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ありがとう

2階の私の部屋で、パソコンに向かっていたら、ぱたぱたと階段を上がる足音がして、
「まあまあ、これをたべて、ひといきいれて。」と
まあるい顔に満面の笑みを浮かべた長女が、ポカリスエット500mlの半分入ったボトル(半分は自分で飲んだのでしょう)と、チーズかまぼこ1本を差し出してきました。
そして、私に渡すと、さっさと階段を降りていきました。

なんだかごんぎつねを思い出しました。

あわただしい1週間でした。
長女の通う生活介護で、木曜、金曜、土曜と小さな文化祭がありました。
木曜日は、ハンドベル、手話、歌の発表があるというので、私は見に行こうと思っていました。
ところが長女は、真剣な顔をして、
「みにこないでね。」というのです。
それも、なんどもなんども。
「ぜったいに、みにこないでね。」
こんなに言うのだから、見に来てほしくない理由があるのだろうと思って、「見に行かないから安心してね。」
と言いました。

そういえば、最近、朝起きるのが遅くなっています。
それで聞いてみました。
「ハンドベル、難しいの?」
するとやっぱり、
「うまくできない。」ともごもご言います。
本人なりに悩んでいるのだな。と思って、発表は見に行かないで、土曜日に展示だけ見に行くことにしました。

園内は穏やかな雰囲気で、メンバーも数人ずつ、支援員さんと一緒に展示を見て回っています。
私も、元気すぎる習字や、きっちりしたオリリン織や、カレンダー、刺繍、日常生活の写真などを見て回りました。
さて、長女はどこにいるのかなと見渡したところ、テレビの前で、大好きな番組「スマーフ」はやっていないかと支援員さんに聞いていました。
本人は、「こびとのアニメ」と言います。

一通り見て、私は一足先に家に帰りました。
しばらくして、長女が
「ただいまあ。」と帰ってきました。
そして大きな声で言いました。

「きょうはきてくれて、ありがとう。」

和やかな雰囲気を作り出してくださる、職員の皆さんありがとう。
気分の変化がある長女をよく理解して、一日、楽しく過ごせる空間を作ってくださってありがとう。
連絡帳には、楽しそうにハンドベルや手話、歌などの発表に参加していたと書いてありました。
頑張ったんだね。

そして、「ありがとう」と、素直に言えるように育った長女に、
「ありがとう」


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