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さらば「ホレンテ島の魔法使い」。心の鍵を攫って消えていく儚い傑作。

・はじめに


2022年3月25日「ホレンテ島の魔法使い」2巻が発売された。連載で読んでいたので完結は知っていたし、その綺麗な結末も味わっていたが、それでも涙がでる。応援の記事を書いてさほど経っていないのだから。


きららMAXという紙面での連載ではなにかが足りなかったかも知れない。だが、極めて奇抜かつ高度な設定をしっかり魅せていたそれは、まだまだ続くべきマンガだったと思う。

・「宵句」という魔法システム



魔法使いを探す魔法少女のマンガである。魔法少女たちはついに主人公にその秘密を明かし、魔法の成り立ちと最初に出会った空飛ぶ魔法使いを探す。

※ 秘密を明かすシーンはとても心地よいギャグであり、ありがちだが積み上げたキャラ設定で何度読んでも腹が痛い。

既に魔法使いの秘密に感づいている読者に、どう魔法使いとの邂逅を見せるのかそれが2巻の最大の魅力だが、その前に魔法システムの謎解きがある。

まだ断片と呼ぶ「魔法の種のようなもの」しか手にしていない魔法少女が魔法を作る、構築したそのプロセスを見せつつ、さらにその組み合せで「宵句」と呼ぶ危険なショートカット……。

前回記事でも書いた、各キャラに高い音楽IQを持たせたコトを上手く使って魔法の成り立ちと、「島」での魔法、広がる魔法、消える魔法を描く。かつ「宵句」という言霊でうまく西洋魔法に和を入れて、現代日本と西洋魔法を繋ぐ素晴らしさ。

温泉回らしくない温泉回での和装での湯もみシーン(なぜかオッサンにはドリフターズの影も見える)。全ヒロインによる爆笑の姿の時に実はヒロインが……なあたりもこのマンガらしいと思う。


・魔法少女東京に現る


2巻のハイライトのひとつはメインヒロインふたり、あむとこっこの東京めぐり。ホレンテ島という東京から案外近いテーマパーク島に住んでいたのに東京に縁のなかったこっこをあむが連れ出す話。

商業的魔法と伝統の魔法に浸かった少女が東京という都会の魔法を体感するこの回は後の展開のフックでもあるが、ありがちな話といえばそうなのに心に残る。読者への魔法の不思議。


・魔法少女と魔法使いの邂逅、そして戦う


ついに魔法使いの出没ポイントをつかみ、魔法使いと邂逅する魔法少女たち。でもなぜか魔法使い×魔法少女の戦いに、そして……いや、なんだこのマジンガーZ対〇〇的な展開!

大ゴマの魔法使い出現シーンは強烈な和洋折衷で腹イタイのだけど、でも超真剣な雨の中の邂逅。そしてバトル。

魔法少女たちは魔法使いを捕まえられるのか?そして魔法少女の出現理由と果たそうとする目的とは。スリル・スピード・ミュージカル!


・おわりに


そしてそれは終わるのだ。なんで終わる?まだ謎があるでしょ、いや分かるっちゃ分かるけど。でも、この特異で素敵な魔法のお話はもっと続くべきだった。音付きで画面でミュージカルを観たかった。

もの凄く綺麗な終わりである。それは初回に既に約束されていたもので、その理想形であったから、受け入れるしかない。だが、心の鍵を持っていかれたまま終られるのはつらいなぁ。

※ 初回に素晴らしい終わりを約束してあって、それをきっちり果たしたのはアニメ「放課後のプレアデス」以来かなぁ。あれにも心の鍵を持っていかれたままだ。

魔法のテーマパークで日本の日常、その境界線の空で終わる物語。ホレンテ島の魔法はまだ消えていない。またどこかでまたこの島のエピソードが語られるコトを期待したい。

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