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想像力と感覚。感覚のある音で合わせるとは?室内楽ピアニストにとって仕事で大事な要素も。

こんにちは! ファゴット奏者の蛯澤亮です。楽器を吹いたり、youtubeやnoteで情報を共有したり、コンサートの企画運営をしています。一緒に人生を楽しんでいきましょう♫

さて、気づけばもう8月も終わりが近づいています!来週の今日はおしゃふぁご!ということで今回は共演者の齋藤里菜さんとの演奏で考えたことを書いてみます!

〜同じ女を愛した2人の男、その愛の形〜
名曲喫茶カデンツァサロンコンサートシリーズ

8/31(水)
おしゃふぁご with 齋藤里菜
蛯澤亮のおしゃべりファゴット

名曲喫茶カデンツァ
東京都文京区本郷7丁目2−2 本郷ビル内田エタージュ2 B1

チケット 一般3500円
お申し込み(事前決済)
https://reserva.be/artscadenza/reserve?mode=service_staff&search_evt_no=bfeJwzsjQxtDAGAARVATw
学生 2000円(要予約、当日支払い)
お申し込み cadenza2020.09.01@gmail.com
主催 Life of music 株式会社、名曲喫茶カデンツァ

問い合わせ cadenza2020.09.01@gmail.com

曲目 
クリストフ・シャフラート 二重奏曲 へ短調
ヨーゼフ・ハイドン ピアノソナタ 嬰ハ短調 Hob.XVI:36 より第1楽章
ロベルト・シューマン 「女の愛と生涯」
ヨハネス・ブラームス ソナタ第一番 へ短調 作品120

蛯澤亮 ファゴット
齋藤里菜 ピアノ


単音楽器はピアニストを探してる?

ピアニスト齋藤里菜さんと共演したのはもう約一年前。

齋藤さんとの初共演を思い出してみる。

評判は聞いており、美人で上手いとのこと。うむ、、、写真を見ればおじさま方の好評はすぐに理解できたので、演奏はどうなのかなーと思っていました。

私はピアニストを常に探しています、これってたぶんほとんどの単音楽器奏者が考えていることで、ピアニストは良い人を知っているほど良いのです。ピアニストと違って単音楽器は1人で演奏することは稀ですし、なにせ単音なのでピアニストの比重の方が実は大きいわけです。ピアニストによって演奏の質や方向性はかなり変わります。

大学生の時に私の好きなオーボエ奏者、宮本文昭さんのリサイタルを地元の水戸へ聴きに行った時、ピアニストはなんと私が国立音大で和声の授業を習っていた山洞先生でした。演奏会後、先生の楽屋へ挨拶に行くと(宮本さんはサイン会でロビーに行っていた)、いろいろ話しながら「駅まで一緒に行こう」となり、話をいろいろ聴きました。

そのときに聞いたのは「宮本さんはおそらく仕事を頼む数人のピアニストがいて、ありがたいことにその1人に自分がいる」とのこと。予定が合うか合わないかという問題があるので信頼できるピアニストを常に2,3人はキープしてるんじゃないかって話でした。

それは学生時代の自分でも納得できる話でした。もちろん、自分が100%信頼できるピアニストがいれば良いのですが、お互い仕事があるわけだし、単音楽器としては常にピアニストは探しているのです。

ですから、仕事を探しているピアニストの方はぜひそれを踏まえて単音楽器の方と接してみてくださいね。

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合う、合わせるとは?

さてさて、齋藤さんと演奏してみての感想ですが、その繊細な感覚に驚きました。

正直、私は色々と「こんな感じで」と伝えるのですが、それに対する反応が最初から高いレベルでした。音が弾けているのはもちろん、音楽面も1回目の合わせで修正してきたのです。

例えば、バロックや古典のように繰り返しがよくある曲の場合、まず練習では基本的に繰り返します。そうすると同じことをやるわけですから、どう修正してくるのかをこちらは感じるわけです。齋藤さんの修正は1回目のときにうまくいかなったことを直すだけでなく、2回目に変化をつけるところまで予測して演奏している感じでした。

まず合わせた時点で「この人とは合う、合わない」とある程度感じます。齋藤さんはその点、私個人としてとても合いました。逆に、「合わせ過ぎないで」と要求するくらいでした。これって、度合いの問題があるのですが、齋藤さんはファゴットにとってもありがたいくらいタッチがとても柔らかく繊細に演奏できるし、流れを作りながら合わせてくるので、この「気にし過ぎ」な演奏がよくわかりました。

ひとまわり以上違うおっさんが言うことはうざかったかもしれませんがw、私が要求することに関して即座に対応して音に出してくれました。そこにしっかりと「感覚」をつけてきてくれたことが素晴らしかったです。

音の強弱や表面的な感じで表現する人は多いのですが、そこに感覚をつけてくれる人はなかなかいません。

感覚のある表現とは?

強弱やバランスと取ってくれるピアニストはいます。でもそこに感覚がついてくる人はなかなかいない。では感覚とは何か?

よくピアノのレッスンでも言う人がいるかもしれませんが、その音を強く弾くなら「どう強く弾くのか」が重要なのです。「強さ」にも様々なバリエーションがあり、硬い柔らかいまでは考える人が多いですが、そこに音色や重み、深さ、そして前後のつながりを考えられる人は少ない。むしろ、アマチュアの吹奏楽ではそういう「不確か」な部分ばかり教えられて技術を教えられず、そのための技術を学ぶはずの音大ではそういった「不確か」な部分は無視されやすい傾向にあると思います。日本のオケが世界の一流とみなされない一つの原因がここにあるのではないかと個人的に思います。若年で国際コンクールで優勝する人が少ないと言うのも同じだと思います。

技術とは感覚を音として表出するテクニックのこと。「悲しくて泣く」という表現をするときに、悲しいことを思い出して涙を流しながら演奏できるわけではありません。管楽器で嗚咽が漏れたら音が出ませんし、ピアノだって涙が鍵盤に落ちても弾きづらくなります。その「表情」「感情」などを出すスイッチがあり、その音を出す感覚に切り替わって音に変換するのです。その変換スイッチを身につけるのが表現技術を学ぶということ。もちろん、前後の流れがありますから入れ込み方やその度合いによって変わりますが、昔、吹奏楽の旅という番組でやっていたような大雑把なものではなく、その場面は細かく、どんどん移り変わっていきます。

そしてこの感覚を共有すると言うのが一番大事なのです。

たとえばアクセントを一緒に演奏するとしてもそのアクセントがどんな強さで、どんな深さで、どんな表情でということが合っているかが大事なんです。そしてそれはお互いに違うことを考えて違う感覚で弾いても良いのです。出ている結果が合っていれば。この感じ、ご理解いただけるでしょうか?

これはとてもマニアックな感覚ですが、大きく違うのです。これについては私のセミナー等で「感覚」について解説しています。

もちろん、その感覚が合うか合わないかもあるわけで、これが千差万別あるわけですからアンサンブルというのは難しいものです。

その点、齋藤里菜女史は素晴らしいセンスをお持ちだなと感嘆しました。

伴奏ではない

ピアノと管楽器の曲はたくさんあります。二重奏やそれ以上の曲においても、ピアノの比重は大きい。音の量が全く違うわけですから、モーツァルトとベートーベンが名作を残したピアノと管楽器のための五重奏曲(ピアノ、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット)でもピアノ対管楽器という構図になります。

ですから、ソロを気遣うのはもちろんですが、日本語の「伴奏」というイメージではないのです。もちろん、オーディションではソロを立てて弾いて欲しいですが、コンサートでは違います。対等、または曲によってはピアノの方が比重が大きいわけです。

独奏楽器と演奏するからといって「伴奏」という枠におさまらないでほしいというのが私の考えです。その点、齋藤さんとの共演はデュエット感のある楽しいものでした。

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実は笑顔でいてくれるのは嬉しい

私の場合、トークを多くしますが、この時にトークに加わってくれて、笑顔でいてくれるのはとてもありがたいことです。

実は「トークは苦手だから」といって無表情でいるピアニストは多いのですが、このトークの時に一緒の空間にいてくれる人ってなかなかいないし、すごくありがたいんです。どちらかといえば女性の方が共感力があって得意なイメージですが、実際、女性演奏家でもなかなかやってくれる人がいません。

齋藤さんはその点でも素晴らしい。彼女自身、ソロのコンサートでトークしているのもあるんでしょう、私が話している時もちゃんとその空間に居てくれて、笑いどころは笑ってくれるし、振ればちゃんと会話してくれるし、いつも明るく対応してくれるのはとてもありがたいし、みんなが好きになりますよね。

私の生徒さんたちの発表会でピアノを弾いてもらっている武田朋子さんもその雰囲気が素晴らしいのです。そういう方は人柄の信頼感があるのです。ソロでピアノと合わせる機会のない緊張している生徒さんの対応もそういう方だと安心して任せられます。かつておしゃふぁごにもご出演いただきましたが、上に載せたような後ろで笑顔でいてくれる写真が増えるんです。こういうコンサートのトーク場面での写真っていくらお客さんが笑っていてもお客さんの顔は写らないので共演者が笑ってないと楽しそうじゃないんですよね。そしてもちろん笑っているお客さんも舞台にいる人がみんな笑っていないと雰囲気が和やかにならず笑っちゃいけない雰囲気が出てしまいます。この笑顔でいるってすごく大事。

ということでおしゃべりファゴットですからもちろんトークもありますが、齋藤さんとの会話も是非お楽しみください。

今年最初のおしゃふぁご。ぜひお越しください♫

チケットは下記のサイトより事前決済となっております。学生はメールにてご予約ください。

チケット 一般3500円
お申し込み(事前決済)
https://reserva.be/artscadenza/reserve?mode=service_staff&search_evt_no=bfeJwzsjQxtDAGAARVATw
学生 2000円(要予約、当日支払い)
お申し込み cadenza2020.09.01@gmail.com
8:31おしゃふぁご

一年ぶりの共演はもちろん、ドイツ留学でどう変化したのかも楽しみです!

会場にてお待ちしております!

それではまた。

蛯澤亮でした。

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