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 児童期のADHDと、その後のうつ病との因果関係について調べた論文があります。

Author Lucy Riglin, et al.,ADHD and depression: investigating a causal explanation.Journal Psychological medicine. 2020 Apr 06;1-8. doi: 10.1017/S0033291720000665.
方法は、8310人を対象を対象に小児期のADHD(7歳)と若年成人期(18~25歳)におけるうつ病との関連を評価。
結果、幼少期のADHDは、若年成人期にうつ病を再発するリスクの増加と関連していた(OR 1.35, 95% CI 1.05-1.73)。大うつ病に対するADHDの遺伝的因果関係が示唆された(OR 1.21, 95% CI 1.12-1.31)。一方、より広いうつ病の定義を用いた結果は異なり、うつ病への影響は弱いことが示された(OR 1.07、95%CI 1.02-1.13)。


結論
本研究は、ADHDが後年のうつ病のリスクを高めることを示唆しており、ADHDの遺伝的要因がその後の大うつ病に与える因果関係と一致していたが、より広義のうつ病については知見が異なっていた。

この結果からすぐにADHDは鬱病になると直結して考えないようにはしたいです。もちろん、ADHDの症状を持つゆえに生活上の困難を持ち合わせており、多様な課題を抱えている場合もあるでしょう。

また、大うつ病と広義のうつ病では結果が違うことも興味深く、うつ病自体の概念の複雑さも加味して判断しないといけません。大うつ病に診断が合致した場合を指摘しているので、いわゆる抑うつ状態ではこの研究は関係性が低いと指摘しているわけです。

つまり、大うつ病はより生物学的要因が強く、うつ状態は誰でもなるし、環境の要因などが大きいと言えるのではないでしょうか。生物学的な脆弱さが様々なメンタルヘルスの問題を引き起こすとしたら、その遺伝学的な治療介入ができる時代が来るのかもしれません。

こういった知見が増えていくことで、科学が、そして医学が進歩すると信じています。