見出し画像

物流と保険業界の意外な共通点

時代の変化が激しくなり、生命保険の一視点だけでは価値がなくなってきた。そんな中、私が最近目をつけているのは物流のノウハウである。

生命保険の事務は労働集約的な仕事から知識集約的な仕事への転換期に来ている。

請求案内〜支払査定〜送金まで、大勢の人間が携わっており、それぞれの工程にも細かなノウハウが沢山ある。

人が大勢携わっているということは業務量に応じて人件費が変わるため、コストの変動幅が大きいということだ。

さらに、熟練者は続々と退職してゆくため、人材の確保が難しくなってゆく。このままでは時間が経過しても組織が強くならない。

労働集約的な仕事の将来像を描く上で、物流業界におけるサプライチェーンマネジメントのノウハウが生かせるのではないか。そんな思いから手に取ったのがこの本だった。


著者は日本で最初のチェーンストア経営専門コンサルを立ち上げた人物で、この本は初版が平成15年にもかかわらず、内容は今でも通じるところが多々あった。

本書では業務の標準化(いつ誰が行っても、同じ手順で無駄なく作業できるようにすること)の必要性が繰り返し語られている。

日本の労働生産性が低い原因は創造性の欠如からではなく、標準化が徹底できていないことにあるというのが著者の主張である。

標準化できるからこそ安定して生産性が発揮でき、事業がスケールして更に生産性が高まってゆくのだ。

実際私も仕事をしていて、属人化し、人事異動とともにブラックボックス化した状況に何度も直面してきた。

前任者の在籍時であれば僅かな引継ぎ時間で済んだのに、残された手がかりをもとにゼロから改めて業務を解き明かしてゆくのは極めて非効率だ。

現場の試行錯誤と業務の仕組化を一連のフローとして業務に組み込まなければいけない。合わせて、業務の仕組化への貢献度を評価するような人事体系も作らなければいけない。

ありがちなのが、評価の際に在籍時のパフォーマンスしか対象としないことである。

これは在籍期間中に部下に圧力をかけて無理やり業績を引き上げる、いわゆる焼畑農業的なマネジメントの誘因となる。

業務の仕組化への動機付けが弱くなるため、組織を去った後に業績が落ちることになる。これではいつまで経っても組織は強くならないのだ。

読めば読むほど「これは物流業界に限らない、組織作りの本質を語った本だ」と確信するに至った。

「問題意識を持った人にだけ輝きをみせる本」を発見することは読書の最大の喜びである。

本質を突き詰めてゆくと、意識しないうちに業界を突き破り、分野を超えた知見に辿り着くのだと勇気づけられた本だった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?