立ち枯れの魔女

ごうごうと風がとどろき、風で飛ばされた小石と砂とが、倒れて動かない者たちの上に少しずつ降り積もっていった。

「マロウン、さっさとしろ!てめえのためにこいつらを……!俺が、この手で!」

強風と出血とで立つこともできないクジェンは、仲間と自分の血にまみれた手で、必死に岩にしがみついていた。

マロウンは、この宇宙万物の中で、そしてこの時間軸の中で最も重要となった、ちっぽけな薄汚れた祭壇にうずくまって祈っていた。
後戻りもできない。しかし先にすすめる勇気も無い。もはや祈りはただの泣き言になっていた。

神々よ、なぜ私がこのような責任を追わねばならぬのですか。
だがもはや応える神はいない。軍神も、星の女神も、月の女王も、最高神も、大邪神さえも死んだ。我々の導き手であり師でもあった、アイアナの神も無様に死んだ。歴史上のいかな預言者も、そして神々も、誰もこんなことになるとは思っていなかった。

ただ少し、少し手を動かすだけでやるべきことは終わる。しかしこれで何が解決するというのだ?
こんなことで我々の失敗が修復されることは決して無い。問題の先送りなどという、甘い言葉では終わるまい。

おお、遥か未来の我々の子孫らよ。我らの失策のつけを払うことになっても、この世に生まれたいと言ってくれるだろうか。
それとも、今この場所で全てを終わらせておくべきだったと言うだろうか。



千年の間隙



「こうしてジェン王は神様達の助けを借りながら、仲間と一緒に大邪神を暗闇へ閉じ込めました。大邪神は昼間の世界から追い出されましたが、夜の暗闇のそのまた陰のなかでは、今でもその手足である怪物たちが口を開けて待っているのです」

この話を初めて聞いた子どもたちは、大抵泣きそうな顔をする。そしていつも慌てて付け足すことになる。

「大丈夫。『マローン博士、守ってください』と心のなかで唱え続ければ、怪物たちは逃げてしまうんだよ」

【後略】

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