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児童精神科医の気になる論文たち

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玉石金剛な医学論文の世界。児童精神科医を20年やってきて、気になる論文をチェックしていきたいと思います。読み込みが浅く、間違いがあればコメントで指摘してもらえると助かります。みん…
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#毎日note

COVID-19で影響を受けた子どものメンタルヘルスの問題

f日本には児童精神科が少ないとよく指摘されますが、いろんな活動をしているところがあるようです。研修会なども開催しており、世の中にもっと児童精神科医が増えると良いなと思います。医学生たちの研修を引き受けたりしているようですね。 コロナ関係の論文も出しているようです。この中に興味深いことが書いてありました。 摂食障害が世界中で急増しているとのことで、この病院でも感染拡大前より2倍越え。入院施設が限られているので、児童精神科病棟は数少ないので、この急増が感染拡大とは別のルートで

タッチスクリーンは幼児の集中力の発達に悪い??

Scientific Reportsにこんな論文がありました。 Portugal AM, et al. Sci Rep. 2021 Jan 26.  対象:2015年10月〜2016年3月にかけて、スクリーンタイムが異なる生後12カ月の乳児 追跡:2.5年 方法:生後12、18カ月時、および3.5歳時に、コンピューターを使った課題を行わせ、集中力を評価した。 課題:スクリーン上のさまざまな場所に現れた物体に、幼児がどれだけ速く注目するかと、どれだけ巧みにその物体を無

COVID-19と喘息の関係

新しい知見が日々出てきますね。喘息持ちのお子様がいる家庭はとても気になっていることではないでしょうか。こういったデータを解析できるのもビックデータやレジストリと呼ばれる成果なのだと思います。素晴らしいですね。 内容を見てみますと、査読前のオンラインアーカイブおよびWHOのCOVID-19データベースを含む2020年5月26日までに発表されたCOVID-19と喘息に関する研究をレビューし、58万7,280例を含む57件を特定した。SARS-CoV-2陽性者は34万9,592例

統合失調症の発病前の子どもたち

統合失調症の好発年齢よりも若い世代を見ている児童精神科医にとって、目の前の子どもが統合失調症を発病するのかはとても気になる話です。 日本から面白い論文が出ました。CBCLは児童精神科の外来でもよく使う評価スケールですね。「ひきこもり」、「思考問題」、「攻撃的行動の欠如」がその予測因子として挙げられていますね。6−8歳の評価ですが、9−12歳、13−15歳ぐらいの評価もどうなっているのでしょうか、気になるところです。 ただ、臨床の現場では想像外の子どもが突如統合失調症を発病

日本でCOVID-19の在宅期間が神経発達障害児とその保護者のQOL(生活の質)にどのような影響を与えているか

貴重な論文が一つ出ました。日本の子どもの発達障害のQOLと親との関係性をCOVID-19の期間で検討した論文でです。今まで海外の論文ばかりで日本の子どもの話がほとんどありませんでした。やっと日本の子どものデータを扱う時代に突入してきたと言えるでしょう。時折、ネット・ニュースなどで出てくる情報は、対象があまりに不特定で研究とは言い難い情報でしたので、より科学性の高い結果が今後もっと出てくるでしょう。 こういった想定できる結果をちゃんと出してくれることが大事です。憶測や個人の感

児童精神科で検索してみると

児童精神科という名前は聞き慣れないと思います。街を歩いてみても、そんな看板見たことがないという人が多いと思います。 そこで、前にも出てきた医学中央雑誌という検索システムで論文を調べてみました。新しいものから30本並べてみました。題名を見ていると面白いですね。 連載している先生がいたり、ハンドブックがあったりと私たちが知らないところでいろんな人たちがさまざまな文章を書いているのですね。医学生たちにもこういった情報が届くようになれば、もっと目指してくれる人が増えるのではないか

感染しにくいが、感染させやすい?

毎日、新型コロナウイルス感染症に関するニュースが流れてきて、なんだか明るい話題が欲しいなと思う日々です。まだまだだとは思いますが、早く終息してもらいたいものです。ところで、新たな調査について触れておきます。 この研究は、2019年12月2日~2020年4月18日に検査もしくは臨床的に確認されたCOVID-19症例と、検査で確認された無症状の感染者の家庭内感染について、後ろ向きに調査したコホート研究。 FangLiMSら、Household transmission of

将来に備えて・・・

以下の日本語論文、色々と考えてしまいますね。当てはまるのが・・・パソコンとカメラぐらいですね。でも、カメラも最近触っていないな・・ 最近はLate-Onset ADHD が一時期流行りましたが、その鑑別に認知症も入っていました。高齢者でADHDを疑って、診断され、安易に抗ADHD薬が投与されるなんてことは避けなくてはなりません。ただ、高齢者たちが若い頃にはADHDなんて概念はなく、その診断がつくことなく大人になってきた問題もあるでしょう。 そういった観点からも、ADHD診

自閉症の男性側の要因

これはなかなか強烈な論文ですね。父親のファクターはこれまでも年齢などが言われてきましたが、ここまで生物学的なファクターがはっきりしてくるとさまざまな思惑が生じてくるような気がします。こうった科学的な成果を、通常の臨床や生活に落とし込んでいくことは難しいですね。 もちろん、この論文でも臨床化は遠いと触れていますが、こういった情報だけが一人歩きしないように気をつけないといけませんね。現在の情報社会では、人は都合の良い情報だけを聞き入れていく傾向が強いと思います。 内容は以下の

COVID-19と子どものこころ 続き

昨日の続きです。さらに、COVID-19と子どものこころに関する論文を医中誌Webで調べてみます。 ウィキペディア(Wikipedia)https://ja.wikipedia.org/wiki/医中誌Webによれば、医中誌Webとは、日本国内の医学関連分野の文献情報を収集した有料のオンラインデータベースである。日本で発行される医学、歯学、薬学、看護学、獣医学分野の学術誌に掲載された原著論文や会議録等を収載対象とし、2017年9月現在1,100万件以上の文献情報の検索と閲覧

気になる論文:コロナはいつ感染するの?

連続して新型コロナウイルス感染症関連の論文の紹介で恐縮です。情報を自分の中で整理していきたいです。今回は新型コロナウイルス感染症がいつ感染するのかです。家庭内感染とシリーズみたいなものですね。 Ng, O. T., Marimuthu, K., Koh, V., Pang, J., Linn, K. Z., Sun, J., De Wang, L., Chia, W. N., Tiu, C., Chan, M., Ling, L. M., Vasoo, S., Abdad,

気になる論文:家庭内感染はいつどうやってするの?

新型コロナウイルス感染症に関する情報の海連日、新型コロナウイルス感染症関係のことばかりで恐縮です。あまりの情報の多さに自分の中でも色々とまとめていかないと、その情報の海に溺れてしまいそうです。 家庭内感染のリスク因子 さて、感染爆発が怒っている日本ですが、COVID-19の家庭内感染のリスク因子についてのメタ解析が出てきました。 Madewell, Z. J., Yang, Y., Longini, I. M., Halloran, M. E., & Dean, N. E

COVID-19で大人は重症化、子どもは軽症化の理由は?

成人よりも小児の方がCOVID-19の重症化する可能性が低いとよく言われていることですが、その理由について免疫が活発、血管のきれいなことを指摘した論文があります。 第3波が襲いかかり、誰でもCOVID-19にかかる可能性があると言える時代になりました。本当にすぐそこまで忍び寄ってきていると思うのが妥当だと日々感じております。 Zimmermann, P. & Curtis, N. Why is COVID-19 less severe in children? A rev

児童精神科医の気になる論文:SNSはメンタルに有害?

思春期におけるSNSの利用は至る所で議論になります。私たちが子どもの頃はSNSがなかったので、どうしても否定的に感じてしまいますが、それでは科学的な判断になりません。そこで以下の論文を見てみましょう。 Mundyら、Social networking and symptoms of depression and anxiety in early adolescence:Depression and Anxiety. 2020;1–8.  概要は以下の通りです。メルボルン大