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読書記録 「SDG時代の食・環境問題入門」

著者:吉積巳貴・島田幸司・天野耕二・吉川直樹(立命館大学)
出版社:昭和堂 シリーズ食を学ぶ
定価:本体2600円+税
初版1刷:2021年10月20日 

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読書日:2022年5月26日

立命館大学の先生たちが集まって書いた本で、授業で教科書として使うことを意識しているようにみえる。20File構成で、各Fileにキーワードと「考えてみよう」コーナーと文献リストがある。
プラスチックや培養肉などの最近の話題のテーマにも触れている。

20file構成(目次)

⓪ MSDsからSDGs
① 食品ロスとフードチェーン
② 栄養源かエネルギー源か
③ ロスを減らすニュービジネスの芽
④ マイクロプラスチック
⑤ 漂流するプラスチックごみ
⑥ 脱プラスチック
⑦ 気候変動
⑧ 再生可能エネルギーの主電源化
⑨ 金融
⑩ 気候変動と食料供給リスク
⑪ 植物肉・昆虫・藻類の可能性
⑫ 食の安全保障と食料自給率
⑬ 生物多様性の損失
⑭ 生態系サービスと人の暮らし
⑮ 水産資源の持続性可能性
⑯ エシカル消費
⑰ SDGsの企業経営
⑱ サーキュラーエコノミー
⑲ 環境クズネッツ曲線
⑳ ポーター仮説

MDGs

SDGs(2030年の目標)の前の目標。
2015年までに達成を目指した8目標。
【改善された点】
・ 極度の貧困を半減した。
・ 飢餓人口を減少させている。
・ 未就学児童を半減した。
・ マラリアと結核で死亡する人が大幅減少した。
・ 安全な水を得られない人が半減した。
【未達成の課題】
・ 国内格差(男女・収入・地域)
・ 5歳未満児の死亡率
・ 妊婦の死亡率
・ 改善された衛生設備へのアクセス

フードロス

フードロス量の国際比較
・ 南・東南アジア   120kg/人/年
・ サハラ以南アフリカ 170kg/人/年
・ ヨーロッパ     280kg/人/年
・ アメリカ      300kg/人/年

食料自給力

食の国際統計
・ FAOSTAT : 国際機関FAOの統計
・ AQUASTAT : FAOの飲料水に関する統計
・ Fishstat : 漁業の統計

ダイベストメント

悪影響を与える企業から、投資資金を引き揚げること

エシカル消費

エコラベル(環境に配慮して生産している証)などを用いて、環境に配慮している商品を購入するようにすること

環境マネジメントシステム

国際規格ISO14000シリーズ。環境監査。PDCAサイクル

生態系サービス

生物多様性がもたらす様々な恩恵のこと。
◆生態系サービス         
・基盤サービス ・供給サービス  
        ・調整サービス
        ・文化的サービス
◆人の福利の要素
・安全・資材供給・健康・良い社会的絆
・選択と行動の自由

SDGsの企業行動計画

SDGsコンパス
ステップ1: SDGsを理解する
ステップ2: 優先課題を決定する
ステップ3: 目標を設定する
ステップ4: 経営に統合する
ステップ5: 報告とコミュニケーションをする

環境クズネッツ曲線

経済学で、所得水準(横軸)vs. 所得格差(ジニ係数)(縦軸)のグラフをクズネッツ曲線といい、伏せたU字型になる。
この縦軸を環境汚染度に替えたものを環境クズネッツ曲線という。
所得水準がゼロもしくは最大の時、環境汚染は起きない。

ポーター仮説

適切に設計された環境規制は、
経費削減・品質向上につながる技術革新を刺激し、
その結果、
他国に先駆けて環境規制を導入した国の企業は、
国際市場において、他国企業に対して競争優位を得る。

【読書感想】
環境学を専門としない学生に向けた網羅的な教科書である。構成や用語の定義などが判りやすい。
本書の結論は「ポーター仮説」で、SDGs経営をするという環境規制は企業の成長を促すということなのだろう。
「ポーター仮説」は、1980年代のジャパン・アズ・ナンバー1の時代に、自動車排ガス規制という厳しい国際的な制約の中で日本の自動車産業が世界1になった経験から生まれたもので、欧州の化学物質規制のREACH規則に引き継がれていると言われています。
また、アベノミクスによる経済政策が20年間金融政策による景気浮揚を目指し続け、企業に厳しい規制を強いることがなかったために、日本の企業は全く技術開発を進めることがなく、国際産業競争力を失っていったという結果とも符合しています。

【記者紹介】SDGs導入支援エコロフーズ・コンサルティング・カンパニー


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