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映画感想文【フォールガイ】

2024年製作
監督:デビッド・リーチ
出演:ライアン・ゴズリング、エミリー・ブラント

<あらすじ>
大怪我を負い一線から退いていたスタントマンのコルトは、復帰作となるハリウッド映画の撮影現場で、監督を務める元恋人ジョディと再会する。そんな中、長年にわたりコルトがスタントダブルを請け負ってきた因縁の主演俳優トム・ライダーが失踪。ジョディとの復縁と一流スタントマンとしてのキャリア復活を狙うコルトはトムの行方を追うが、思わぬ事件に巻き込まれてしまう。

映画.com


正統派ハリウッドッカンドッカン映画かと思いきや、ちょっとした思惑もあり、丁寧な心理描写ありで面白かった。

CGによる特殊効果、視覚効果(VFX)はとんでもない進化を遂げて、今や本物と見紛うばかり。
でもやっぱり本物のアクションは違うね、などと通ぶる気はない。だってまじで見分けがつかないもん。正確にはどこにどんな修正が入っているか、全然分からない。
技術が向上したおかげでスタントマンが危険なアクションで命を落とす確率も、以前と比較して減ったのではないだろうか。逆に職を失ったスタントマンだって、当然いるだろうけど。

監督だって俳優だって撮影には全力で臨んでいるだろうが、スタントマンは文字通り命がけである。
彼らの技術は相当なもので、主な活躍の場はTVや映画撮影だが、安全教室での実演で度肝を抜かれた人も多いのではなかろうか。
前方不注意で歩行者と正面衝突する自転車だとか、迫力満点なんて話ではない。目の前で起こった事故に、本物ではないと分かっていても硬直してしまう。
自動車の免許更新でも定期的に同じものを開催していれば、事故発生率も多少はマシになりそうな気がする。合わせてその後の話(事後処理や金銭事例など)もしておけば効果満点だ。




派手なアクションはとことん派手で人は上から落ちてくるし車は宙を舞うし、火柱はあっちでドッカン、こっちでドッカン。陸海空、オールミッションクリア。
スタントマンたちの集大成を見せてもらった、という気分である。裏舞台をちょいちょいうかがわせる脚本が面白い。

ノースタント俳優といえば、トム・クルーズにジェイソン・ステイサム。それからジャッキー・チェンは欠かせない。
かなりのアクションを自演していて恐れ入るが、それでも保険だとか契約だとかの関係もある。100%ではないだろうし、なにより本人以外のアクションだってある。
きっと将来映像技術がどれだけ発達したとしても、スタントマンなしで映画は成り立たない。観客は現状に満足せず、もっともっとと過激なアクションを求める。フィクションと知りつつ、生身の人間がどれだけ出来るのか、その境界を知りたがっている。
そしてスタントマンの仕事は、如何に本物らしくギリギリを見せるか。

今作品でも多くのスタントマンたちが危険な仕事をこなしただろう。
冒頭、主人公はスタント中に事故に遭い負傷、現場から退く。その時の心境をのちに「自分は不死身じゃないと気づいた」と語る。
主人公はその事実に気づいてある意味怖気づいたが、きっと生き物の生存本能としては正しい。最後まで気づかずに、境界を超えてしまった人もいることだろう。
スタントマンの危うさを感じた。


やっちゃえ! とばかりのド派手なラストシーンから、エンドロールでは実際の撮影風景が流れる。
沢山の安全対策が施されているとは言え、その場にいたら常に冷や汗ドバドバ、生きた心地がしないだろうアクションの数々。
それまで最底辺のクソヤローだった主演俳優が、最後の最後に見せた自分のスタントマンに対する感謝と信頼。そこだけは俳優として、人間として、救いようがあるなと感心した。

ポップコーン片手に、夏休みの締めにふさわしい一本。


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