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映画感想文【タワーリング・インフェルノ】

1974年 製作
出演:スティーブ・マックィーン、ポール・ニューマン、フェイ・ダナウェイ
例によって午前十時の映画祭にて鑑賞。

<あらすじ>
サンフランシスコに完成した138階建の超高層ビル、グラス・タワー。地上550メートルの最上階で300名、上院議員や市長など錚々たる顔ぶれを招いた落成式が行われる最中、81階では小火が起こっていた。あろうことか配線工事の担当者がピンハネ目的で部品ランクを意図的に落としていた為に最新設備も作動せず、本来であればすぐに感知され消し止められるはずの小さな火は、瞬く間に燃え広がっていく。
駆けつけた消防隊長オハラハンとビル設計者ロバーツは、互いに協力して取り残された数百名を救わんと決死の救助活動に挑む。


随分昔にTVで観たし大体の筋書きも覚えていたが、スクリーンで再鑑賞して正解の迫力だった。
CGのない時代にアナログで作り上げたパニック映画である。
今同じような場面を撮るなら、カメラワークはもっと動きの激しいものになるだろうし、あたかもその場にいるかのような臨場感があるだろう。
しかしそのような最新技術を駆使した映画と比較して、決して古臭さを感じるものではない。むしろアナログゆえの凄まじさ、生々しさを感じた。相当過酷な撮影現場であったのではなかろうかと想像する。

製作にあたり、20世紀フォックスとワーナー・ブラザースという二大メジャー・スタジオが別々に企画していたビル火災の映画を合作したという。だからこそこの規模なのだろうか、出演する俳優たちも大物揃いである。
この作品の6年後に病で亡くなったスティーブ・マックィーンは当時44歳。超高層ビルの消火という困難を極める現場において、消防隊長という立場でもって冷静に捌いていく様子はカッコいいの一言に尽きる。先に見た『大脱走』(1963年)から更に眼光鋭く、一段も二段も渋さが増していた。
もちろん炎に立ち向かう消防士という役柄がカッコいいのだが、「こんな上司欲しい」と思わせる有能さがまた好感度倍増しである。

火事の原因となるのは、ビルを建設した建築会社のオーナー、ダンカンの娘婿ロジャーの、せこいピンハネによる粗悪な配電工事であった。映画では救いようのないクズとして描かれ方をしているロジャーは終盤、これまたお手本のような最悪の死に方をする。
初めて本作を観た時はその結末に「だよね」と溜飲を下げていた。悪人は滅びて当然だろう、と。しかし年月を経た今思ったのは、「生きのびて謝罪とか遺族賠償とか諸々責任取らせろや…」ということであった。
なんだか味気ないというか生々しくて夢がない成長だな、と我ながら感じた次第である。

上映時間は165分、前回観た『大脱走』と同じ長尺物の映画である。途中席を立つ人もチラホラ。
登場人物が多くそれぞれのエピソードが丁寧に語られるので、その分だけ長くならざるを得なかったのだろう。少し冗長かな、と思わなくもない。例えばフレッド・アステア演じる詐欺師とその標的たる女性のエピソードは、市長とその夫人の二人でも代替できる気がする。

ビルの大災害、という点では『ダイ・ハード』も少し連想させるが、あちらは対テロリストの娯楽アクション映画。本作は人の尽きない虚栄心に対する警告を込めた社会派ドラマと言っても良いだろう。
巨大なビルは旧約聖書にあるバベルの塔にも通じるものを感じた。

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