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【舞台感想】ハリーポッターと呪いの子

 私はハリーポッターがそこそこ好きである。ハリーポッターの映画はファンタビも含め全作視聴済みだし、イギリスに留学していたころにキングスクロス駅のショップでスリザリンの制服を一式揃えて持っているくらい、そこそこ好きだ。自分の中では結構好きなのでは?と思っているが、ハリーポッターはガチ勢がすごすぎるので「そこそこ」好きと公言している。

 加えて観劇はかなり好きなので、舞台呪いの子は前々から気になっていた。なんでも、舞台上で魔法を使うらしい。以前違うマジック系の舞台を観た際、本当の本当にひどかったのでそれ系は倦厭していた。しかし妹に「絶対観た方がいい」と連れられ、重い腰を上げ観てみたらとても素晴らしかった。以下、ハリーポッターと呪いの子のネタバレを含むので注意してほしい。

!! 舞台ハリーポッターと呪いの子 ネタバレ注意 !!

 チケットが一般的な演劇の倍以上とかなり強気で驚いた。「これでひどい舞台だったらかなり泣くぞ」と思いながら、評判を信じて購入した。妹が(私はお金を渡しただけです)。

 まず観て思ったのが、金と時間と労力のかけ方が他の演劇の比ではない。金にものを言わせた演出で圧倒させている、だけでもなかった。場面転換では流れを崩さない工夫が凝らされ、気持ちが途切れない。またスーツケースが列車の座席になったり、墓石になったりといった小道具の使い方もよかった。
 あと、アンサンブルの演者達がすごい。大道具を動かすのはもちろんだけど、ガヤもうまいし次々いろんな役を演じていても「あ、あの人さっき◎◎の役で出てた人だな」と感じさせない力がある。メインの演者が動かしている物語に没頭できているから、という理由もあるとは思うけど。
 今まで観てきた舞台の中で、トップ3に入るくらいには素晴らしい舞台だった。

ここから先は長くなるので、いくつかに分けて感想を書こうと思う。


1. 構成


 ストーリー構成としては、最初はかなり超特急。1年生から4年生まではダイジェストだが、その分最後アルバスとハリーがきちんと話し合うシーンに時間を割けていたので、時間の配分はこれが正解なんだろうと思う。ただファンとしては、1年生から3年生までアルバスとスコーピウスがどういった経緯で友情を育んでいったのかが気になる。スピンオフとかで書いてほしい。JKローリングさん、どうですか?

2. ストーリーとキャラクター

 シリーズ本編のキャラクターが親になって、誰と誰が結婚してみたいなのが見られたのはとても面白かった。本編と呪いの子で大分性格も変わったキャラクターもいたり、逆に全く変わらないロンみたいなやつもいたり、その変化にもキャラクターの新たな面が観られてよかった。

 特に変わったのはドラコ。本編をみていた時は「嫌な奴だけどかわいそうだな」と思っていたのが、家族をもって、愛を知って、自分よりも誰かを大事にするためにかつて大嫌いだったハリーにも本音を語るようになっていったドラコを見て、父親がルシウスではなかったら、ドラコもスコーピウスみたいに素直な子に育っていたのかもしれないと思うと切ない。多分それはドラコも分かってて、スコーピウスには自分みたいになってほしくないから、親友を奪ったハリーに直接話しに行ったんだろうなとか考えていた。呪いの子を見て、ドラコがとても好きになった。

 逆に本編でちょっと嫌だな~と思っていたハリーの性格が、父親になってめっちゃ嫌な奴になっていたのには笑ってしまった。まあ、ハリーの父親ジェームズだもんな。そしてそのちょっと嫌な感じがアルバスにも絶妙に遺伝されているのにも、血筋を感じる。この「ちょっと嫌」な感じが話の中で生きているのが人間臭くて面白かった。

 あと驚いたのがマートル。本当にマートルだった。本物かと思った。本物じゃないことはないんだけど、本当に話し方やしぐさや表情がマートルだし、ずっと回ってるし。

 それからピンクババアドローレスは驚いた。話の展開的にも「なんでこいつここにいるねん」だったし。私はドローレスがすごい嫌いなのだが(好きな人いるのか?)、あの人の嫌さも映画そのままだった。ピンクの羽ペンってどこで売ってんだよ。幕間後の開園アナウンスがドローレスだったんだけど、嫌すぎて声が聞こえた瞬間「ウワッ」と言ってしまった。でも隣の席の人が忌々しいマグルケータイの電源切ってなくてバイブレーションを響かせていたので没収しに来てほしかった。

 第二部の最初はドローレスに持ってかれた感じがあるけど、見どころはなんといってもスネイプ先生。私がスネイプ先生好きというのもあるけど、ヴォルデモートに支配された後の世界でもスネイプ先生はずっとリリーの守りたかった世界を守り続けていることに、愛の深さを感じた。ハリーポッターの世界で愛を語るなら、スネイプ先生は絶対に必要だ。元の世界に戻って再び死んでしまったけど、舞台上で一瞬でもスネイプ先生が観られて嬉しかった。ヴォルデモートに支配された世界でスコーピウスが本編のドラコ以上に嫌な奴になっているのがなんだか妙にリアルだった。

 デルフィーが敵でヴォルデモートの娘だったのはかなり予想外ではあったけど、結局彼女も自分のお父さんに生きていてほしくて、一目でいいから会いたかったっていうのも切なくて好きだ。ヴォルデモートは多分、なんとも思ってないのに。

 呪いの子を見る前、炎のゴブレットを見返してから行ったのだけど、見るたびにセドリックはいい奴だな……と思う。でも、殺す必要あった?みたいな殺され方にいつも心を痛めていたので、こうして救えなかったセドリックを題材にしてもう一つの話ができたのは嬉しかった。舞台で一瞬だけ出てきたセドリックもいい奴だったな。

3. 演出


 湖に入るシーンで水を使っていた。奈落に大きい水槽みたいなのがあって、本当に演者が水に入っていた。そんなことある?と思ってSプラス席なのにわざわざオペラグラスで確認したが、本当に水だった。上がるとき舞台の一部濡れているし。普通だったら水に入らなくていいように演出でなんとかするのを、装置と財力で入水させていた。こんなのアリ?を平然としていたのがすごい。

 演出としての魔法はすごかったんだけど、あんまりにも自然に使うから観ているうちに「舞台の上は魔法界なんだからそりゃ魔法使えるか」みたいな気持ちになってしまって、特に魔法に関する感想がない。魔法、使ってた。魔法使いだから。

 でも、ジニーが客席に杖を向けた瞬間、客席の壁一面に細工がしてあって(おそらく)ブラックライトで浮かび上がっていたのには驚いた。呪いの子大阪公演してよ~!と思っていたけど、ここまで細工してあるんじゃ無理だ。

 幕間前にディメンターが映画で見たままの姿で舞台上と目の前に現れたので鳥肌が立った。何も特殊効果使わずこの不気味さを現実で表せることにも驚いたし、シンプルに怖かった。人が透ける布かぶって照明で照らされているという理論は分かるけど、ここまで本物に近づけるのに照明や布もかなり工夫したんだろう。

 演者は当たり前のようにマイムをする。湖の中を泳いでいるときのワイヤーワークもすごかった。あれは相当練習したんだと思う。大分序盤でその1場面1場面の完成度の高さに、ここまで完成度を高めるための演者やスタッフの労力だとか、嫌な思いとか悔しい思いもしただろうな、大変だっただろうなとか考えてしまって、大分序盤で泣いていた。

 ギャグシーンがちゃんと面白いのもよかった。ギャグシーンが面白いのはいい舞台だと思う。演劇をあまり見ない人でも面白いものは面白いと笑えるから。特にポリジュース薬を飲む前のスコーピウスの駄々と、ロンになったアルバスがハーマイオニーに向かって「子どもを作るかバカンスに行こう!」と言うシーンがとても好きだ。ハチャメチャに笑ってしまった。

最後に:総括と赤坂ハリーポッターワールドの話

 幕間の前、第一部が終わった後に拍手が巻き起こっていたし、最後はスタンディングオベーションの大喝采だった。私も立った。本当にいい舞台だったと心から思う。

 子は親を選べないし、親も子を選べない。ハリーが息子に向かって「俺もお前が息子でなければいいと思ってる」と言ったのはさすがにダメだろ!と思った。でも、家族と言ったって違う人間同士なんだ。時にはぶつかって、傷ついて、傷つけて、許せないことも許せることも抱いて、関係を築いていくしかないんだと思う。「ちゃんと話せていなかった」親子が話し合えたというラストは、分かり合えたにしても諦めたにしてもいいラストだったと思う。アルバスにはぜひ鳩をいっぱい飼ってレースをする人になってほしい。

 舞台の感想はこれくらいにしておいて、最後に周辺施設の話でもしようと思う。

 会場の赤坂TBSシアターは周辺からもうハリーポッターの世界が作られており、赤坂駅の地下から会場に着いた時の大きなタイムターナーのオブジェと壁画は結構感動した。

赤坂駅地下からTBSシアターへの道

 終演後は予約したハリーポッターカフェでどっぷり世界観に浸りました。味はあまり期待していなかったけど、普通に美味しかった。私はスリザリンプレートを頼みました。サンドイッチ食べる時の包み紙までスリザリンで嬉しかったな。

奥にいるのは一緒に行った妹

 妹はレイブンクロープレートを頼んでいて、こちらも包み紙がレイブンクローでした。どちらもかわいい。

 かなりいい舞台でした。次はホグワーツ練馬校もといスタジオツアー行きたいですね。というか京都住んでるんだしUSJに行きたい。

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