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人気は国内に留まらず。邦楽が再評価され、和モノと親しまれる理由

近年、レコードの中には和モノと呼ばれて注目を集めているものがあるのをご存知ですか?

果たして、和モノとは一体何なのか。レコードとはどのような関係があるのでしょうか。

和モノ(和物とも書く)とはその名からわかる通り邦楽のことを意味していて、魅力に溢れた作品に親しみを込めて呼ばれる言葉です。

「それなら和モノにはいったいどんなものがあるの?」

私たち日本人にとっては最も身近な音楽である邦楽の中で、どのような作品が和モノと呼ばれ高額になっているのか、今回はその人気について紹介してみます。



和モノ・ブームの原点とは?

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邦楽ロックであれ、今話題のシティ・ポップであれ、昭和の音楽にいま国内のみならず海外のファンから熱い眼差しが注がれています。

現在はスマートフォンが普及したこともあり、インターネットがまさにいつでも手元にある恵まれた環境に私たちはいます。

YouTubeなどを通じていつでも何処でも手軽にネットで色々な情報を得られる便利な世の中になり、音楽の流行も今までよりも広がりやすくなっています。


和モノ人気に火がついたのにはとある理由がありました。

通常、レコードに限らず音楽というものには「○○の名盤」というように、一般的に認知されている作品も多いため、既にある程度の評価が大抵の場合あるものです。

しかし、そうではない名も知られていない邦楽がDJによって”発掘”されると、「こんな良い音楽知らなかった!」と注目を集めることが多々あります。つまり、いまの若い世代を中心に再評価されるのです。

著名なDJや評論家の紹介によって人気が広まったものには高額で取引されているレコードが沢山あります。

中には未だにCD化されていない作品もあり、その一枚を手に入れるためにファンが一生懸命に探し回っているレコードもあるほどなのです。



和モノの代表格ジャンル、シティ・ポップ

近頃、シティ・ポップ(City Pop)という音楽ジャンルが非常に高い人気を集めています。言葉自体は聞いたことがあるという方もきっといるでしょう。

シティ・ポップとは、1970年代の終わりから80年代に日本で流行った洗練された都会的な印象を持つポップミュージックのこと。

当時 AORと呼ばれ、若者の心をがっちり掴んでいた音楽のことです。

まさにその時代はシティ・ポップという呼び名こそ耳にすることは少なかったのですが、90年代になりハイセンスでお洒落な楽曲がDJによって発掘され始めました。

2010年辺りには、ディスコサウンドの音楽が世界的な盛り上がりを見せていたことも相まって、その要素を色濃く持つシティ・ポップの曲も再評価されていったのです。

シティ・ポップに夢中になるのは国内のファンだけではありません。

米国、ヨーロッパ、アジア、ネットで音楽を聴いて虜になった世界中の音楽好きがレコードを収集するほどその人気が高まっています。

インターネットでのレコードを入手するだけでなく、はるばる海外から来日し、中古レコード店を訪れて自らの手で買い集めるコアなファンも実は多くいます。



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大貫妙子 / SUNSHOWER (PANAM、GW-4029)

77年リリース。「都会」をはじめ、「くすりをたくさん」など人気曲を多数収録。細野晴臣、山下達郎、坂本龍一など豪華なメンバーがレコーディングに参加しました。

2017年、とあるTV番組で米国人ファンが来日した際に血眼になってレコードを探した模様が放送され話題になりました。




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大橋純子 / MAGICAL (PHILIPS、28PL-79)

和製フリー・ソウルとも呼べる魅力たっぷりな大橋純子の1982年作。彼女の作品群の中でも内容の良さもピカイチの一枚で、人気が非常に高い反面 あまり見かけないレコードでもあります。




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吉田美奈子 / TOWN(ALFA、ALR-12001)

82年発表。片面に1曲ずつ収録したシングルレコード。高い人気を誇る一方でなかなか市場に出回らない非常に珍しい1枚。 ディスコサウンドなどを取り入れた彼女の人気盤です。



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シリア・ポール / 夢で逢えたら (Niagara、LX-7017-E)

大瀧詠一がプロデュース、山下達郎がアレンジを担当した、通も思わず唸る何とも贅沢なアルバム。

その他にも豪華なメンツが参加した和モノ大名盤ともいえる内容です。



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亜蘭知子 / 浮遊空間 (Warner Bros.、M-12515)

83年リリース。作詞家であり歌手である彼女にとって3枚目となったアルバム。

収録曲「Midnight Pretenders」や「I'm In Love」といったゆったりとしたメロウな雰囲気に”浮遊”する新しいサウンドを響かせる一枚。海外での人気も高い作品です。




和モノはシティ・ポップだけじゃない

和モノ人気はなにもシティポップだけではありません。

若い世代の人たちは「昔 大ヒットした曲だから」とか、逆に「あまり人気がなかった歌手だったから」というような固定観念は一切持ってはいません。

レコード愛好家が大好きなことは、実はプレーヤーで再生してその音質を楽しむだけではありません。

本やインターネットなどで知って気に入った曲のレコードを店やネットで血眼になって探したりすることもそうですし、あまり有名になっていない曲を自分自身でその魅力を見出して発掘することにも喜びを感じます。

良い曲は良い!と正当に評価するだけでなく、今まで人気がなかったものだとしてもその曲を楽しむことに大きな価値を見出しているのです。

手間を惜しまず、労力そしてお金を費やしてお気に入りのレコードを入手し、ゆっくりと時間をかけて聴くことが愛好家にとっては何よりもの幸せなのだと思います。



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朱里エイコ / AH SO! (REPRISE、L-1238R)

75年発表。古くから和モノの人気盤として知られる「AH SO!」は、2度の渡米を経た後に産み出されたダイナミックなファンキー・ソウル。

朱里の洋楽志向を色濃く反映しつつ、爪弾かれる三味線にパッションまで映し出す、これぞ”和モノ”なフロアキラー曲です。



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アパッチ / 宇宙人ワナワナ(CBS/SONY、06SH 568)

79年発売。アイドルグループ アパッチの6枚目のシングル曲。名アレンジャー 矢野誠が作編曲を担当。ピコピコという電子音、不可解な歌詞に加えてそのディスコサウンドに魅了されるファンも多いとても希少な作品でもあります。

「安いレコードだろう」と思いきや意外や意外、中古市場の相場では”万”を超えるというから驚きです。



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ちあきなおみ / あまぐも (Columbia、PX-7047)

昭和を代表する名歌手、ちあきなおみの日本コロムビアから発売された78年作。A面に収録された楽曲は河島英五が、B面は友川かずきが担当。バックも名が知れる前のゴダイゴが演奏しているので、音楽としてのクオリティも申し分ありません。

彼女の作品の中でも最も稀少で、人気が高いレコードです。



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スピード・グルー & シンキ / イブ 前夜 (Atlantic、P-8081A)

71年発表作品。グループにとってのデビューアルバムにしてジャパニーズ・ロックの幕開けを神々しく飾った、もはや伝説的な存在ですらある大変希少な1枚。

加部正義、陳信輝、ジョーイ・スミスの3人組による圧倒的な音の波がファンを魅了してやみません。




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Flower Travellin' Band / Satori (Atlantic、P-8056A)

71年発表作品。内田裕也によるプロデュースで、ジョー山中らメンバーからなるフラワー・トラベリン・バンド。

本作は彼らのセカンドアルバムで、米国とカナダでも発売となった日本ロック史における金字塔として名高いアルバムです。




ここ10年で邦楽のレコードの価値はどう変わったか

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邦楽はここ10年間でも、和モノと親しみをもって呼ばれることも多くなり、ひとつの音楽として在り方が変化してきているように感じられます。

通な人しか知らなかった素晴らしい音楽が、インターネットのお陰もあり以前よりも世間に浸透し、中古レコードとしての価値も高まったものがかなり増えました。

古いレコードというのは長い年月のなかで当然 数も減っていく傾向にありますから、その点も含めて邦楽のレコードの価値は昔よりも上がっているといえます。

再評価の波にもまれるシティ・ポップの他にも、邦楽レコードには高い金額で取引される作品も数え切れないほどあるのです。



人気が高まった理由は「素晴らしい音楽」だから

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今回は和モノ人気をざっくりと紹介しました。

このブームはあなたが想像するよりはるかに大きなものです。信じられないかもしれませんが、世界中に熱狂的なファンを持つ歌手もいます。山下達郎のレコードがその最たるものと言えるでしょう。

ミュージシャンとしての素晴らしさにも時代がやっと追いつき、国内外のファンの耳を満足させ、和モノが心を掴んで離そうとしません。

昔であれば中古レコード店で数百円で手に入ったものでも、いまでは数万円にまで高騰しているものがあるほど。

知っているようで知らなかった邦楽の意外な一面に、私たちは驚き、その虜になってゆくのです。


文:福田俊一(Ecostore Records)


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