど、コロナによる自粛モードが広がってみんなが巣ごもりをするようになり、日本でもポッドキャストを聴く人が増えているとも聞いていたので、それならやってみようと企画をスタートさせました。

本で伝えるように声で伝える——、これはまさに「声による本」だなと。
これまでいろいろな本を書いてきましたが、本というメディアをここで一気に拡張してみようと思いました。そう思い立った瞬間、ポッドキャストで対話したい方が次々と浮かんできて、その人たちとのトークのイメージがその人たちの声とともに起ち上がってきました。

じつは耳で「聞く・聴く」という感覚は、人間の知識において非常に重要です。聴覚は言語の感覚で、語るための、感情に訴える感覚でもあるからです。たとえば人は死ぬ間際でも人の言葉を聴いているといわれます。人の感覚で最後まで残るのが聴覚だともいわれます。音声というのはしたがって、人間にとってもっとも自然なインターフェイスであるわけですね。
ひたすら「目」でテキストを読まされ、映像を見させられているいまのわたしたちにとって、声によるストーリーテリングは、「耳」に届けられる心地よさ、そして「ながら」聴きができる便利さ、そういう特徴があるのだろうと思いました。


▶21世紀を生きる知力としての
越境

——今回対談にご登場いただいた8人のみなさん、それぞれ起業家、教育家、建築家、社会活動家、作家、デザナー、経営者、技術者……と活躍する分野は多様で、またお一人お一人の経歴も、過去から現在そして未来に向かって領域横断的に活動されている方々ですね。

紺野 住むところもオランダ、アメリカ、インドなど海外を拠点にしていらっしゃる方もいて、まさに世界各地の都市や地域で、既成の枠を軽々と越えて異彩を放つ素敵な人たち、というのがわたしのなかでのイメージです。

——タイトルの「越境する感性」というのは、そこからきているのですね。

紺野 「越境する感性」には、二つの意味を込めています。
一つは、「越境」という言葉のイメージをアップデートしたかった。これまでのネガティブなイメージから、ポジティブなイメージへの転換をはかること、これが一つ目のテーマです。
もう一つは「越境」を一人のヒーローやヒロインのリニアなストーリーという狭い意味から解放して、社会を変える、新しい世界を創り出すダイナミックな実践のなかに位置づけたいと考えました。

——一つ目のテーマ、「越境」をネガティブなものからポジティブなものへ、というのはどういうことでしょうか。

紺野 いま、ビジネスは企業という境界を越え、産業という境界も超えて社会的でオープンなものになっています。
わたしたちのまわりには依然として、国境をはじめ法や制度や文化や慣習による境界がいたるところにあるけれども、デジタルテクノロジーによって世界中とつながれるようになったいま、そういった既存の枠組みを越えていく「越境」という振る舞いは、とてもポジティブなことであるとわたしは考えています。

しかし、越境という言葉は、これまでネガティブな意味で使われることが多く、いまでもその過去のイメージは根強いですよね。それは閉じた時代の越境でした。
たとえば国境を越える越境には、不法に他国に侵入するといった意味合いがつきまといます。法を犯してとか、ルールを破ってとか、規制から外れてとか、そういうイメージが、「越境」をネガティブなものにしているんです。越境入学なんていう言葉も、ポジティブな意味には受け取られない。

ゆえにそういったさまざまなリスクをおかして越境する人は、異端者とか、アウトローといった呼ばれ方をされてきた。ときには世捨て人、苦行者などと呼ばれることもありました。
しかし、こうした越境へのネガティブなイメージは時代錯誤的で古いのではないかと思うようになったんです。

異端として既存のコミュニティから排斥されて、意に反して越境させられて、辛い思いをしたけれども、越境した先で思いもよらぬ出会いがあって、新たな景色が見えるようになり、それまでとは違う人生が動き出す、というストーリーは、ビジネスの世界でもよく語られますが、そのストーリーはどこか古臭いものに聞こえませんか。

今回登場いただいた8人の越境人には、異端やアウトローといったイメージはまったくあてはまりません。みなさん、既存の境界を軽々と、むしろ颯爽と越えていってますよね。少なくともわたしには彼女彼らの姿はそう見える。そして軽やかに革新を起こしている。新しい時代の越境人たちです。

——越境が目的なのではなく、ほんとうに大切な問題、切実な問題をどこまでも誠実に追求していくという生き方やそういう姿勢のなかで、気がついたら境界を越えていたということなのかもしれないと、お話を聞いていて感じました。越境に迫力があるのはそのためですね。

紺野 8人の方との越境トークから確信したことは、彼女彼らのなかには、未来が映り込んでいるのだろうということです。

毎回、どなたにも、最後に「どんな未来を創りたいですか、どんな未来であってほしいですか?」という質問を投げかけました。その答えは、みなさんとてもクリアーでしたよね。
こんな未来であったらいい、こんな未来を創ろうという構想が、こころのなかなのか、脳のなかなのか、あるいはもっとミクロな細胞レベルのどこかなのか、いずれにしても8人の身体のなかに図像として結んでいる。だから迷いなく越境していくのだろうと。異端やアウトローではない、と同時に、彼女彼らは誰も「ビュリダンのロバ」ではいられない人たちなのです。
そういう、これまでの越境とは違う新しい時代の越境のあり方を探りたいという思いが「越境する感性」の一つ目のテーマです。

ちなみにビュリダンのロバというのは、『イノベーション全書』(東洋経済新報社、2020)という本の最初でも書いたのですが、左右分かれ道でどちらにも進めず餓死してしまうロバの寓話です。左右どちらの道にも等距離に同量の干し草があり、どちらに行くべきか判断(合理的に)できず思考停止となりエサにたどり着けずに死んでしまうのです。


▶「インタープレナー」という越境人

紺野 実はこの「越境」はイノベーションにおいて大変重要なテーマでもあります。 

わたしの友人たちが取り組んでいる「新産業共創スタジオ」というイノベーション加速プログラムでは「インタープレナー」という越境人について注目しています。
イノベーションといえばその主役はシュンペーターが掲げたアントレプレナーなのですが、例えば大企業などでは、社内の資産をもとにしたイントラプレナーというコンセプトもありますね。
しかしオープンイノベーションやソーシャルイノベーションの時代となったいま、求められるもう一つのタイプがインタープレナーです。

このインタープレナーは、野中郁次郎先生と『失敗の本質』(中公文庫、1991)を著した寺本義也先生の共著論文に出てくるのです。

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それぞれの特徴や傾向を比較すると、どちらかというとテクノロジーベースのアントレプレナー、組織文化的な意味合いを持つイントラプレナーに対して、インタープレナーとは、異なる領域や境界を行き来しながら、社会的・利他的な視点でイノベーション起こす日本型のイノベーターなのです。 
まさに越境する感性が求められるのです。
30年近く前の論文ですが、いま大きな意味合いを持っているんじゃないかと思います。


▶英雄神話から構想力神話へ

——越境へのきっかけは違和感や欠乏感からであっても、越境を駆動しているのは彼女彼らの構想力だということですね。

紺野 そうです。新しい越境人は、既存の領域を越えて、社会を変えていく人たちなんです。越境した先で場をつくって、そこにいろいろな人を連れてくる、あるいは思いを共にする人たちが入ってこられる場をつくるというイメージ。そこでみずから新たな物語りを紡いでいます。だから、越境は単なる一人の個人のストーリーではないんですね。これが二つ目のテーマです。

——先ほど、新しい越境人は異端でもアウトローでもない、というお話がありましたが、では彼女彼らは時代のヒーローなのかというと、またそれも違うように思います。
たしかに皆さん、それぞれにヒーロー的な存在ではあるけれども、いにしえよりの英雄譚のパターンとは明らかに異なりますね。

神話学者のジョーゼフ・キャンベルは、世界各地の英雄伝説には共通の基本構造があり、それは3つの段階を経て英雄となるというものです。彼が発見した基本構造とは、まず最初に、今いる日常の世界から危険をおかしてでもはるか遠くへと出かけていき(セパレーション)、試練を乗り越え何らかの力の源に突入して勝利を得て(イニシエーション)、人生をよりよくするために帰還する(リターン)という3段階。その最初のセパレーションとは、まさに越境ですよね。桃太郎もブッダもモーセもルーク・スカイウォーカーも、みな越境から始まるこの3つの段階を経て英雄伝説の主人公になった。最初の越境にさいしては、境界を守る番人と壮絶な闘いの末に打ち勝って境界を突破していくというのが共通の出来事になっています。

しかし、いまの時代を生きる越境人は、先ほどおっしゃったとおり軽々と境界を越えていき、イノベーションを起こしている。その姿はよくある英雄伝説の主人公とは違いますね。また、富や名声や権力あるいは領土を求めて越境し旅に出た、というのでもないです。
そうではなくむしろ何か新しいものを生み出すために、あるいは大切なものをとりもどそうとして越境した人たち。戦略や武器ではなく、想像力や直観・直感そして慈愛や温かなこころが、彼女彼らの大きな力になっていると感じました。
単純な比較はできないとしても、やはり英雄神話の定石のような古くからの越境の方程式にはおさまりきらない、異なる解を導く人たちのように思います。

紺野 一人の英雄やエリートのストーリーやナルシズムに収束してしまうのではない、新しい世界を構想し制作する創造的な越境の方程式があると考えています。論理的な知性ではない、こころの知性=ハートインテリジェンスが、新しい越境人に共通する本性です。
8人の「越境する感性」から、新しい越境の方程式がしだいに明らかになってきました。

——『構想力の方法論』(日経BP、2018)のなかで紺野さんは、みずからの構想力をもとに社会を変え新しい世界をつくっていく人たちを「ホモ・イマジナティカ」と呼んでいますが、「越境する感性」人の方々のお話をお聞きしてまさにこの方たちこそホモ・イマジナティカなのだろうと思いました。
「ホモ***」というと最近ではユヴァル・ノア・ハラリが提唱する「ホモ・デウス」がつとに有名ですが、18世紀スウェーデンの生物学者リンネが人間を「ホモ・サピエンス」(英知人)と定義してから、ベルクソンによる「ホモ・ファーベル」(工作人)、ホイジンガによる「ホモ・ルーデンス」(遊戯人)、フランクルによる「ホモ・パティエンス(苦悩する人)、カッシーラーによる「ホモ・シンボリクス」(記号を操る人)、19世紀には「ホモ・エコノミクス」(経済人)と、人間はさまざまな見方をされてきましたが、21世紀は越境するホモ・イマジナティカ(構想人)が伝説をつくっていくのかもしれません。そこに大きな希望があると思いました。


▶越境の方程式と3つの型

——ではいよいよ「越境する感性」から導き出された、「新・越境の方程式」を教えていただけますか。

紺野 今回のポッドキャストの企画で、ありきたりのストーリーを越えていく8人の越境人の方々との対話から、実際わたしはおおいに刺激を受け勇気づけられたのですが、彼女彼らの越境から3つの共通する要素と、3つのパターンが浮かび上がってきました。

まず共通する要素ですが、次のような3つの要素がかけ合わさり、創造的越境を推進しているのではないでしょうか。

① 越境する行動(越境行為)
② 越境構想力
③ 辺境を生きる力(自己知)

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また、越境する感性からもたらされるものの表現型としては、次の3つのパターンが考えられるのではないかと思っています。

【1】トランスフロンティア
未来に向けて既存の境界を超えていく

【2】クロスバウンダリー
複数の領域をまたがって新たな領域を生み出していく

【3】バウンダリーオブジェクト
みずからが複数の境界を超え繋げる場(あるいはメディア)となる

一つ一つについては、下記の論考で説明しますが、その前に、これらのベースとなる知識生態学について少しだけ述べておこうと思います。

知識生態学というのは、わたしが現在研究し、イノベーションでの実践をおこなっている知の方法論です。社会や経済の中での知識がどのように生まれ、共有され、活用されるか、それを個人(人間)、集団、組織の相互関係、それらを含むエコシステム(生態系)としてとらえていこうとするものです。そういう智慧がいま、改めて重要になっていると考えています。

——知識生態学とは、以前から使われていた言葉なのですか、それとも「ホモ・イマジナティカ」のようにこれも紺野さんが作った言葉ですか?
 
紺野 知識生態学はわたしの造語ではありません。草の根的に使われてきた言葉です。ですので決まった定義や、相当する学会などがあるわけではありません。
これまではナレッジマネジメントの専門家が知識の振る舞いをこの言葉であらわそうとしたり、社会問題に関心をもつ人々が使ってきました。たとえば1970年代に環境問題で注目された社会活動家、ラルフ・ネーダーのNPO法人が「ナレッジ・エコロジー」の名前を冠しています。また、ピーター・ドラッカーは自分自身を「社会生態学者」と呼んでいましたよね。そんな風に使われていました。

最近流行語のようによく言われる生態系(エコシステム)ですが、その土台には生態学(エコロジー)の考え方があります。生態学とは簡単にいうと、生物(人間や動植物)と非生物(水やエネルギー、物質)が相互に関係しあっている「家」(オイコス、エコの語源)としての環境や生きる場のあり方の研究です。これが「生物と非生物」の関係性から「人間と環境」の関係性へ、さらに「組織と社会」、「人類とロボット・情報」の関係性へと、その適用の範囲を広げながら発展しているのです。
これらを総合的なシステム(系)として見たときの様相を、エコシステム(生態系)と呼ぶわけです。エコシステムはエネルギーや情報の流れでその動態(ダイナミクス)を説明しますが、さらに、社会や経済、市場などのエコシステムを知識の創造・伝承・共有・活用などで見るのが知識生態学だといえます。

——いまのご説明のなかで、環境や生きる場が「家」(オイコス、エコの語源)として表現されていることにピンときました。
「越境する感性」の8人のみなさん、それぞれに、越境した先の地にはみずからのインスピレーションの表出としての「家」をつくっていますね。新しい会社であったり、現実の建物としてのハウスだったり、仲間と集う場所だったり、あるいは書物だったり、映画だったり……。それらは越境のシンボルなのだろうと思います。イメージとしては、神殿であり教会であり寺院であり、何か豊かなものが生み出される場所であり、豊穣なものへと入っていく場所。そこにさまざまな人が来て、そこを中心に知の生態系が生成されていくということなのかなと思いました。


以下に、紺野登さんによる「新・越境の方程式」に関する論考を紹介します。一人ひとりの個の「越境する感性」が、新たな世界を創造していく躍動が3つの様式として論じられています。


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21世紀の越境する感性と創造的進化

紺野 登

「越境する感性」とは、個人による創造的進化によって、組織さらには社会への創造的影響(インパクト)を生み出す、その根底にある生命的・感情的な知力である。

創造的進化とは哲学者ベルクソンの概念だ。ベルクソンはダーウィン的な進化論への批判、そしてキリスト教的な目的論的進化論への批判のうえに、創造的進化という人間の生命の躍動にねざす進化のメカニズムを明らかにし提唱した。
ダーウィン的な進化論は、外的な変化への対応として起きる突然変異的な進化、つまり外的変化への形態適応や自然淘汰を進化として記述する。だが、これは「機械的」記述だというのがベルクソンの見方である。
また、神からトップダウンで与えられる目的に向かって生命が設計され進化すると説くキリスト教的な進化論に対しても批判をした。

ベルクソンはそれら外発的進化よりも、生命の持つ内発的な躍動、推進力こそが進化の本質と考えたのである。
生命の内発的な弾みのようなものが、境界を侵食したり、炸裂して越境したりして進化が起きるということだ。
これは、ビジネスやイノベーション経済や経営にも求められる「生命論的な躍動」(『イノベーション全書』紺野登、2020)を生み出す「果てしなく続けられる」運動である。

ただし、組織の有機体的な創造的進化の可能性は、個の生み出す主観性、個と個のあいだで共有されるコモンセンスや相互主観性、そして個と組織が協働して創出する目的とその共有にかかっている。個の主観性や共感なしには組織が有機体のように進化することはない。個の内的な躍動や推進力が、組織の革新や飛躍という現象を生み、そうなることで組織自体も有機体的な進化を実感として得るのである。

目的についても、ただ経営者やSDGsなどから与えられた目的を遂行するのでは、ベルクソンの批判を免れない。目的もまた「大目的」と個の目的のインタラクションによって最適な「中庸」を求めるべきなのである。

そしてこのような個と組織の創造的進化にとって、「越境する感性」がきわめて重要だということを、ここであらためて述べておきたい。

ここでいう越境は、わたしたちがいまいる所とは別の領域や境界で仕切られた場所に出かけていき、「立入禁止」の立て札を破って入っていき、そこで異人や異端(孤立する孤独な越境者)となるようなものではない。越境という言葉には、従来よりこうした寂しさや冷たさがまとわりついていたのだが、いまの時代の越境とは、むしろ逆の意味で、新たな世界を拓くことによって人と人、人と組織、組織と組織を「繋げる」ものではないかと考えることができる。

新・越境の方程式

「越境する感性」の対話を通じて得られた洞察は、次のような要素から創造的な進化の力が生まれるということである。

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① 越境する行動(越境行為)
・飛び込む
・対話する
・つくる(試行錯誤する)

② 越境構想力
・Big Question(違和感・欠乏感)
・Point of View(独自の視点)
・Big Picture(世界観)

③ 辺境を生きる力
・トリックスター性
・場の力を引き出す吸引力・求心力
・楽しむ力、遊び心


この3つの要素がかけ合わさり、個の越境する感性が躍動し、推進力となって、個と組織の創造的進化を引き起こしていく。そこで起きる創造的進化には次のようなパターンがあるのではないだろうか。

【1】トランスフロンティア:未来に向けて既存の境界を超えていく

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トランスフロンティアとは、国境など既存の確固とした境界を跨って越境をしている状態である。異質との交流によって、日本と世界、これまで異分野、異文化だったもの同士をつなぐということが行われる。単に境界を越えるにとどまらず、それらを未来に向けて包摂していく、これがトランスフロンティアである。

既存の境界を越えていくということでは、8人の方みなさん全員がトランスフロンティアではあるのだが、とくに「未来に向けて」異なる文化、異なる知性をつなげ統合していくという意味では、堀江さん、大本さん、藤原さんの越境する感性が、それを体現しているのではないだろうか。

堀江愛利さん:ダイバーシティを越えて
大本 綾さん:世代のカベを越えるデザインを
藤原 大さん:スピードフラットは越境を加速する

この方たちのトランスフロンティアは、自身の利益のためにといった動機からは対極にある。国境を越えて活躍する人や、何枚もの名刺を持って分野横断的に活動する人はたくさんいるが、多くが越境すること自体を目的としたり誇示したりする。それは閉じた越境でありつまらないことだ。

本当に大切な問題をどこまでも追求してゆくなかで、やむにやまれず境界を突破して、橋をかけ、自由に行き来できる場をつくり、人々に勇気や自由を与えてるのが、新しい越境人のトランスフロンティアである。

加えて、この3人の越境人は、みなさん優れた教育者でもある。それぞれの方法で教え、育て、カルティベイトしている。そういった利他性が社会に変革をもたらしていく。


【2】クロスバウンダリー:複数の領域をまたがって新たな領域を生み出していく

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クロスバウンダリーは、既存の領域の境界線や制約を超えていく状態である。たとえば、AとBとCという異なるコミュニティやシステムがあるとすると、AもBもCもすべて包み込む形で新たな領域をつくってしまう。これがクロスバウンダリーの越境のイメージだ。
こうした越境を体現しているのが、大村さん、シャボットさん、楓さんではないだろうか。

大村美菜さん:「女性活躍」という社会の目線を越えて
シャボットあかねさん:時代おくれの「生命」観を越えて
サリー楓さん:あらゆるカテゴリーを越えて

境界を越えるというより、ある意味境界の破壊者ともいえる。常識だったり慣習だったり、これまで人々が当然のようにしたがっていた枠組みや制約に「なぜ?」という純粋な疑問をもち、そのみずからの違和感や問題意識に誠実に向き合い追求していく。
クロスバウンダリー的な越境は、越境する本人にとっては真実に近づくことでもある。他者との違い=境界を理解する過程を経たうえで、みずからの使命の認識へと戻ってくるような精神の働きがあるからだ。
したがって既存の境界を破壊していくのだけれども、破壊された側もまた、彼女たちによって自分自身を知り、より広い視野のもとで、多様なこの世界を見られるようになるのである。


【3】バウンダリーオブジェクト:自らが複数の境界を超え繋げる場になる

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バウンダリーオブジェクトというのは、越境の場を作ることである。
それを体現しているのが、中山さん、加藤さんの越境であろう。

中山こずゑさん:自分を越える力は未来からやってくる
加藤百合子さん:「農業×ANY=HAPPY」で越境!

個人でもグループや組織でも、専門領域などで自分と他者とを区切る「境界線(バウンダリー)」がある。越境人は、大きな目的に向かってそのバウンダリーを越えていくのだが、越えた先で新たな関係性をつくるためには「場」が必要である。そのような相互作用を創発する媒介を「バウンダリー・オブジェクト」という。

具体的には、フューチャーセンターやイノベーションセンター、最近では都市の現場でイノベーションを起こすリビングラボなどがそうした場として関心を集めている。
通常のルーティンのためのオフィスからはイノベーションは起きにくい。
これだけ複雑化した世界では、たとえば企業という閉じられた組織の中だけで経営を続けていくのはもはや不可能である。そういう社会では、経営の主語は、「私たち(we)」になる。
これからは個人も組織も、バウンダリーオブジェクトを軸にいろいろなコミュニティや他の企業、大学、研究所とネットワークし、社会との接点の部分で有機的にイノベーションを起こしていくのが新しいルールになっていくと考えている。

越境する感性ヒートマップ

今回ご登場いただいた8人のみなさんそれぞれの新しい時代の越境が、どのようなインパクトをもたらしているかを濃淡であらわしてみた。

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ポッドキャスト【越境する感性】
Noboru Konno’s “Cross Border Talk”

知の生態系は政治やビジネスの国境を越え、 言葉の壁を越え、既成の枠を越えていく。世界には、そんないくつもの境界を軽々と越え、その感性で境界を溶かして活躍する人たちがいる。 ナレッジ・エコロジスト 紺野登と、越境する感性の持ち主たちとの“Cross Border Talk”。 毎回、素晴らしい方との 楽しい対話 から、イノベーションの種をみちびきだします。ありきたりのストーリーを越える何かが、21世紀のハッピーエンディングを生み出 す でしょう。
■produced by ECOSYX LAB
■企画構成:青の時 田中順子
■制作協力:ソングエクス・ジャズ 宮野川真

#001&002 ダイバーシティを越えて:堀江愛利さん

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シリコンバレーで 女性起業家を育成-支援する「Women’s Startup Lab」を創業、CEOを務める堀江愛利さんに、「グローバリティ」としてのダイバーシティについて聞きます。イノベーションの頭打ちに悩むシリコンバレーに、女性の力なくして新しい未来は創れないというお話。

前回にひきつづき、シリコンバレーで女性起業家を育成-支援する「Women’s Startup Lab」を創業、CEOを務める堀江愛利さんをお迎えします。現実か?夢か? その境界さえわからなくなるくらいポジティブなシリコンバレーで、どうやって自分らしさを保ち、世界とつながっていくかというお話。


#003&004「女性活躍」という社会の目線を越えて:大村未菜さん

越境する感性 大村さん写真2

インドの首都ニューデリーで、工業製品部品の認証検査ラボ会社を設立・経営する、大村未菜さん。日本的おもてなしの世界から、インドでのスタートアップへ。調和からカオスへと越境してはじめて「本当にやりたかったこと」が分かったというお話。note にて『インドのひとたちとわたくし』 連載中!

前回につづき、インドの会社経営者、大村未菜さんに、ニューデリーでの怒涛のストーリーをお聞きします。いま大きく変わろうとする巨大国家インドを肌で感じながら、変われない日本にも思いを馳せる。どこにいても、自分を裏切らない生き方をするために大切なこととは?


#005&006 あらゆるカテゴリーを越えて:サリー楓さん

サリー楓さんPhoto

トランスジェンダーとして、また新しいスタイルの建築家として、ボーダレスに活躍されるサリー楓さんをゲストにお迎えします。すでに国内外では話題の主演映画「You decide.(息子のままで、女子になる)」のメイキング秘話。いっぽう新時代の建築家としても活躍する楓さんは、越境する都市のデザインに日々チャレンジしています。古いカテゴリーが崩れていくところに、未来がひらけていくというお話。
楓さんのホームページはこちら<https://www.kaedehatashima.com/>

前回につづき、トランスジェンダーとして、また新しいスタイルの建築家として、ファッションモデルとして、ボーダレスに活躍されるサリー楓さんをゲストにお迎えします。後編では、都市へのまなざしについてお聞きします。誰もが「自分」というカテゴリーで生きられる都市へ、そしてLGBTという言葉もなくなる未来へと、越境する感性がスパークしていくお話。


#007&008 時代おくれの「生命」観を越え:シャボットあかね さん

シャボットさん写真

オランダ在住の伝説的通訳者(日英・日蘭)、コーディネーター、著述家として活躍されるシャボットあかね さんをお迎えします。安楽死が合法化されたオランダで、「よき生」と、「よき死」について探求しつづけるシャボットさん。いま日本に伝えたいオランダの智慧とは何でしょうか。

前回につづきオランダ在住の伝説的通訳者(日英・日蘭)、コーディネーター、著述家として活躍されるシャボットあかね さんをお迎えします。オランダ発ポジティヴヘルスとはどんな考え方なのでしょうか。医療、福祉、教育、農業……、細切れの制度をつなげていく社会的ムーブメントは、もう日本でも始まっている、というお話。


#009&010 世代のカベを越えるデザインを:大本綾 さん

大本綾さん

いま世界で最も刺激的なビジネスデザインスクール、デンマークの「カオスパイロット」日本人初留学生、大本綾さんをお迎えします。帰国後、株式会社レアを起業し、よりよい未来を創るデザインを、世界中とつながりながら学び教え合う場を日本で展開中。人間中心をさらに越えた地球規模のデザイン思考とは? クリエイティブリーダーシップはいかに鍛えられるか?お聞きします。

前回につづき、株式会社レア共同代表の大本綾さんをお迎えします。デンマークの「カオスパイロット」日本人初留学を経て、デザイン教育で起業した大本さん。デザインの力で世界を変えていく、そのために科学技術、文化伝統、あらゆるものとデザイン思考をつなげる活動を展開されています。国籍も、性別も、世代も超えて、1人の人間として際立つものをもって響き合う人たちと共働、共創していく先に、よい未来は開かれていくというお話。


#011&012 自分を越える力は未来からやってくる:中山こずゑ さん

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民と官、グローバルとローカルを越境する経営者、中山こずゑ さんをお招きします。 好奇心と、トリックスターのように周囲をアッと驚かせる突破力で、人をひきつけ、場をつくり、化学反応を起こして新しいことを生み出す。そのしなやかなリーダーシップはどこから来るのでしょうか。

前回につづき、経営者として領域横断的に活躍されている、中山こずゑ さんにお話を聞きます。 古い価値観を脱ぎ捨て、社会と人間、自然と人間の対話を、もっと自由に豊かなものへと促進し、世の中に眠っている才能をつなげてビジネスにしていく。その秘策に迫ります。 日本文化への造詣も深く、後世への文化の継承も使命の一つというお話。


#013&014 スピードフラットは越境を加速させる: 藤原大 さん

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国境やサイバーとフィジカルの谷間を平らな空間に変え、流れを加速する「スピード・フラット」を提唱し世界で活躍するデザイナー/クリエイティブディレクター、藤原大 さんをお迎えします。
地球、地域、都市、社会、企業、教育、人々の暮らし…、多様なフィールドで、デザイン+アートをエンジンに既存の境界を越える創造にチャレンジし続ける、その原動力はどこにあるのでしょうか。前編は、科学(サイエンス)と社会、旅と日常、大草原と大都市、それらを果断に融合して美しいものを生み出していくお話。

前回につづき、デザイナー/クリエイティブディレクターの 藤原大 さんをお迎えします。自然や都市の「色」を採るカラーハンティングの奥義、そして「フラット」と「スピード」を融合させた未来のものづくりのコンセプト、スピードフラット。越境し続ける眼差しの先には何が見えているのでしょうか。


#015&016「農業×ANY=HAPPY」で越境!: 加藤百合子 さん

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いま、世界各地から引く手あまたの「やさいバス」。その開発者で、「農業×ANY=HAPPY」の企業理念のもと、農業に革命を起こしているエムスクエア・ラボ創業者&代表取締役の 加藤百合子 さんをお迎えします。農業の課題解決は、人類の未来を救うというお話。

前回につづき、持続可能な社会を目指して農業から革命を起こす起業家、エムスクエア・ラボ創業者&代表取締役の 加藤百合子 さん をお迎えします。イノベーターを育成する究極の方程式を編み出した加藤さん。農業を学びの場として、子どもも大人も、企業人も生活者もともに成長するプログラムを展開中。







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知識生態学®--‐知識の生態系としての人間、社会、経済、芸術、デザインの観点から世界を洞察し未来を見きわめ、知識を結びつけコンセプトやポリシー、変革実践のための知の「場」(ba)を共に生み出すコンセプト・シンクタンク。https://www.ecosyxlab.org/