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エビングハウスの忘却曲線は大嘘―英単語学習の本当のコツ―

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結論から言うと、エビングハウスの忘却曲線はほとんどの人、ほとんどの場合において大嘘です。

英単語が全然覚えられない、もっと楽に英単語を覚えたい…といった方にはこの記事がお役に立てると思います。

前提:エビングハウスの忘却曲線とは何か?

エビングハウスの忘却曲線っていうのはこういうやつです。

引用元
https://oreno-zyuken.com/technique/ebinguhausu/

「一定期間後にどれぐらい今日の学習内容を覚えているかのグラフだよ」と教わったことのある方もいるかも知れません。それはです。

具体的にどことは言いませんが、超大手家庭教師のサイトにもこれを「忘却率」として掲載し、誠実な説明が掲載してありません。困ったものです。

よくグラフを見てください。「節約率」と書いてあります。これはどういうことでしょうか。

エビングハウスの忘却曲線にある「節約率」とは、時間の経過によって「どのくらいの記憶が失われているか」といった記憶量の変化ではなく、その知識を再び学習する際に「どのくらい時間を節約することができるか」を指します。

引用元
https://keiei-shinri.or.jp/word/%E3%82%A8%E3%83%93%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%BF%98%E5%8D%B4%E6%9B%B2%E7%B7%9A/

つまりこのグラフは、「どれぐらい忘れているか」ではなく、「時間経過と復習時間の関係」を表しているわけです。

「それなら、復習タイミングに違いはないじゃないか!」とお考えの方もいるかも知れませんので、もう一つ重要なことをお教えします。

また、注意していただきたいのは、このエビングハウスの忘却曲線は「意味を持たない音節の記憶」に対する実験結果だということです。

つまり、全く関心のないことを学習する際の記憶の定着率や節約率はこの忘却曲線に沿ったものとなりますが、学習する側が関心のある分野においてはより記憶の定着率や節約率が高いものとなることが想定されます。

引用元
https://keiei-shinri.or.jp/word/%E3%82%A8%E3%83%93%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%BF%98%E5%8D%B4%E6%9B%B2%E7%B7%9A/

注:太字は私が勝手に施しました

お分かりでしょうか。「意味を持たない音節の記憶」です。

意味を持たない音節の記憶」ですよ。

この記事を読まれている方は日本語が堪能だと思いますが、今読んでいる記事は「意味を持たない線の羅列」でしょうか。

日々テレビやYoutubeで流れてくる音声は「意味はないけどなんかリズミカルな音」でしょうか。

そんな事ありませんよね。
それと同様に、英単語も意味を持たない音節などではありません。

もちろん関心に応じて記憶率は変わると思いますが、少なくとも日本語や英語である時点で「無意味な音節」とは一線を画すものでしょう。

英単語を単純暗記だと思うことの悲劇

英単語を日本語と一対一で対応させ、単語カードやプリントにして覚える…ごく一般的な英単語学習の風景のように思われるかもしれません。

しかしながら、これは非常に非効率です。なぜなら、単語学習を単純暗記に落とし込んでいるからです。

単純暗記をするほど、忘却率がさっきのエビングハウス曲線に近づきます(一致はしませんが)。

単純暗記じゃない単語の覚え方その1

例えば、「unimportant」という単語を今から覚えてみましょう。「長い…」「どう読むんだ…」「mとnを間違えそう…」という方、今から言うことを頭に叩き込んでください。

まず、この単語は分解すると以下のパーツからできています。

  • un-

  • in(im)-

  • port

  • -ant

これは音節などで区切ったものではなく、ある一定の基準で区切りました。後でまた使います。

Prefix, Root, Suffix

突然ですが、この3つの単語を覚えてください。Prefix, Root, Suffixです。日本語にするとそれぞれ接頭辞、語根、接尾辞と言います。

このprefixとsuffixは漢字の部首みたいなものです。語根につけることで一定の意味を付け足します。2つ以上続くこともあります。

接頭辞prefixには例えば以下のようなものがあります。

  • sur-, super-(上に、超えて)surface, surpass

  • ex-(外に)export

  • re-(再び、元に、後ろに)replay, reset, retreat

他にも無数にあります。

語根rootにはこのようなものがあります。

  • port(港)export

  • tract(ひっぱる)tractor

  • dict(言う)dictation

  • voc(声)vocal

それ単体で単語として独立できるものもありますが、独立できなさそうなものもあります。

接尾辞suffixには以下のようなものがあります。

  • -al, -ate(形容詞になる)visual, immediate

  • -ous(いっぱい)famous

  • -tion(名詞になる)information

これは雑学ではありません。英単語を覚えるにあたって半ば常識であり(漢字の部首みたいなもんですからね)、記憶の定着に一役買ってくれる心強い仲間です。

ただし、常に一対一で意味が対応しているわけではありません。「in-」というprefixには「ではない」という意味の他に「中に」という意味もあります。漢字の部首が「さんずい」だからと言って必ず水に強く関係があると限らないのと似ています。ここは気をつけてください。

unimportantの話

さて、この単語に話を戻しましょう。この単語、一体どういう意味なのでしょうか。

この単語をもう一度分解したいと思います。

  • un-(じゃない)

  • in(im)-(中にorじゃない)

  • port(港)

  • -ant(組織or状態)

しかし、orが多くてこれだけ丸暗記していてもまるでわかりません。そこで、ちょっとくっつけてみましょう。

un + import + ant

importは「中+港」から「輸入する」という意味になります。

発音とスペル

…ところでなぜ「in」が「im」になったのでしょうか?

引用元
https://www.lingolearn.com/learn-languages/learn-english/prefixes-in-english-in-im-un

「im」で始まる語と「in」で始まる語を見比べて…何かに気がついた人は観察力が鋭いです。「im」で始まる後はその次の文字が「p, b, m」で終わっていることにお気づきでしょうか。

これはどうしてでしょう。それはp, b, mが唇を開いて出す音だからです。「ぱ、ま、ば」と言ってみてください。唇が離れていることがわかります。

そして、「n」と「m」の発音の違いは「唇を開いて出す音か否か」にあります。カタカナ書きで読みを覚えてしまうとどっちも「インポート」ですが、「inport」より「import」のほうが言いやすいのでこういうスペルになるわけですね。

当たり前ですが、こういう理由もあってカタカナ読みで覚えるのもやめたほうが良いです。英語には「a, an」のどちらかを付けるか、「s, es」のどちらを付けるかなど不規則になるスペルが複数あります。こういったものは発音に由来する違いですので発音を正確に覚えることで回避することができます。

unimportantの話

さて、un + importantを見ていきましょう。

「important」の形は見たことがあるでしょうか。これは「輸入する人」と「輸入する情報」のどちらかの意味があると予測できます。

ここで参考になるのは例文です。このimportantが名詞(smartphone, appleの仲間)か、形容詞(beautiful, coolの仲間)か、はたまたその両方の用法があるのかは例文を見れば一目瞭然です。

引用元
https://ejje.weblio.jp/content/important

このように、例文を見ることでimportantの品詞(単語の種類、何の仲間か)と使い方を同時に知ることができました。

そして、prefixであるun-は「じゃない」という意味を表しました。「important」で十分意味をなしていて、それに「じゃない」を付けるとどういう意味になるか、簡単に予想がつくと思います。

こうして「重要じゃない」という意味の「unimportant」という単語だけではなく、皆さんは「un in(im) port ant」の4つの単語のパーツを覚えたことになります。

un、in、imから始まる単語、portが入る単語、antで終わる単語、無数にあります。次見た時は「あっこれ…」という風に、関連付けて覚えることができます。

ね、単純暗記じゃなくなったでしょ?

注意

この時心がけてほしいのは、「品詞を見て終わり」にしないでほしいということです。品詞だけを見ても使い方がわからなければその単語を「わかった」ことには決してなりません。

また、例文を一つだけ見て「こういう意味なんだな」と納得することもまずいです。その単語には複数意味と使い方があるかもしれません。熟語があるかもしれません。

今回のimportantの場合はIt is important to…という見慣れない表現が出てきました。この構文は勉強する価値がありそうですね。


このように、英単語の学習は単純暗記ではありません。

長い単語ほど、こういったprefixやsuffixがついていることが多いです。そういった点に注目しながら単語を見たり覚えたり読んだりすることで、単純暗記ではなくなり、しっかりとした知識としてみなさんの脳内に定着します。

こういうプロセスを通ることで、私は英語を一層好きになることができました。それだけでなく、英単語を覚えるスピードが格段に向上しました。

単純暗記をしないといけない例外

「英単語は単純暗記ではない」と言いました。しかし、例外もあります。それは初学者の場合です。

アルファベットはある程度「覚え方」みたいなのはあるかもしれませんが、基本的には丸暗記する必要があります。

しかし、アルファベットの復習はみんなやりますよね。ん?いつやるかって?英単語を読み書きする時常に、です。

アルファベットを覚える時に、わざわざ数分おきに復習したりしたでしょうか。私はそんな事をした記憶はありません。しいて言えば、文字を入力する時にアルファベットを見て思い出したりしていたぐらいでしょうか。

それでも覚えられないアルファベットがあれば、機械的に暗記したり、なぜその文字の形になったのかを調べてみると新しい発見があるかもしれません。

「驚き、興味」を伴った記憶は抜けにくくなります。

ポジティブな感情を伴って、記憶にインパクトを付与
 もう一つのポイントが、「覚えるときにポジティブな感情を伴う」ということ。頭に入れるとき、「へえ~、そうなんだ!(驚き)」、「面白いな(興味)」、「え、違うの!?(意外性)」といった感情を伴うと、覚えやすく思い出しやすい。「淡々と知識をなぞるのではなく、知的発見を面白がる姿勢や知的好奇心が、記憶力に関してとても重要になる」と吉田先生。普段、勉強中にこのような感情が生まれないという人は、意識的に感情や感覚を刺激するように心がけよう。また、「これ、○○っぽいな」というようなイメージでもいい。覚える対象に何らかのインパクトをもたせることが重要なのだ。

引用元
https://passnavi.evidus.com/article/study/201806_03/

その他、以下のことは丸暗記しなければなりません。

  • 動詞の活用(ただし一定のパターンはありますので工夫すれば丸暗記を回避できます)

  • 単語の読み方(ただし一定のパターンあり)

  • 発音記号と発音

  • 定型句、挨拶

また、ここまで色々書いておいてなんですが、単純暗記が向いている人というのは一定数います。そういう方は単純暗記を長期記憶に転用できる才能がありますので、どんどん使ってあげるのが良いと思います。

自分にあった記憶方法というのは自分にしかわかりません。探りながら頑張っていってください。この記事が参考になることを祈っております。

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参考文献

清水建二、すずきひろし、本間昭文(2018)『英単語の語源図鑑』 かんき出版

清水建二、すずきひろし、本間昭文(2019)『続・英単語の語源図鑑』 かんき出版

The Free Dictionary
https://www.thefreedictionary.com/Commonly-Confused-Suffixes-ant-vs-ent.htm

LingoLearn
https://www.lingolearn.com/learn-languages/learn-english/prefixes-in-english-in-im-un/

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