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イスラムに改宗しろ

≪中風の道はお絶ちくだされ≫

実家には茶箪笥のような仏壇があり、位牌とともに、大事なものがしまわれていた。だいぶ前から扉の裏に葬儀式次第と書かれた封筒が入っていた。父が自分と妻の葬儀について書いたものであろうとは思ったが、開けることができず、忘れていた。開封したのは遺品の整理をしていた時だった。「家族だけでやり贅沢はするな」ただそれだけだった。
別の紙切れも仏壇の奥にあった。
  この家は長く続きし家なれど中風の道はお絶ちくだされ   たつ
相続手続きのため取り寄せた戸籍謄本から「たつ」は父の祖母とわかった。江戸末期慶応2年の生まれとある。江戸時代の親戚と思うとわくわくした。
中風は半身不随等の脳卒中の後遺症を言うのであるが、我が家では中風が続いていたのであろう。仏壇に手を合わせ唱え祈る老婆を思った。
おかげで私の知る限り中風は出ていない。
祈る姿は美しいと思う。そこに何を見ているのだろうか。
トルコを旅行中は毎朝、大音量のコーランの放送で起こされた。バス車中で隣のおじさんに宗教を聞かれた。こういうときは「無宗教」と答えるとろくでもない人間と思われるので「仏教徒」と答えておいた。
現実には宗派もよくわからないまま葬儀をする、3回忌くらいまではやっておこうと思う、お布施は値切れないなと思う、困ったときには「神様、仏様、ご先祖様」とすがるが一番はご先祖様だと思っている、この程度であるが、このくらいがいいと思う。
「お天道さまが見ている」は「神様が見ている」より日本人を律してくれる。
トルコのバスのおじさんは、しきりに「イスラムに改宗しろ」と言ってきた。半分英語半分トルコ語だからわからないが、そういう熱意を感じた。このイスラムの熱意が理解できなければ世界で起こっていることも理解できなと感じた。


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