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ぱんのふくろ・いいにおい。

「おはよう。」
長女が起きてくると、私から声をかけます。
まあ、起きてくるまでが、大騒ぎなんですが。
そこはおいておいて、今日も、元気に起きてきてくれて、ありがとう。

それからも、なんだらかんだら、時間はかかるけど、何とか明日の支度と、今日の支度を終えて、朝ごはん。
長女は、まず、明日着る服の用意をしてから、今日の持ち物の支度。
明日のことはあとでいいじゃないかと思いますが、明日着る服が決まらないと、長女は今日のことができないのです。
ストップしてフリーズしてしまいます。
だけど、明日の天気はどうなるかわからないよ。
明日の服を今日決めても、変更になることもあるよ。

長女は、私の決めた朝ごはんは食べてくれません。
昼ごはんや、夜ごはんは普通に食べるのに。
朝ごはんには、やたら注文を出すので、その都度、私は答えます。
「うちは、レストランでも、コンビニでもありません。あるものを食べてください。」
無茶ぶりの日もあるので、私は、なんでも工夫次第で作れるようになってきました。
それでも、カチンと来るときはありますが。

しかし、私はだんだん、魔法使いになってきたな。
何でもこなせるようになってきたな。
なんて思っていたら。
長女が、バターロールの入った袋を開けて、ニコニコしている。
「いいにおい。ぱんのいいにおい。」

そして、私にも嗅いでみてねというように、パンの袋を差し出してきた。
パンの袋の中からは、とても幸せな匂いがした。
「いいにおいだね。パンのいいにおい。」

長女は、いつもパンを食べてはいたが、匂いを嗅いで幸せな気持ちになるという至福の体験をしたのは、初めてなのではないだろうか。
これは、とても、すごいことなのではないだろうか。
心に余裕があったり、楽しむ心を持っていたり、幸せになる喜びを求めていたりする時に、感じることなのではないだろうか。
すごいね。
素敵だね。

偏食で、なかなか食べるということができなかった、あのやせっぽっちの長女が、パンの匂いを楽しむことができるようになったなんて。
これこそ、ほんとうに、ありがとう。

診察の時、ドクターに
「ごはんは普通に食べられていますか?」
と聞かれた長女は、えっ!というような顔をして、
「ぱんをたべました。」と答えてました。

毎月の診察では、生活の様子を、ドクターは長女に聞きます。
長女の方に、向いて話してくれるのが嬉しいです。


あんまりうれしいから、パンもダンスします。

妹の恋人


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