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破果。おばあさんの殺し屋の話

破果 ク・ビョンモ

米ドラマ「CSIベガス2」のキャサリン・ウィローズは孫がいる捜査官だ。
英ドラマ「ハッピーバレー、復讐の町」のキャサリン・ケイウッドは孫がいる警察官だ。
海外ドラマでは、高齢の女性が、しわも隠さずそのままで登場している。

この国は高齢社会で、もう80代なんてざらざらいて、70代など、バリバリ現役なんだけど、ドラマや映画では、「おばあさん」はやさしくって、かわいくって、若い人の言うことをよく聞く聞き分けのいい、みんなに好かれるマジカルグランマ。
ほんとは、いろいろなおばあさんがいる。

韓国のこの小説、「破果」は65歳の、殺し屋。爪角。
45年のキャリアを誇る、おばあさんの殺し屋爪角の話。
「防疫」と呼ぶ仕事は、ネズミ駆除の仕事ではない。
殺し屋だ。
殺し屋の仕事はハードだ。
気は抜けないし、瞬発力や、判断力が求められる。
体力継続のために、公園などで、トレーニングする。
ジムなど行くと目立ってしまうから。
見かけは、あくまでも、普通の高齢女性で、目立ってはいけないのだ。
65歳で、鍛え上げられた体してたら目立ってしょうがない。
服装も目立たない服を選んで着ている。

これまで、順調に仕事をしてきたのだが、少しずつ、心身ともに、老化を感じるようになる。
体の痛み。
それ以上に、心の変化。
今までは仕事のためには、情けの心など持っていなかったのに。
仕事に向かう途中、道の真ん中で、老人がリヤカーからたくさんの段ボールや古紙の積み荷を落として、渋滞を招いて、罵声を浴びせられている現場に遭遇し、手助けをしてしまった。
おかげで、ターゲットを逃してしまう。
仕事で怪我をし、それなりの約束を交わしている診療所にいくと、かかりつけの訳知りのチャン医師でなく、カン医師にかかることになってしまう。

その後、カン医師の家族のことが気になりだし、市場で果物屋をしているカン医師の両親と娘のところへ行く。
店で、甘い桃を買ってしまい、冷蔵庫に入れてほおっておく。
息子のような年齢のカン医師が気になりだす。
殺し屋としての勘が少しずつ鈍っていき、引退を考え始める。
そこへ、爪角の命を狙う者が現れて、物語は複雑に展開していく。
冷蔵庫の桃は、完熟を通り越し、腐ってしまう。

65歳の殺し屋の女性の、心と体の変化がリアルに描かれている。
75歳の私にはよおくわかる。

買物しても、何しても、65歳のおばあさんには、
「おかあさん、これいかがですか。」なんて、みんな平気で声をかける。
そのたびに、
「私はあなたのおかあさんではありませんよ。」と答える爪角。
とんがってて、いいなあ。

みんな年を取る。
この作品の映画化の話が出ているが、爪角を演じるのは誰がいいか。
脳内キャストで当分楽しめそう。

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