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「皇帝ティートの慈悲」モーツァルト晩年の知られざる名曲

こんにちは、ファゴット奏者の蛯澤亮です。楽器を吹いたり、youtubeやnoteで情報を共有したり、コンサートの企画運営をしています。

みなさん、「皇帝ティートの慈悲」ってオペラご存知ですか?モーツァルト が最後に書いたオペラといえば「魔笛」ですが、実はその直前に発表されたオペラがあるんです。モーツァルトの最晩年期の作品だが、あまり有名ではないこの作品。なぜマイナーなのでしょう?

今週水曜日(9/9)に開催するハルモニームジークで取り上げるオペラについて少し解説します。


マイナーなのは題材のせい?

このオペラは、レオポルト2世の戴冠式の祝典のために書かれた。
内容は皇帝を賛辞する物語。現代では皇帝を賛美するという話はイマイチ馴染まないでしょう。お金に困っていたモーツァルトにとって公的な依頼は大事だったでしょう。魔笛よりも先に完成させている。

しかし、美しい音楽から近年評価の高まりつつあるオペラだ。

『皇帝ティートの慈悲』は、モーツァルトの亡くなった年に書かれた最後から2番目のオペラ。初演は、彼の最後のオペラ『魔笛』のわずか3週間前に開かれた。

一般的にはこんな解説。皇帝を賛美するからマイナーだって言っても内容を知るとあんまりそんな感じでもなかった。確かに最終的に皇帝を賛美する内容だが、その実は恋愛が絡んだ話。オペラでありがちな恋愛がらみのとんでもストーリーだ。


音楽は本当に美しい

序曲はたびたび演奏される機会がある。ティートを演奏したことがあるといえば大抵は序曲だ。確かに私もモーツァルトのオペラはそれなりに演奏したことがあるが、ティートは未だ序曲しか演奏したことがない。だが、この序曲で始まるオペラのアリアもとても素晴らしい。

私の一押しはなんと言っても「Ah! Perdona al primo affetto」。訳は「ああ!昔の愛情に免じて」など、いろんな訳がありますが、男が女に許しを得るところです。

皇帝に恋人を取られることを仕方のないことだと許し、恋人に打ち明ける彼に恋人は怒ります。そして自分の気持ちに蓋をして本当に大事なことを失っていた自分に男は気付くのです。そして彼が恋人に謝る場面、それがこの曲。彼女は全てを受け入れ、愛を確かめ合う。その愛に溢れた場面をこれ以上ないほどに美しく描いた曲がこれです。

動画は2003年のザルツブルク音楽祭。エリナ ガランチャとバーバラ ボニーというスター共演。この時代はまだ去勢された男性歌手がおり、ここでの男役は本来その人たちが歌った役です。今では低い声域の女性が歌っています。所謂ズボン役というものです。

オーケストラはウィーンフィル、指揮はニコラウス アーノンクール。私の師匠ミヒャエル ヴェルバが1番ファゴットで乗っています。序曲の時に吹いている姿が映されましたが、私が留学する前、まだ五十手前の師匠は髪が黒かったw 最初の男役が歌っているメロディを同じ音で一緒に吹いているのが実はファゴット。ヴェルバの美音が絶妙に聴こえます。その後、女性役と同じメロディで重ねるのはフルート。この辺の楽器の使い方がニクいですね。フルートはディーター フルーリー。もう二人ともウィーンフィルを定年になってしまいました。しかし、やはりこの頃のウィーンフィルは今のウィーンフィルとは違った響きがします。


管楽八重奏版は一幕のみ

ハルモニームジークでの管楽八重奏版はモーツァルトと同じ時代を生きたオーボエ奏者トリーベンセーの編曲。彼はモーツァルトのたくさんのオペラを管楽八重奏版に編曲しています。オーボエ奏者だけあって自分が吹きたかったのかオーボエにたくさんの重要なパートが任されています。

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今日は本番前最後の練習。一つ一つの曲の歌い方や曲想をどう表現できるかが勝負。一人一人がこれからまた本番までに考えてきてくれることでしょう。どんな本番になるのか楽しみです。

一幕のみの編曲ですが、実はこのオペラ、一幕にほとんどの動きがあって二幕はその回収と言った感じの内容です。一幕だけで十分しっかりした物語なので、これはこれで良いのかなと。そして、モーツァルトのオペラにありがちですが、一幕に名曲が揃っています。今回もオペラは語りをつけての演奏。現地にも、オンラインでもぜひお試しください♫

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