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二十日鼠と人間

長女が通学していた養護学校のPTAで、私は研修部の役員をしていました。
その養護学校は、肢体不自由と知的障害の両方の障害の学校でした。
ただし、肢体不自由は小、中、高等部までありましたが、知的障害は高等部だけ。
今は、知的障害も小、中、高等部まであり、学校名もとてもオシャレな学園の名前に変わっています。

PTAの会議に出たとき、会長が、
「そこのセーハクさん、何か意見ありますか?」と言って、私の方を見ていたのだけど、意味が分からず、無視していたら、
「あなたですよ。セーハクさん。」と執拗に言ってくるので、
「私のことですか?」と聞いたら、
「そうよ。セーハクさん。あなたセーハクの代表でしょう。」と言うので、ひっくり返りそうになったことがあります。
私はセーハクさんと呼ばれたことは初めてだったので、まさか自分のこととは思いもしませんでした。

会長は、精薄、つまり、精神薄弱のことを言っていたのでしょう。
昔は、知的障害のことを精神薄弱といっていました。
略して精薄。セーハクです。

精神が薄い。???いやあ、濃いでしょ。

研修部には、二人の自閉症の息子がいる委員さんがいました。
彼女も映画好きで、私たちはよく映画の話をしていていました。
「ギルバート・グレイブ」の話になったとき、彼女が聞いてきました。
「ねえ、あの兄弟は、キャンピングカーで旅に出たあと、どうなったと思う?」
そこで私は即座に答えてしまったのです。
「二十日鼠と人間。」
そうしたら、いつも明るい彼女がうつむいて黙ってしまいました。

ごめんなさい。




二十日鼠と人間
1992、アメリカ
ジョン・スタインベッグ原作
ゲーリー・シニーズ監督

二十日鼠と人間
1930年代の経済的大不況のころ、社会の底辺で働く移動労働者の話。
ジョージは、知りあいのおばさんに頼まれて、知的障害のある大男の、レニー・スモールの世話をしていた。
レニーが問題を起こしたため、新しい土地の農場に仕事を見つける。
レニーはふわふわなものが好き。でも力加減ができないので、小動物を押しつぶしてしまったりする。
農場主の妻が、ふわふわなものが好きだというレニーに自分の髪を触らせる。
そして悲劇が起こる。



もうこれ以上ない悲劇なのです。
自閉症男子の息子二人を抱えて生きている彼女には、「残酷な結末」の話です。
なんでこんなことを考えたかというと、今朝の新聞記事が引っ掛かっていたからです。
78歳の祖母が、9歳の自閉症の孫を殺人未遂。
両親が離婚したため、自閉症の孫を育てることになった祖母。
自閉症の知識もなく、わたしよりも高齢。

悲しいけど、これが現実。

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