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映画感想文【ブラック・レイン】

1989年 製作
監督:リドリー・スコット
出演:マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア、高倉健、松田優作

<あらすじ>
ニューヨーク市警の不良刑事ニックは汚職に関わる審問中、ある殺人現場に居合わせ犯人を逮捕。相棒チャーリーとともに犯人・佐藤を日本へ護送したが、不慣れな異国の地でまんまと騙され逃亡される失態を演じる。二人は監視についた松本警部補とともに佐藤の捜索に乗り出すが、チャーリーが佐藤の策略にはまり惨殺される。



午前十時の映画祭にて。
34年前、巨匠リドリー・スコットが描いた大阪はジャパニーズ・ゴッサムシティであった……。

1989年の日本といえばバブル景気真っ最中。イケイケドンドン(古)の大阪だが、大阪府警といいつつも大阪弁はほとんど出てこないし(健さんだから?)あまりそこが強調されている印象はない。何と言っても34年も昔。辛うじてあそこかな? と見当がつくくらいで、聖地巡礼してもピンとこないだろう。ストーリー的にも「んな無茶な」が多いが、今更それを突っ込むのは野暮というもの。
それよりは高倉健とマイケル・ダグラスの古臭い男の友情や、これを遺作とした松田優作の怪演を味わうのが相応しいはずだ。
アンディ・ガルシア、かっちょいい〜〜。

マイケル・ダグラスと高倉健が徐々に打ち解けていく様子が良い。不器用にうどんを啜るマイケル、可愛いよ。
無鉄砲さと生活苦から横領したことを告白し、それは彼自身のみならず、友人である自分や死んだ相棒をも侮辱する行為だと諭されるシーン。高倉健ならではの説得力を感じる。演技に言語は関係しないのだ。

そして何と言っても松田優作演じるヤクザ、佐藤。公開された同年に松田優作は死去している。
撮影中も既に病でひどい状態だったというのだから、あの指詰めシーンの鬼気迫る表情も、他も、すべて死をすぐそばに感じながら演じていたのだろうか。そのタイミングの奇なることに、運命というやつを感じないでもない。

少し前の欧米映画の中においては、かなり日本を好意的というか、過剰な色眼鏡を通さずに描いている作品だと思う。(後半、ヤクザの取引が行われる農村は正直イメージが怪しいが……)
あるいは良いようにも悪いようにも、更には時代を忠実に映すこと自体に興味がなかったのかもしれない。もはや日本をモデルにしたどっかの架空アングラシティというべきか。
結果的にそれが良いように作用しているのだろう。フィルム・ノワール初心者の手始めにはこれくらいがちょうどいい気もする

ひとつだけ言わせてもらうと、道頓堀から十三まで徒歩20分では絶対たどり着かない……。撮影許可の関係とか?
細かい所に気づけるのは、少しばかり現地民ゆえの優越を感じる。ワハハ。

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