とあるオフィスの電子書籍 #4

今日は久々の出社。わりと通常どおりの業務内容。
アプリで並べる本を入れ替えたり、新しくリリースされたプロダクトや施策の効果測定をしたり、頼まれた数字を拾ったり。あと、火曜で会議がちょっと多かった。

電子書店員としてのぼくの1日は、アプリで配信している無料コンテンツのPV集計からはじまる。
話・冊などの配信タイプごとに、どの作品がどのくらい読まれたのかを集計して、社員に共有する。

一見なんでもない業務だが、ここには「電子書籍らしさ」がつまっているように思う。

ひとつ例をあげると、どんな本がユーザーに受け入れられているのかが、数字で瞬時にわかる、という特徴がある。
無料コンテンツは様々な過程をへてはじめて配信までこぎつけるのだが、
世に送り出した翌日には、かんたんな操作で閲覧状況をモニターできる。

これは出版社の編集者の方にきいて初めて気づいたんだけど、
出荷して即座に実績がはかれるというのはうらやましいことのようだ。
1社目でこれが当たり前になっているぼくだが、すぐユーザーへの受け入れられ方をチェックできるというのはとても性に合ってる。

ところで、紙の書店を経験せずに電子書店で勤めると、抜け落ちてしまう経験もあるようだ。
それ自体は容易に想像つくことだが、「いわれてみれば」と思ったのは、
電子データではないフィジカルな商品の「仕入れ」をぼくたちはやらないということ。

最近読んだ本によれば、類書の過去の売上や売り場のスペース、客の動向などの情報から、入荷冊数をきめて出版社や取次会社に発注しなければならない。きっと、それには豊富な経験や、電子とはまたちがう勘のよさが求められる。

複製データを配信する電子書店はというと、気にするべきは配信する作品の訴求方法であり、仕入れ冊数は気にする必要が基本的にない。

そういった意味で、電子書店は在庫や商品管理にあまり左右されない、ともすると無味乾燥気味にとられる仕事だといえる。

それを豊かな商売にするために、各人が自分の持ち味を生かして仕事するのが理想的なのかな、と最近かんがえている。

 *

ぼくはというと、電子書店なりのやり方で、

「お客さんの顔」を可能な限り、意地でも見たい!

という願望がある(/ω\)

やはりここではくわしく書けないが、いろんな情報を見たうえで、

「どんな人が、どんな生活のなかで、どんな本を買い、どんな体験をしたのか」

というところを可視化して販促するところに注力することにしている。
くわえて、アプリの各コーナーのもろもろの効果測定を引き受けている。

電子書店の持ち味であり、やりがいにもなるのは、多様なデータをもとにユーザーに豊かな読書体験を提供することをめざす営みにあるんじゃないかなーと感じる。配属半年後の新人の感想です。
(当たり前だけど、言うことが社員と似通ってくるなあ)

「そんな夢のある仕事は本当にできてるのか?」
という問いはさておき、そのプロセス自体や、それを模索すること、結果がちょっと出たときというのは、なかなかやりがいがあると思う。

「ぼく、1月から3月まではアプリコンサルやりまーす」
と師匠=上長に言ってみたらあっさり任せてもらえたので、当社と利用者の経験のストックを整理していく役をしっかり果たしたい。まぁわりとマイペースにやってるんですけどね。

 *

さっき「結果をすぐ見られる」といったけど、それに勝るくらい、過去の実績を集計、分析して整理するというのはとても楽しい。
そこはユーザーの顔が見えない分、想像の余地が残っているのもプラスに働いているのかもしれないな、とこれを書きながら思った。

で、そんなこんなで、じつは今期は「自分でまんがを読む」ことの比重をさげている。
自分のリソースの有限さをいやというほど最初の半年で感じたため、まんがの知識は「プロの書店員」の長年の蓄積を利用させてもらう側に回ろう、と判断したのだ。

けっきょく仕事というのは「やれることをこつこつ」というところに落ち着くんだなーという感想。
こんな当たり前のことを自分がためらいなく書けるようになったのは働き始めてからで、ちょっとびっくりしてるけど、そういう人生は全然悪くないなとも思うようになった。

まあ漫画熱はどうせまた再燃するだろうし。力を抜いてもいいでしょう。

「先輩社員を利用」などとサラっと書いて思い出したが、
今日、尊敬してる好きな社員さんに

「見ているところがちがうなーと思う」

と、(たぶん)肯定的に言ってもらえたのはなんだかうれしかった。

ただ、嗜好がユーザーとズレるあまり、ピックアップした漫画が読んでもらえないこともしばしばあり、そこは本当にどうにかしたい。

「究極、編成の人間は漫画だけ読んでいるのがいい」

ということを一貫していってる部長のことは、本当にいいなと思ってる。実際そうなってはいないわけだけれど。漫画読むだけの仕事してみたい。

ぼくと同じくアプリの仕事をしている別の先輩社員さんは、自分の推すマニアックなまんがをしっかり読んでもらえていて、なんというか羨ましい。

ラーメン屋で働けそうな人が、ラーメン屋で読めそうなまんがを推しているというかんじ。
この方だけは、すすめてくださった漫画をぼくが読んでいなかったときに

「読んでくださいよ!」

と怒る。漫画が本当に好きな方なのが見ていてわかる。

そして、たぶん感覚肌でしっかり仕事できるってかんじの方で、アプリで漫画を不特定多数にぶん投げていく仕事は、この人にとって天職なんだろうなーと思う。ぼくには進めない道だ。
(35分47秒)

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