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生命保険会社のイノベーションを生む仕組みを考える

生命保険業界は入社して最初に業界の定める資格試験をたくさん受けるのだが、そこで学んだはずの事柄は時間と共に忘れてゆく。

しかし、実務経験を積んでから改めて振り返ると、気づくことがたくさんある。

というわけで、手に取ったのがこの本だ。

特に興味を惹かれたのは少額短期保険事業の記載である。

これはその名の通り保障期間が短期な保険事業だ。

免許ではなく財務局への登録で参入でき、必要な資本金が少額で、既存の大手保険事業と比べると参入が容易である。

そして、少額短期事業者はニッチ市場の保険を取り扱う。参入障壁が低く、ベンチャー的な要素がある事業だ。

大手がなぜニッチな保障を取り扱わないかというと、固定費の高い既存事業をペイできるかが不透明だからである。

ところが、少額短期保険事業がいろんな保障を試し打ちし、その中で大ヒットするものがあったら大手も安心して参入できる。

こちらの本で見事に言い当てられているのだが、大手企業は事業の採用・不採用を判断する基準を「歴史ある既存事業をもとに考えてしまう」傾向がある。

過去に例のないことに取り組んだらリスクが高いのは当たり前であるが、基準が既存事業だとほぼ全ての新規事業が却下されてしまう。

さらに、この本では「最低でも300回の試行錯誤を行えば事業は上手くいく。この回数を確保するには報連相をやっている場合ではない」と経験則が示されている。

報連相を重んじる大手企業の意思決定体制は、新規事業を生み出すにはそもそもミスマッチである。

身軽な組織体制の少額短期保険事業でマニアックな保障を色々試すのが、保険商品のイノベーションのためには必要なことだと思う。

革新的な事業の成功に一番重要なのは意思決定体制だからだ。

というわけで、今の少額短期保険事業者一覧を見てみた。

今後の保険業界のイノベーションはここから生まれてくるかもしれないので、要注目だ。




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