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愛しの安達祐実ちゃん


誰に憧れて芸人になったんですか?

と聞かれると私はいつも
「安達祐実さんです」と答える。


ボケのように思われるかもしれないけれど、ほんとにほんとなのだ。

もちろん安達祐実さんは芸人ではない。
「同情するなら金をくれ」も持ちギャグではない。

しかし私がこんなにテレビに出たくてしょうがない子供になったのは、安達祐実さんの影響なくして語れない。


安達祐実さんといえば社会現象となった『家なき子』が有名だが、
私はそのもっと前から祐実ちゃん(と昔の私はいつも呼んでいた)に目をつけていた。


1番最初に祐実ちゃんを知ったのは、あのムツゴロウさんこと畑正憲さん原作の映画『REX 恐竜物語』である。


時を超え奇跡的に見つかった恐竜の卵を現代の研究所で孵すというストーリーで、恐竜REXは精巧なロボットが演じる。

私は自分が爬虫類みたいな顔してることが関係しているかは分からないが恐竜が割と好きで、ロボットREXの可愛さに心を奪われた。

そのREXが誕生した時、1番最初に視界に入ったことで赤ちゃん恐竜の親代わりとなるのが研究員の娘役、我らが安達祐実ちゃんである。


わずか15秒そこらの映画CMの中でくるくると変わる祐実ちゃんの表情。
小学校3年生の私はこれを観たいという強い気持ちに駆られ、お母さんにせがんで映画館に連れて行ってもらった。


アニメ以外の実写映画を人生で初めてしっかり見た瞬間だった。
スクリーンの中で祐実ちゃんが、子供でありREXのお母さんであり1人の人間である、すごい物語を見せてくれた。


たった3つ上の女の子が映画で堂々たるヒロインを務めていたことに度肝を抜かれた。


石出少女の恐ろしいところは、「わかりました、いいでしょう、私もこの人みたいになります」と脳内会議で早急に可決してしまうところだ。
堂々たる勘違いヒロインの誕生である。


安達祐実ちゃんになると決めた私は、祐実ちゃんのすべてに夢中になった。


読めもしないREXの文庫本を買い、映画の終盤恐竜と別れた時の祐実ちゃんの「レックスーーーー!!」をマネして日夜叫びまくった。


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そこから進研ゼミ小学講座のCMソング『どーした安達』のCDを根性で抽選で当てたり、すでに雑誌にもよく出ていたので切り抜きをスクラップしたりして過ごし、祐実ちゃんの活動を追っていた。


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家なき子でスーパーブレイクした時には「ほら、私の祐実ちゃんだもん当然でしょ」と謎に高飛車になったものだ。
ドラマの祐実ちゃんと同じ白のキャップ、オーバーオール、がま口を揃えてもらい毎日のように着た。
芝犬だけは側に置けないのを心底悔いた。

「あんたはカネゴンだ、カネギドラだ…」とドラマのセリフを書き起こして暗記し、学校の休み時間に望まない同級生に無理やり見せるという迷惑行為も横行した。

1番頭がおかしいのは、安達祐実ちゃんを好きだという同級生を審査して面接してファンと認めるかどうかの査問委員会をやっていたことである。

雑誌のインタビューで年頃の男性タレントが「祐実ちゃんと仲良くなりたい」と言っているのを見かけたら、妙な気を起こさないかスキャンダルになって祐実ちゃんに被害が及ばないかというリスクを回避するためにその男性タレントの活動まで追っていた。

小学校4年生にして超狭い範囲のしょぼい私的サンミュージックマネージャーのようなことを勝手にしていた。
お金も出ないのに。
祐実ちゃんは金をくれって言ってるのに。


どこにこんなエネルギーが生まれるのか?
その思考回路はこうだ。


安達祐実ちゃんは私の将来の姿。祐実ちゃんが輝けば輝くほど私の将来も輝く。
だから祐実ちゃんを全力で応援して守らなければならないのだ…!


…恐ろしい自家発電をしていたものである。


物心ついた時からチヤホヤされたい芸能人になりたいと思っていたところに「女優(安達祐実ちゃんのような)」という具体的な目標ができて、もうどうにも止まらなくなってしまったのだった。


勘違い自転車を爆裂に漕いで焚いたライトは、女優という勘違いロードを私に照らした。


実際はへこたれ芸人の道へ向かっていたのだけれど。


お仕事で好きな方に会えると、
嬉しいよりもご一緒して自分がその仕事をうまくやれるかとか、
失礼がないかで頭がいっぱいになってしまってあまり喜べない。


でも安達祐実さんだけは特別で、一度はお会いしてみたいし、もしお会いできたら猛烈な感動が押し寄せてしまうと思う。


そして身をもって思い知るだろう。


いつまでたっても美し可愛い次元の違うこの方の、どこが私の将来の姿だ。


一昨日きやがれ自分、
いや、
小3の時来やがれ自分、
今すぐその勘違い行為をやめるよう言ってやる。



でも、やっぱり安達祐実さんにはしばらく会えないほうがいいかもしれない。



今もどこかに向かって漕いでいるボロボロの自転車が、止まってしまうから。



たよりない光を発しながら、
まだあなたに向かってペダルを踏み続けます。


…いやまだ女優目指しとんのかい。


現在放送中のドラマ『捨ててよ、安達さん』を見ながら思う。



ずっと捨てられません、安達さん。


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