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VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた4 (ファンタジア文庫) 著 七斗七

【労働に見合った報酬が頂けないなんて、流石にキレますよ】


【あらすじ】
聖様が収益化剥奪!? 大人気VTuberコメディ第4巻!



クレイジーなVTuberしか所属していない大手運営会社ライブオン。切り忘れから大人気となった三期生・心音淡雪は、晴の初ソロライブへのコラボ参加も無事成功させ喜んでいた……のも束の間、なんと二期生・宇月聖の収益化が剥奪されて!? シオンを中心に収益化を取り戻す為の会議を始めるものの、「聖様のどこが引っかかったと思う?」「……存在ですかね?」「配信をアダルトサイトでやるのはどうよ」「酷くないかい?」存在がセンシティブゆえ会議は難航、そしてどこか煮え切らない態度の聖に、遂にシオンが物申す!?衝撃のVTuberコメディ、そりゃ剥奪もされる第4弾!!

聖の収益化が剥奪され、前代未聞の会議が始まる物語。


配信で食べていく為には、避けては通れぬ収益化。微々たる物でも、己の汗と涙が詰まった努力の結晶である。
その労働に対する正当な対価が剥奪される事で始まる井戸端会議。
聖の収益化問題に対し喧々諤々、淡雪達の会議は難航。
センシティブな内容故にカオスになった会議の場で冷めた態度だった聖の眼を覚めさせる為、シオンが直談判する姿は。
厳しい状況にも関わらず、仲間で一致団結して状況と形勢を逆転しようとする気概が光るのである。

昨今、配信や動画投稿と言う行為で生計を立てる者にとって最もつらい事とは何といっても、収益停止という事である。
何をしてもお金にならず、あっという間に無収入の無職になってしまう、実際になってしまうと寿命が十年くらいは縮むかもしれぬ最悪の事態。
しかし、どう転んでも何ともしようがなく、できる事と言えば気に掛ける事くらいの身。
そんな訳で、淡雪は今日もまた配信に励むのである。
ただ、自分達がどうにか配信を頑張っていれば、状況が打開出来るかもしれないという淡い期待を抱いて。
通称「ワルクラ」というゲームの中で初めて自分で企画を立てて、来てくれたコラボ相手達と丁々発止の漫才を繰り広げたり。
ひょんな事から有素のお家に遊びに行くことになり、曲者過ぎる有素やその両親に振り回されながらも、大切にされていると言う家族の絆を目撃したり。
百合度大増量の終盤には前回の晴絡みの展開で描いたこのシリーズのシリアスが良い感じに熟成されている。

特にシオンが聖に語る台詞がVTuberをこよなく愛するからこそ産まれる言葉で、不覚にも涙腺が潤むような熱さがあった。
二期生達の絆や彼女達の葛藤も垣間見える事で、好きな事で生きていく喜怒哀楽が濃密に映し出される。
一見、華やかに見えるVTuberの世界といえど、日々視聴者に飽きられ無い為に、企画やネタを頭をこねくり回して試行錯誤して、常日頃、研究して動画を創っていく。

安泰という文字はこの世界には無い。

そこまでして苦労するのは、何も全てお金の為では無い。
なら、何故そこまで頑張るのか?

それはリスナーを笑顔にしたいという願望。
自らの存在を認めて欲しいという承認欲求。
暗いニュースが世間で飛び交う中で、ほんのひと時でも、現実の煩事を忘れて、自分達の世界で笑顔に浸って欲しいというささやかな想い。

それらの純朴な想いと裏腹に生きていく為には、やはりお金が必要で。
自分の労働に見合った対価を頂けないと、その理不尽さに流石にキレたくもなる。

我々リスナーに出来る事といえば、一回でも多く配信に参加して、彼女らをひたむきに応援する事だ。
それが新たに彼女らが配信のクオリティとモチベーションを上げる活力となる。

面白そうな事で視聴者を笑わす為に身体を張って検証する彼女達の世知辛さが見え隠れるのだ。


笑いだけでは無く、百合の尊さも感じたい方には是非とも読んで欲しい。





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