嘘を愛する女
こちら、「TSUTAYA CREATERS'PROGRAM FILM」というTSUTAYA発の映像クリエイターと作品企画の発掘プログラムから生まれた作品。
監督・脚本は、CMディレクターの中江和仁監督。
ミステリー色の強い作品と思いきや、鑑賞してみると大人の切ない恋愛映画といった内容でした。大切な誰かとの恋愛関係を通して、喪失感を味わったことのある人ならば共感できる内容でしょう。
⭐️あらすじ⭐️
食品メーカーの商品開発で責任者を任される由加利は、バリバリのキャリアウーマン。そんな彼女は2011年、東日本大震災の日に、混乱して人で溢れ返る駅の中で、体調が悪くなってしまい、駅のホームでうずくまってしまいます。
混乱の中で一人座り込む彼女に、そっと「大丈夫ですか」と見ず知らずの桔平が声をかけるところから、二人の恋愛はスタートしていきます。
二人は時折喧嘩しながらも順調に日々を重ね、5年の月日が流れたある日、突然桔平が蜘蛛膜下出血で倒れ、意識不明になってしまいます。
由加利のもとに桔平が倒れたことを知らせに来たのは、なんと刑事。由加利は刑事から、「桔平は免許書を偽装し偽名を使って生活をしていたこと」を告げられます。
今まで築いてきた信頼関係を裏切られた由加利は、ショックに打ちひしがれながらも、桔平の過去を知るために探偵事務所に駆け込みます。
調査を始めると、桔平がこっそり書いていた700ページにも及ぶ小説が見つかり、それを頼りに、由加利は誰かもわからない恋人の過去を辿っていくことになります。
⭐️レビュー⭐️
ところどころ間延び感も見られましたが、総じて個人的に好きな作品でした!
最初は「ずっと愛していた恋人が別人だった」というミステリアスな展開に引き寄せられ、後半になるにつれて嘘も含めて桔平を愛そうとする由加利の葛藤と愛情の深さに感動しました。
終わり方もほっこりしていて、あったかい気持ちになれる作品です。
誰もが人との関わりの中で「これは知らない方が良かった」と思うのことがあるのではないでしょうか。
私もこれまで大好きだった友人と恋愛関係に発展した時、相手の薄っぺらい面に気付いてしまい「ずっと友人が良かった」と、胸がチクチクと痛んだことがあります。
「その人を知る」という行為は、ある意味で勇気を伴うものです。今まで想像の中でその人を作り上げていた自分を引っ張り出して、想像と乖離しているかもしれない現実の彼・彼女を受け止めなければならない。
この物語では、桔平の過去に近づくに連れ、苛立ち不安を感じる由加利の姿が描かれています。しかし、そんな恐怖も乗り越え、嘘をつく彼をも愛することができた由加利は、桔平の本当の感情を知り涙するのでした。
この作品では、「大人の愛」について学べたものでした。愛するとは、その人を存在自体を愛おしいと思い、どんな過去もどんな秘密も受け止めることじゃないでしょうか。
うーん、そんな人に出会えるのか....。
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