美味しい料理の組み立て方①

プロの料理人がどのような点を意識して作っているか。

僕の考え方だが、
料理って「これをやれば美味しくなるっていう」加点方式ではなくて、
「これをやらなかったら美味しくならない」っていう減点方式だと思っているので、お客様に提供するためには手を抜けない。
さらにいうと、ある工程を抜かして美味しくなかったと言われたら、
「あの工程をやってなかったから」なのか「他に原因がある」のかわからなくなる。それではフィードバックがなんの役にも立たなくなる。

作り方に関してだが、第一回目は味付けについて。


味付けは旨味ベース

和食の世界では5味(ごみ)と言われる味がある。
甘味、塩味、酸味、苦味、そして旨味。
ちなみに辛味は味ではなく刺激に分類される。
味付けで一番大事なのは旨味だ。

旨味って何?と思われるかもしれない。
ここを理解(体得)するのに僕はものすごい苦労した。
化学的にいうと「グルタミン酸」や「イノシン酸」といったものだが、
正直、僕自身、言葉と味が結びついていない。
要するに、ダシとかエキスとかと思ってもらえればいい。
魚、肉、貝類、野菜。それぞれに違った旨味があるし、強さも違う。

とにかく旨味がないと味が決まらない。
逆にいうと、旨味がしっかりしていれば味は決まりやすい。

ただ気をつけたいのは旨味が強すぎると、
クセがあると感じられたり、いやらしい味と捉えられるので注意が必要だ。


甘味と塩味

旨味のベースができたら次は甘味と塩味だ。

旨味で味の土台を作り、次に甘味をのせ、最後に塩味を加えて整える。
基本的にはこの順番。

と、本当に丁寧にするならここまでやるが、基本的には甘味と塩味は同時に加える。
微調整をするときに甘味を先に足し、味見をして、それに合わせるように塩味を加える。この順番でやると失敗が少ない。
というのは、塩味をつけ過ぎてしまうと調整が効かないからだ。

では、酸味のある料理を作るときはどうするか?
例えば南蛮漬け。
これも旨味+甘味+塩味ができたところにお酢等の酸味を加えれば良い。
ただ酸味を加えると甘味がぼやけるので、少し甘味を強めにしておいて方がいい。


香り


味ではないのだが、香りも非常に重要なポイントである。
代表的なもので言えば、ゆずや木の芽。生姜もいい。
この香りがあることで、アクセントになって食欲をかき立てたり、
全体がグッと引き締まる。
ただ修行時代、何でもかんでもゆずを振るのに嫌気がさしたのを覚えてる。
使えばいいってもんじゃない。
香りに近いもので薬味というものがすごく和食っぽくて好きだ。
大葉(青紫蘇)、茗荷、ネギ、わさび、柚子胡椒。
辛味もこの使い方に近い。一味、七味、山椒など。

これ一つで味の印象が大きく変わるので色々試してほしい。


まとめ


このように行き当たりばったりで味付けをするのではなくて、ある程度当たりをつけて味付けをする。
有名な言葉だが
「料理とは理(ことわり)を料(はかる)と書く」
とある。
つまり美味しいには理由があるということだ。


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補足

苦味が出てきてない。これは味付けの概念ではなく、調理過程で付随するものだったり、素材の味から出るものなので、足していくものではない。
食欲をそそるアクセントだったり、苦味に含まれる旨味を考慮して全体をまとめる。

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