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カンボジア・ブロンズ受賞作品【SDGs×アートWhiteCanvas】

カンボジア・ブロンズ受賞作品⓶

『自由な発想を大切にし「表現する喜び」と「豊かな表現世界」を、カンボジアの子どもたちに。』

世界遺産アンコールワットの街シェムリアップに、そんな思いで設立された授業料も画材も完全無料の美術スクールがある。

スモールアートスクール(小さな美術学校)だ。

スモールアートスクールは、元都立高校美術教師の笠原知子先生が、日本で20年以上かけて資金準備をし、2008年に全額自己資金だけで創立した美術スクール。

寄付でもなく、助成金でもなく、笠原先生の自己資金でスタートしたのだ。(現在はNGO Wind of Art Organizationとして運営。)

カンボジア・ブロンズ受賞作品③

笠原先生と初めて出会ったのは、私がカンボジアに来たばかりの2013年。

カンボジアで活動するアート関連の方に興味を持ち、人づての紹介で笠原先生にご挨拶に伺った。

そして、子どもたちに絵を教えている現場に連れて行って頂いたり、色々とお話を聞かせてもらう。

笠原先生は教育者でありながら、芸術家だ。それも、その魂をカンボジアの次の世代に繋げることによって表現する芸術家。

それは、スモールアートスクールの学生たちの作品を見るとよくわかった。カンボジアに、こんな美しく魅力的なアートが存在していることに衝撃を感じたのをよく覚えている。

その中でも、ひときわ繊細な作品を描いていた青年がChhoem Hay君だ。
作品だけではなく、思春期真っ只中の、彼自身にも繊細さを感じさせる青年だ。

カンボジア・ブロンズ受賞作品④

そんな彼が、水彩絵具でしゅしゅしゅ、と簡単そうに描いたバイヨンや象のは魅力的だった。

伝統的なモチーフを描きながらも、どこか機械的で、現代的なタッチ。

眠っていた、コレクター心をくすぐる。彼の作品は、欲しくなる。

彼自身が、自由に絵を描くことが好きなのであろう。
繊細な彼と、その彼の作品からは、それを感じさせる。

Hay君を、そのような感情にさせる環境が、カンボジアにはあるのだ。

カンボジア・ブロンズ受賞作品⑤

カンボジア・ブロンズ受賞作品⑥

そこから、8年。

10代後半だったHay君は、アーティストとなりWhiteCanvasに応募してくれた。

カンボジア・ブロンズ受賞作品⑦

『Angkorian Heir」〜アンコール王朝の後継者〜と名付けられたこの作品は、現代舞踊と伝統舞踊の両方を表現している。

音楽を絵画で表現した意欲作だ。

そして伝統とモダンの音楽を組み合わせることにより、新しい時代のクメールアートを模索している。そしてこのコンセプトも作風も、8年前のイラストとどこか通じるものがある。

Hay君の現在はスモールアートスクールで教鞭を振いながら、今も建築を学びに大学に通う学生だ。それだけではなくバイオリンにも興味を持ち、週末には夜行バスに乗ってプノンペンに学びに来ているらしい。

この作品は、絵画だけではなく、音楽にも造詣が深い彼らしい作品なのではないだろうか。

カラフルでありながら、繊細。そして、その優しいタッチは、優雅さと神聖さも感じる。

そんな彼の作品は、WhiteCanvasのブロンズ賞を受賞した。

カンボジア・ブロンズ受賞作品⑧

Hay君をはじめとしたスモールアートスクール出身のアーティストは、笠原先生の教育の賜物なのか、カンボジアという国のポテンシャルなのか、とても個性的な魅力を発揮している。

自由に描かれ個性的な作品たちは、スモールアートスクールに行く度に増えていく。

そんな彼らの個性と、笠原先生の思いは、新しい時代のカンボジアのアートを牽引していくことだろう。

--------------------------------------------------------------------------------------「中村 英誉@アート・デザインで世界を変える!」
2021年9月16日の記事より

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