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児童精神科医の気になる論文たち

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玉石金剛な医学論文の世界。児童精神科医を20年やってきて、気になる論文をチェックしていきたいと思います。読み込みが浅く、間違いがあればコメントで指摘してもらえると助かります。みん… もっと読む
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記事一覧

NEJM オリンピック参加者をCOVID-19から守るために - リスクマネジメントのアプローチが急務

NEJMがIOC の対応をけちょんけちょんに指摘しています。政治家もエビデンスとかすぐにいうけど、エビデンスにもレベルがあるし、その使い方を間違えていたら意味がない。 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp2108567 例えば、 公衆衛生の重視については、NEJMは「選手会、競技団体、専門家を含むCovid-19諮問委員会を設置し、発生時に迅速に対応できるプランBを用意する。」と指摘していますが、IOCは「選手会の関与な

ワクチンは無症状の人たちにも必要

Lancetの論文です。 ファイザー製のワクチンが症状の有無にかかわらず、その感染を予防できることがわかってきました。  この研究は英国の公立病院で働くスタッフ(18歳以上)を対象とした前向きコホート研究です。さらに特筆すべきは、英国の変異株流行時にワクチン接種されており、この変異株に対しても有効性を示していたことでしょう。 毎日外来ばかりしていますが、肌感覚では変異株の登場で、新型コロナウイルス感染症の新型という印象を受けています。子どもたちへの広がりがすごい印象です

ゲームが大好き

ゲームへの没頭はASD性よりもADHD性の方が優位と言われることが多いです。報酬系回路との関係性が高いのでしょう。 以下の論文はそんなことを示唆している論文です。 ・ADHDでは、ゲームに関してより依存性が高く、長時間プレイしていた。 ・ADHD症状の重症度とビデオゲームの使用に相関が認められた。 ・重度のADHD児は、依存性スコアが有意に高く、その性別とADHDとの組み合わせがビデオゲームの過度な使用に影響していた。 すなわち、ADHD症状とゲーム依存への関係性が改め

ファイザー製ワクチンは2回打つ必要があるのか

Eric J Haas, et al. Impact and effectiveness of mRNA BNT162b2 vaccine against SARS-CoV-2 infections and COVID-19 cases, hospitalisations, and deaths following a nationwide vaccination campaign in Israel: an observational study using nationa

COVID-19の感染リスク

こういう生活の基本に注目した論文は面白いし、臨床的にも有用であると思っています。 https://thorax.bmj.com/content/early/2021/03/30/thoraxjnl-2020-216651 この論文は、英国のバイオバンクに2006年から2010年に登録された50万2,540例(登録時40~69歳)のデータを用いて、交代勤務がCOVID-19に及ぼす影響を検討した。検討の結果、検査を受けた6,442例のうち498例が陽性だった。陽性者のうち9

変異株の猛威に

英国で南アフリカで確認された変異株と南アフリカで確認された変異株がカタールで優勢の状況の中で、ファイザー製ワクチンは感染および重症化に対して有効であったとまとめている。ただし、とくに南アフリカで確認された変異株に対する有効率は同ワクチンの臨床試験やイスラエル・米国からの実社会での報告よりも約20%低かったという。 https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMc2104974 これから考えるに、やはりワクチン接種は進めていくべきでしょう。しかし

ジスキネジア新治療法の発見

これは面白い研究であり、今ある薬剤を使ったとても臨床的な研究かと思います。 https://research-er.jp/articles/view/98491 長期に抗精神病薬を飲んでジスキネジアに悩まれている方はたくさんいるのではないでしょか。その副作用と薬剤の継続に悩まれている臨床医もいるでしょう。 この知見が臨床の現場に光を差しえてくれればと思うところです。 こういったビックデータの使い方は素晴らしいと思います。みんなの力を合わせてビックデータを使っっていけば

子どもの医療への影響

コロナは様々な分野、年代、環境、状況に影響を与えています。医療業界では小児科領域には多大な影響を与えていると言えるでしょう。 児童精神科も子どもを相手にした仕事です。その影響を受けると言えます。 様々なニュースがある中で、新型コロナウイルス感染症対策の中枢と言える国立国際医療研究センターからの報告があります。 やはり児童精神科の外来受診者数は減少しているようです。その一方で摂食障害が急増していると書かれています。結果として医療経済的にも厳しい現状となっているようです。

ADHDと血圧

ADHDと血圧に関する珍しい論文を見つけました。ADHDは児童思春期において最も多く認める精神疾患です。 一方で、ADHDの基本的な病態生理はわかっていない点も多い一方で、子どもはさまざまな身体的な変化によっても、落ち着きを失うことがあります。 体と心が繋がっていることは間違い無いでしょうし、CBTでもそのような理論で展開されています。ADHDのように行動上の特徴で規定された疾患は、その影響を直接的に受けることになるでしょう。 今回の論文は、ドイツの健康調査(KiGGS

歩く速さとCOVID-19の重症化が関連?

COVID関連の情報が次々とアップデートされていきます。おそらく多くの科学者が新たなデータを出すことで論文の業績を大幅に増やすチャンスと考えているのでしょう。  イギリスから、歩く速さとCOVID-19の重症化リスクに関連があるとする論文が出てきました。 中高年者対象の大規模前向きコホート研究 2020年3月16日~8月24日 登録データ41万2,596人 (年齢中央値68歳、普通体重33.7%、過体重42.9%、肥満23.9%)。 2020年8月24日までに、重症

AZ製ワクチン、英国型変異株に有効率70.4%

ファイザー製のワクチンが最高みたいな風潮になっていますが、AZ製の効果はどうなんでしょうか? この論文では・・新型コロナワクチンについて、COVID-19の変異株に対する臨床的有効率は70.4%で有効であることが示された。 この研究は18歳以上のボランティア(8,534例)を登録して行われ、被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはCOVID-19ワクチンが、もう一方の対照群には髄膜炎菌結合型ワクチンが投与され、上気道スワブ検査を毎週実施、または咳や37.8度以上の発熱

再感染も気になるところです。

Lancetが続けて有意義なCOVID-19に関する論文を出してくれています。COVID-19からの回復者に再感染の保護効果があるのかについては大きな問いでした。 そのうちの一つが以下です。 Victoria Jane Hall, FFPH *,Sarah Foulkes, MSc *,Andre Charlett, PhD,Ana Atti, MSc,Edward J M Monk, MSc,Ruth Simmons, PhD,et al. SARS-CoV-2 inf

神経刺激薬のことですね。

治療用覚醒剤って響きがすごいですが、抗ADHD薬の神経刺激薬として私たちが使っているコンサータやビバンセもこれに属するものでしょう。おそらく、アデロールに関してのコメントなのでしょうが、治療場必要なものであれば許可する必要があると思います。 私たちも診療をしているとスポーツがみるみる上達して大会に出るようになる子がたまにいますが、その際に抗ADHD薬をどう使うかの議論になることがあります。 やはり、抗ADHD薬の効果として集中力は上がります。どんなスポーツでも集中力はあっ

この論文を誤解すると

この論文を誤解すると、SNSやゲームなど子どものインターネットが毒で、過食症になるという恐怖を撒き散らすようなニュースになりそうです。 ここではスクリーンタイムの話とK SADSの結果の関連を言っているだけです。構造化面接の結果=診断ではありません。そこを間違えてはいけません。 私たちも研究の一環で構造化面接をしますが、はるかに臨床域よりも高く陽性を出します。それはスクリーニングという観点からは正しい結果と言えます。それをすぐに診断と直結するような誤解をしないように気をつ