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私のゴルフ引退記と、理容師さんのファインプレー

俺の弱さを見くびるなよ

ある日、会社のゴルフコンペにて、私は参加メンバーに高らかに宣言した。

「今回のコンペで、後輩のK君に負けたら引退します」

K君は職場の同僚で、抜群に頭が良くて仕事では大活躍なのだが、スポーツはそこまで得意ではない子だった。私は一向に上手くならないゴルフに嫌気が差していて、K君を口実にゴルフコンペを引退しようと企んでいたのである。

会社の付き合いで始めたゴルフだったが、自腹で教室にも通い、自分なりにちゃんと向き合ってきたつもりだった。

私は腕が細くて上半身の力が絶望的に弱い。体育の授業で野球をやることになっても、同級生から「肩弱っ!」と叫ばれるぐらいでキャッチボールが成立しないのである。ゴルフでもこの上半身の弱さが影響して、全然飛ばない。パー3のホールでも、1打目はドライバーで打って丁度いいぐらいだ。

教室で習ってフォームは綺麗になり、素振りだけであれば経験者たちを戦慄させることができるようになった。しかし、実戦で疲れが溜まってくると見る影もなくなり、いつも通りボーリングのようなスコアを叩き出すのである。

さらにさらに、私は朝が弱い。明け方の4時とか5時に起きることが強要されるゴルフは、天敵ともいえるスポーツなのである。

いくら運動にそこまで強くないK君でも、この私と最弱を争えばきっと打ち負かしてくれるだろう。

バンカーにボールが吸い込まれても、この日に限っては「引退へのカウントダウンが進んだな」と胸をワクワクさせていた。

そして、表彰式。「いやー、最下位は嫌だなぁ」なんて口では言いながら、私は期待に胸を膨らませる。ところが、K君は私よりもさらに悲惨なスコアを叩いていた。

結果を聞いた時は思わず目が点である。なんということだ。せっかく引退できると思っていたのに。

その後、新型コロナの流行でゴルフコンペがなくなり、そのままなし崩し的に私はゴルフを引退することになった。

思い返すとK君には申し訳ないことをした。他力本願は先輩としてあるまじき態度だ。嫌ならば断固たる態度で断るべきところである。

みなさん、正直にいってください。実はコロナで消えて精々してる会社の慣習とかあるでしょ?

コロナが収束して蘇らせようとする動きは出てくると思いますが、民意を作るには今が正念場ですぞ。

髪は口ほどにものをいう

職場の人に「ツーブロックにしたほうがいいよ」とアドバイスを受けて、試したことがある。やってみたら「いいよ、若く見える」と評判は上々で、私も気を良くしていた。

ある日の日曜日、通っている理容室に行くと、いつも担当してくれる理容師さんが不在で、代理の人が担当してくれることになった。

「ツーブロックでお願いします」と頼むと、早速バリカンを取り出して、髪をジョリジョリやってくれる。

あれ?なんだかいつもよりバリカンをガッツリ入れてるような・・・。

仕上がりを見た私は愕然とした。いつもよりかなり短め。いや、これはもはや野球少年の坊主頭に近い。ツーブロック一つとっても、ここまで人によって解釈が違うのかと思い知らされた。

翌日、私は営業現場に直行した後、夜に事業所に帰ってきた。

どうやら先週に私が仕事をミスっており、上司たちは帰ってきた私を叱ろうと身構えていたらしい。そこへ視界に飛び込んでくる私の限りなく坊主頭に近いツーブロック。

「・・・お前笑わせんじゃねぇよ。こっちは疲れてるんだよ。言おうと思ってたこと忘れたじゃねえか!」

シリアスな空気だったのに、周りの先輩たちは堪えきれずに爆笑。その中の1人から「お前、反省して日中に切ってもらったのか?」と質問された。

「いえ、日曜日からこうでした」

さらに追い討ちが決まり、場の空気はもはや収拾がつかない。髪の毛が一足先に反省の意を表明してくれたお陰で、こっぴどく叱られることを避けることができた。

あの日だけ担当してくれた理容師さん、ナイスでした!

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