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転職市場の盛況と共働き世帯増加で、変わりつつある福利厚生の活用方法

人手不足で立場が強化される若手たち

将棋繋がりで現役の大学4年生と話す機会があった。

私「最近は人手不足だから売り手市場なんじゃない?」

学生「はい、明らかに易化してますね。私は7社ぐらい内定をもらいました」

私「人気企業の顔ぶれも変わってるよね?」

学生「今は外資系やコンサルが人気ですね」

私「自分は会社のDXを推進する仕事をしているよ」

学生「え、転職し放題じゃないですか!」

会社の若手に聞いてみても、「10社ぐらい内定もらった」とサラッと出てきてビビった。私が就活生の時は超氷河期で、50社受けても希望の業界に通らなかった人がたくさんいたのに。

高度成長期は企業が学生を接待してまで人材を取り合っていたが、今は少子化に伴う人手不足で同じような超売り手市場が到来している。

若い人たちが入社時点から転職を意識しているのも、「労働力としての希少性を目一杯生かして福利厚生や高い給料を勝ち取ること」が最短距離でいい思いをできる道だと肌感覚で分かっているからだろう。

仕事でも自分の学びに繋がらない(市場価値の向上に繋がらない)と感じたら、のらりくらりとサボタージュしてくる。単に権力で押さえつけるのではなく、誰よりも深く視座の高い業務理解をベースとして、言い訳を許さないコミュニケーションをとらなくてはいけない。

以前よりも若手社員との接し方は難易度が上がるが、結果として無能な上司・先輩の求心力が低下することになるので正当な淘汰圧といえる。

福利厚生を目一杯活用する知恵

共働きの家庭が増え、「パートナーのうち社宅手当の手厚い方が賃貸契約を結ぶ」ことが当たり前になってきた。私の身の周りでは奥さんが「手厚い社宅手当+時短勤務」で子育てをメインに担い、旦那がフルタイム勤務で稼ぎメインというパターンが多い。

産休・育休も「育児休業給付金はフルタイム時給料の○割が支給される」という規定をちゃんと理解していて、給料がドカンと上がる年次になってしばらくしてから取得している。(つまり、時期を見計らって子作りをしている)

目立たないが、「会社のカンバンに対する信用で住宅ローンが組みやすくなる」もまた重要な恩恵である。

そして、子供を産んでからも仕事を続ける女性が増え続けている。理由の一つ目は前述の社宅手当。二つ目は女性間で「専業主婦になるのは、夫のモラハラ・DV、体調不良による旦那の収入減少、閉じられた人間関係による自身のメンタルダウンなどのリスクが大き過ぎる」という認識が広まっているからだ。

こうして並べてみると、就活生が会社選びの時に待遇面で押さえるべきポイントは「社宅手当(金額条件や適用対象範囲を要確認)」と「昇給タイミング」ぐらいじゃないかと思う。

思いっきり内部情報なので、OB・OG訪問で聞くべき話だ。(会社説明会の人事担当者に聞くと地雷を踏む可能性が大である)

福利厚生が生み出す転職の落とし穴と新しい潮流

「会社を移ったはいいけど、社宅手当も合算すると実質的な給料水準が変わっていない」は転職あるあるなので、内定を貰ったなら事前に確認したほうが良い。

積み上げた信頼をゼロリセットしてまでせっかく新天地を求めたのに、待遇面が全然変わっていないのであればただ単に競争が激しい場所に飛び込んだだけになってしまう。

社宅手当が基本給に変わることのプラス面としては、選べる住居の幅が無制限になることである。なぜなら、会社が社宅手当として支給できるのは、あらかじめ会社が契約した物件だけだからである。

「結婚や出産などを機に社宅の縛りなく家を選びたい」という動機がある人間にとっては、社宅手当よりも給与支給の会社を選ぶことはある程度正当化される。

ある程度、と注釈をつけたのには訳がある。社宅手当は非課税だが、給与支給には当然所得税がかかる。会社側の負担額が同じでも、実質的に家賃で使えるお金は税金の分だけ給与支給の方が小さくなるのである。

福利厚生と転職がらみで興味深い傾向をもう一つ。結婚を機に転職を決断する人が増えているのである。「パートナーの稼ぎと福利厚生により、セーフティネットの確保ができた。そのため、本当に自分のやりたい仕事へ飛び込むことができる」という思想である。

「結婚したからこの人間は会社から離れることはないだろう。なのでコキ使ってもいいな」という考えはもう古い。成り立つとしたら、その人の市場価値が下がった時か、住宅ローンを背負った時だろう。

制度が変わらなかったとしても、時代の変化と共に活用方法はどんどん変化している。人の取り合いになっている時代だからこそ、このあたりの変化にも敏感でありたいものだ。

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