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頭ン中をちょい覗き


最初に一行のタイトルを百個考える。これに半年間ほどかける。つまり、二日に一つくらいのペースだ。それが出揃ったところで、すべての本文を書く。これには、十時間ほどしかかからないので、一日一時間半かければ一週間で終わる。

本書まえがきより

著者・森博嗣氏が筆の早い作家であるということは前から知ってはいたが、さすがである。デビュー作『すべてがFになる』から一時期マメに追いかけていたが、そのうちこちらが追いつかなくなった。他に読みたいものが増えたこともあるが、純粋に新作が出るのが早い。シリーズものもそうでないものも、気づけば書店に並んでいるイメージがある。
本人曰くベストセラーはない、とのことだが、あれだけの執筆スピードと安定したヒットは「芸術家」というよりは「職人」と表現するのが確かにふさわしい。

本書はエッセイ集であり、一つ一つにつながりはない。
自然体、と本人が言うようにのびのび自由に書いたのだろうなと感じられる。こちらもどこから読んでも良いし、気になるところだけ読んで途中で切り上げても良いだろう。気軽なエッセイ集だ。

今までの著作にも感じられる「なるほどな〜」という納得あり、「それはちょっとどうなの」というはてなポイントあり。
100のタイトル、となると身構えそうだが、一つが見開き2ページのさっくり読みやすいものなのでとっつきやすい。
普段あまり指導本というか啓蒙本の類は読まないのだが、おしつけがましいところが少なくて好ましい。

好きな作家がいるのは良いことだ。その人の思考をうかがえるエッセイ集は楽しい。けれどどっぷりハマるのは、ちょっと危険な気がする。
どんなに好きだろうとリスペクトしようと、他人は他人。その思考に触れて、「いいね!」という部分と「同意しかねる」という部分とがあるのが普通で自然。
となれば、これくらいのサックリアッサリっぷりがちょうどいいのではなかろうか。


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