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映画感想文【バジュランギおじさんと、小さな迷子】

2015年 インド製作
出演:サルマーン・カーン、ハルシャーリー・マルホート

<あらすじ>
パキスタンの小さな村の少女、シャヒーダーは6歳になるのに声が出せない。母親と二人、インドのモスクまで願掛けにやってきたが、帰り道で一人インドに取り残されてしまう。途方に暮れるシャヒーダーが出会ったのは、正直者のパワン。ヒンドゥー教ハヌマーン神の熱心な信者であるパワン(バジュランギ)は、これもまたお導きだとシャヒーダーを保護する。しかし彼女がパキスタン出身のイスラム教徒だと分かって、住まいを追い出される事態に。
2国間の溝は深く、パスポートもビザもない。故郷の名前もわからない。それでもパワンは幼いシャヒーダーを送り届けるとハヌマーン神に誓い、危険な旅に出る。

ボリウッド映画の圧倒的熱量よ。
実はインド映画と知らずほのぼのヒューマンドラマだと思い込んでいたので、開始わずかでハチャメチャダンスが始まりアイヤーと驚いた。

映画に難しいストーリーはない。
あえて言えばインド・パキスタン間にあった紛争の事実などを知らないと少し理解に時間がかかるか。ただそれも観ていれば察しがつくので、ストーリーはサクサク進む。

一貫して言葉を発しない幼いシャヒーダー。
身元がわかる持ち物もないし、文字もわからない。それで一体どうやって家を見つけるのだろう、と迷子の経緯を知っている観客は不安になる。
イスラム教徒、パキスタン人だと分かった後も、それ以上の情報は出てこない上に周囲から拒絶され、危うくソープランドのようなところに売られそうになってしまう。

パキスタン人のシャヒーダーに対し、憤りを隠さないインドのおじさん(名前を忘れた)。何も知らないだろう無垢な少女に酷な仕打ちだが、戦争というものはそういうものだ。言っていることはそう見当違いなことではない。過去を思えば穏健な方なのだろうな、とも思う。
むしろなんの屈託もなくシャヒーダーを助けようとするパワンの方が、作中ではおかしいように描かれる。

度が過ぎる正直者でお人好しのパワン。
パキスタンへのビザが下りないので、シャヒーダーを送り届けるのに密入国しかないのだが、「密入国の許可を得る」と言って聞かないので頭が痛くなる。幼いシャヒーダーが何度も「こりゃ駄目だ」と頭に手をやるほど。

パワンが嘘をつけないのはハヌマーン神に誓ったからだが、いずれは身の危機に瀕してそれを覆す場面がくるのだろうと思っていた。ところがパワンは最後の最後まで、正直を貫き通す。
やがてその純粋な愛に周囲が動かされ、美しい大団円を迎える。
拍手、拍手、涙、涙。

悪人は出てこない、優しい映画である。
現状の2国間にどのような溝があり隔たりがあるのかは分からない。それでもこのフィクションのように、それぞれの国に生きる一人ひとりは、互いを思いやり触れ合えればという願いがあるのではないだろうか。その願いがこの映画を作ったのだとすれば、いつかきっと。


途中から同行する記者もめちゃエエやつ

160分の上映時間、ちょっとダラダラした感じもあったが、概ね良かった。
とにかく可愛らしいシャヒーダー。結構自らトラブルを引き起こすので「おいぃ!」とツッコミを入れたくなるが、まぁ可愛いので許す。
力も強くて誠実なパワンは、勉強はできなくとも愛はある。初登場がムッキムキで笑顔炸裂ダンスシーンだったために善良なガストン(※美女と野獣のあの人)といったイメージが強い。ムキムキが過ぎる。

改めてインドとパキスタンの地図を眺めてみた。
陸続きではあるが、さすがの広さ。国境を超えてからの景色の変化が驚きをもたらす。
規模のデカさを楽しむボリウッド映画。

まこと、世界は広い。


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