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青春

オレは学校からの帰り道、いつものようにいつもの仲間と駅までの長い道のりを歩いていた。千葉県の新設4年目の県立高校だと将来の夢なんて思い描ける筈もなく、体が大きければまだ隣の高校の不良どもをぶん殴って憂さ晴らしも出来ただろうが、オレみたいに体が小さく、ケンカが得意ではないヤツはただ不貞腐れてダラダラと帰りの列に追いていく位しか出来る事は無かった。

「死にて―。」ダチの木村相手にそんなことを言いながら毎日、畑の間にある単線のローカル線の駅までダラダラと歩いていた。勿論本心ではない。死ぬのは怖い。でも、このまま生きていて何があるのか? 勉強も、運動も、ケンカもダメで背も低く、とりわけ何かが出来る訳でもないオレにとって、「将来」とはただどす黒く渦巻く絶望の世界でしかなかった。自殺とかは怖いしカッコ悪いので、そうだな、突っ込んできたコルベットに轢かれて死にてー、なんて思っていた。今考えるとそれも超ダゼー死に方だけど。 でも、カッコいい奴、例えばロックンローラーとかヤンキーの先輩とかジェームスディーンとかは皆若くして死んでいた。若くして死ぬことはカッコいいのだ。

あれから42年も月日が経っている。
何故か生きている。
もうカッコよく、若くして死ぬことは出来ない。

学校からの帰り道、オレと同じように歳くったアイツらは今頃、どうしているのだろう? 生きているのか? もう死んじまったか? そんな事はこの歳まで生きれば大した問題ではない。 どす黒く渦巻く絶望の世界は結局無くて、それなりに楽しい42年だったよ。

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