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第1回 #邦キチー1グランプリ 参加作品「マッハ’78」

邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さんSeasonX Z本目「マッハ’78」


 

ひとりぼっちの部室で自動車雑誌を読む「映画について語る若人の会」の部長、小谷洋一。

洋一:「最近の車は高いけど、運転免許を取って、レンタカー借りて海にでもドライブしてみたいものだな」

頭にサングラス、上着はアロハシャツの姿で小型オープンカーを運転する洋一。横には薄着の邦キチ(映画『クラッシャージョウ』のラストかな?)……の妄想

洋一:「な、なんで邦キチが横に!」

頬を赤らめる洋一。(もうそろそろ観念しろ!)

そこに制服姿の邦キチこと邦吉映子と、ヤンヤンこと東 洋洋が部室の戸を開けて入って来る。

邦キチ:「部長その本、車に興味などありまするか?」

洋一:「まあな、もう俺も運転免許を取るような歳だからな。進学してからにはなるが、アルバイトとかで使うかもしれないし」

ヤンヤン:「そう言ってコイツ、エーコとのドライブデートとか考えてたに決まってるアル!私もアッシーとして使ってやるから早く運転免許取るアル!」

ギクッとなる洋一(アッシーは死語)。洋一の前に座る二人。

邦キチ:「部長は運転には自信があるのですか?

洋一:「ああ、結構あるぞ!(格ゲーがメインだがレースゲームも少しはしているし。パッドで操作なら一応)」

ヤンヤン:「どうせ洋一の運転はゲームの世界の話アル!」

頬杖をつきなかせらジト目で洋一を見るヤンヤン。

洋一:「いや、今のゲームはリアルでゲームから実際のレースで活躍するドライバーもいるから!(そういえばそのゲームの映画もそろそろ…)」

オロオロしながらも今のゲームのリアルさを身振り手振りで説明する洋一。

邦キチ:「では部長はフィギュア8も、キャノンロールも出来るのですか?

まるで凄い人を見るようなキラキラした目で洋一を見る邦キチ!

洋一:「なんだそのフィギュア8とキャノンロールって。人生で一度も聞いたコトがない単語だぞ!

邦吉:「ええっ!部長は車の本を読んでるのに『マッハ’78』は見てないのでありまするか?

ヤンヤン:「『マッハ!』といえばタイの映画アルな、トニー・ジャーの高速アクションが」

洋一:「それは格闘映画だろ、外国映画だし。ウォシャウスキー兄弟の監督で『スピード・レーサー』としてリメイクされた昔のアニメ『マッハGoGoGo!』ってヤツ関係だな」

ヤンヤンを制してドヤ顔する洋一。

邦キチ:「いいえ!『マッハ’78』は1978年に公開された日本とアメリカのカースタント対決映画!フィギュア8とキャノンロールは、そこに出て来たカースタントです!!

なぜかレーシングスーツ姿になって語る邦キチ。

洋一:「日本とアメリカのカースタント対決だと、ちょっと興味はあるな」

ヤンヤン:「でも、1978年とか古くないアルか?ちゃんとした車は出るアルか?」

邦キチ:「お二人とも、1970年代後半に何があったか覚えてないのですか?」

洋一・ヤンヤン:「いやいや、生まれてもいねぇよ(アルよ)

顔の前で手を振る洋一とヤンヤン。

邦キチ:「1975年には菅原文太さんの『トラック野郎』シリーズがスタート、そして1977年には実写版『サーキットの狼』、世はスーパーカーブームの真っただ中だったのです!」

B〇XYのボールペンの後ろのバネでスーパーカー消しゴムを飛ばす邦キチ。

洋一:「そういえば親父が幼児だった時、デパートの屋上で爺さんに抱かれてスーパーカーの前で撮った写真があったな」

祖父に抱かれた父親がスーパーカーの前で泣きわめく写真を思い出す洋一。

邦キチ:「ちなみに石原裕次郎さんの『栄光への5000キロ』とかマンガもヒットした『SS』、最近では『OVER DRIVE』『僕と彼女とラリーと』など日本ではラリー競技の映画が多いですし、『湾岸ミッドナイト THE MOVIE』『首都高トライアル』なんて高速道路ものも。アカデミー賞候国際長編映画賞にもなった『ドライブ・マイ・カー』もありますし、自動車映画は邦画の大切な一ジャンルなのです!」

※    長い

洋一:「『ワイルドスピード』のシリーズに東京でドリフトする映画はあったような」

邦キチ:「『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』ですね、北川景子さん、妻夫木聡さん、千葉真一さんも出ている、そして釣り人として出ていたドリフトキングこと土屋圭市さんは最近のドリフト競技映画『アライブフーン』の監修も」

洋一:「やっぱり日本と関係ある洋画だけは見ているんだな、コイツ」

邦キチをジト目で見る洋一。

洋一:「まあいい、それで『マッハ'78』とはどんな映画なんだ?

邦キチ:「アメリカ人と日本人のハーフの主人公、大友千秋さんがふとしたコトからアメリカでカースタントに出会い、日本のカースタントチームのクロスレーシングと共にLAに再上陸、恋人が出来たりしつつ、アメリカ代表と5点満点の点数制カースタント対決をして合計点を競うのでありまする!

洋一:「有名な人は出ているのか?」

邦キチ:「はい、大友千秋さんは後にドラマ『西部警察』のカースタントを5年間クロスレーシングのキャップ、黒子(くろす) 昭さんは……

邦キチの説明に目をギラギラさせたヤンヤンが功夫なポーズで割って入る。

ヤンヤン:「まて、黒子 昭といえばジャッキー・チェンとサモ・ハン・キンポーの『香港発活劇エクスプレス 大福星』のカースタントの人アルな?

邦キチ:「そうでありまする!さすがヤンヤンさん!」

洋一:「するとなにか、この映画は俳優じゃなくカースタントの人が実名で主演する映画なのか?」

邦キチ:「はい、この映画は今どきで言うモキュメンタリーな映画なのでありまする!」

洋一:「ドキュメンタリーのようでフィクションなアレか?」

邦キチ:「はい、でもカースタント自体は本物ですから。恋愛ドラマもあるからモキュメンタリーと」

ヤンヤン:「でもカースタントの人で演技は大丈夫アルか?」

邦キチ:「この映画で演技する人は大友さんと黒子さん以外はヒロインのリンダさんはじめほぼアメリカの役者さんですし、セリフはなぜかだいたいアフレコになっておりますから。あと、ハーフでモデルもしていた大友さんはいかにもアメリカ人な風貌なのですが英語がまったく出来ない設定でありまする

ヤンヤン:「恋愛ドラマがあるのに言葉が通じないアルか?

邦キチ:「ハイ、亡くなった姉に似ているヒロインの公式記録係、金髪薄着のリンダさんと視線を合わせられない大友さんの話が続きますし、ほとんど最後まで会話は成立していません

洋一:「それで恋愛ドラマになるのか?」

邦吉:「リンダさんは最初から大友さん大好きヒロインですし、大友さんは心境を全部ナレーションで説明しますから!ちゃんとチューのシーンもあります

洋一:「チューもか!で、カースタントのほうは?」

鼻の下を伸ばす洋一。

邦キチ:「カースタントのシーンでは大友さんのナレーション以外は現場の生々しい音になりますので、準備やクラッシュ、脱出シーンとかは想像よりもリアルに感じるのでありまする!

洋一:「それは狙ってやっている演出なのかな?それで対決はどうなんだ?」

邦キチ:「それはしっかりと凄い、CGなんかない時代の命を懸けたカースタントばかりでありまする。車8台でスタントして色々交錯して走るフィギュア8、解体屋ゲンみたいに車に爆弾を仕掛けて横に転がるキャノンロール、大ジャンプのロングディスタンス。そしてそのスタントはリピートされて、スローでもじっくりと観られるので対決も安心!なにせこの映画、製作は対決のスペシャリストであられる梶原一騎先生なのです!

洋一・ヤンヤン:「梶原一騎先生?!

立ち上がって驚愕する洋一とヤンヤン。

邦キチ:「はい、『巨人の星』『地上最強のカラテ』などの実写映画を製作した梶原一騎先生でありまする。Season3の7本目で話が出た『あしたのジョー』1970年版を製作したのも同様に梶原一騎先生の映画会社でありまする。

洋一:「なんと、マンガ原作者が映画の製作もする時代だったのか?!(こ、このマンガはどうなるんだ?)」

少しして、ようやく落ち着いて座る洋一とヤンヤン

邦キチ:「そうです、梶原一騎先生は映画界にも友人が多かったようなので。ですから脚本は別の人ですが、この映画も日本とアメリカのチームは仲良くなりつつも、高得点を狙うためにカースタントはロングディスタンスの強化版のロングダイブが登場したり、キャノンロールは5回転に回転が増え、スタントマンが火達磨になるファイヤー・ウォール・クラッシュなども出て、どんどん危険にアップグレードしていくのです!

洋一:「変化球とか魔球が進化するスポ根マンガみたいだな!

ヤンヤン:「回転を増やすとか点数とかフィギュアとか、最近大ヒット中のあのスポーツマンガみたいアル!

小〇館漫画賞を獲った前髪がエビでスケートを履いた女の子の絵(目線入り)。梶原スポ根マンガの系譜は今も続いてヒットしているのである。

邦キチ:「そんな中、主人公の大友さんとリンダさんはクラシックカーレースへデートに行きます」

ヤンヤン:「デートか。ホントに言葉が通じなくて本当に大丈夫アルか?

邦キチ:「大丈夫です、そもそもこのクラシックカーレースでのデートとか、途中にあるスーパーカー紹介とパレード走行のシーンには二人とも出て来ません!レースの様子とか車はしっかり出てきますが

ヤンヤン:「デートに行ったのに主役の二人が出てこないアルか?!

洋一:「それはB級映画でよくある資料映像の使いまわしってヤツか?」

邦キチ:「いえ、多分ちゃんと車を写すロケはしてると思います。が、なにせこの映画は後にドラマ部分を省いて『ザ・スタント 激突!カースタント日米決戦!』という名前でドキュメンタリーとしてDVDも発売されていますから、少しくらい二人がいなくても大丈夫なのでありまする!

洋一・ヤンヤン:「それは色々とあんまり大丈夫じゃない気がするぞ(アル)

邦キチ:「そして、ラストは白いポルシェ930ターボで海へのジャンピング世界記録を狙うのでありまする!

日の丸をまるで八つ墓村のように両窓に刺してジャンプする白いポルシェ。

洋一:「ドラマはアレだが、ついに主人公の活躍か!

邦キチ:「いいえ、飛ぶのはキャップの黒子さんでありまする。主人公の大友さんはチョロチョロと写りますが、ここでもナレーションが一番の仕事なのです」

洋一:「飛んじゃわないのか、大友さん

邦キチ:「でも、ちゃんと大友さんはTボーンクラッシュという危ないカースタントをはじめ、色々とちゃんと作内で活躍しているのでありまする」

洋一:「飛んじゃわないのか

なぜかガックリと肩を落とす洋一。見つめる邦キチとヤンヤン。
それは同じ不遇な主人公としての姿なのか……でも大友さんは二枚目だし、ナレーションは全編いい声で聞きやすい素晴らしい仕事なんだぞ!


~ おわり ~

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