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モガディシュ 脱出までの14日間

しばらくぶりだ。
息もできないくらい夢中になった。
韓国映画は凄いところまで行ったなあと感激した。
1999年に「シュリ」を見て韓国映画にはまっていらい、約四半世紀。
毎年、アッと驚く作品がつくられ、才能ある監督が出てきた韓国映画界。

モガディシュ 脱出までの14日間
リュ・スンワン監督 韓国 2021年

1990年、ソマリア。
当時まだ国連に加入していなかった韓国は、国連に影響力を持つアフリカに、力添えを期待し、ソマリアでロビー活動をしていた。
韓国のハン大使、カン参事官は、韓国よりも20年も早くからアフリカと外交を始めていた北朝鮮のリム大使、テ参事官とことごとく対立していた。
そのような時に、ソマリアの首都モガディシュが、現政権に不満を持つ反乱軍に制圧され、激しい内乱が始まった。
街は反乱軍の銃撃により、危険な状態になり、暴徒はあちこちで騒ぎを起こすという混乱状態に陥った。

北朝鮮は大使館を暴徒に襲われ、行くところもなく、大使館員とその家族(小さい子どももいる)が路頭に迷っていた。
葛藤のすえ北朝鮮側が、韓国大使館にかくまってくれと頼みこんできた。
当然断るだろうと韓国大使館側の職員は思ったが、ハン大使は北朝鮮の一行を受けいれる。
ハン大使は、少し頼りない印象があるが、実は肝が据わっていて判断力がある。危険な状態でも、「俺についてこい」と先頭に立つリーダーである。

助けを求める北朝鮮大使

内戦が続く中、何とか脱出する方法を、北、南の大使が話し合う。
北はエジプトに打診し、南はイタリアに打診することになる。
電話線も切られているため、代表の大使が、銃弾を潜り抜けそれぞれの大使館へ車で向かっての交渉である。
結局韓国と国交があるイタリアが、韓国人だけ自国の飛行機に同乗させると言ってきたため、北朝鮮側は、韓国大使館の一行としてイタリアの飛行機に乗ることになる。それはそれで、北朝鮮側にとっては複雑なものがある。

最終的に、飛行機に間に合うように、韓国と北朝鮮の一行が協力して、韓国大使館からイタリア大使館まで、銃撃戦のなかを4台の車に分乗して向かうのだが、これが危険きわまりないカーチェイスとなる。
反乱軍兵士たちも祈りをささげるため、町は静かになる。イスラムの祈りの時間に大使館を出発するが、祈りの時間を終えるとすぐに、兵士たちは銃をとり銃撃が始まり、反乱軍の車が執拗に追いかけて銃撃をあびせる。
イタリア大使館に着く前に、車は燃え上がり、フロントガラスから反乱軍兵士が銃をもって突っ込んできたり、ドキドキハラハラ息もできないタイムリミットノンストップカーチェイスアクション。

ボロボロになってイタリア大使館に着く

とにかく、奇跡的に死亡者一名で、イタリア大使館に到着。その晩の飛行機でソマリアを脱出することができた。
しかし命は助かったものの、その後には、大きな問題がたちはだかる。

無事ケニアのモンバサに着陸するが、韓国大使館の世話になったという事実が分かれば、北朝鮮の人たちは、その後大変なことになるだろうと予測される。
それまで協力し合っていた南北の面々だが、知りあいであることを隠し、あいさつは機内ですませ、知らない者同士のふりをして、ほかの外国人たちに紛れてバラバラの行動をとることにした。

飛行機を降りてバスに乗るために並んでいる時、北朝鮮の子どもが韓国の人たちを見ようとしたら、大人がさっと目隠しをする。
内戦のソマリアでは協力していた両国だが、平和な世界では南北は対立した国家のままであるということが浮き彫りにされるシーンだった。

韓国映画らしく、ユーモアもあり、説明的でなく、映像で事実を伝えていくという映画らしい映画であるせいか、凝縮された二時間でまとめられている。
何よりすごいのが、モロッコにモガディシュの町のセットを作ってしまったこと。それも、カーチェイスできるほどの広大なセットだ。

逃亡する車の中で北朝鮮の少年が、銃を持つ反乱軍の少年兵士を覗き見るシーンが忘れられない。
子どもたちが銃を持ち威嚇する。
そしてそれは、今も、どこかの国で実際に起きていることなのだ。

ついこの間、スーダンで、国連軍の車列に入り空港までバスで脱出し、日本へ戻ってきた人々のニュースがあったばかりである。

モガディシュという都市がセットであったと知って、思い出したことがある。
もう20年も前のことだが、長女が卒業した特別支援学校の近くの空き地に、なんだか古めかしい集落が、突然出現したのだ。
えっ、なにこれ、まぼろし?
自分の目を疑った。
何十年も前の昭和の街並みが、目の前に現れたのだから。

その一帯は、返還された米軍基地の広大な跡地で、整備途中で空き地だらけだった。
今でこそ、大学や福祉施設などが整備されて、美しい街並みになっている。
特養の利用者さんが「ここはどこの国かしら。」と言ったほどだ。

あのお世辞にもこぎれいでない町並みは、映画のセットだということが分かった。
「血と骨」だったと思う。原作は映画よりもっとすごくて道を蛆が這って歩いているような集落だった。

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