いざよい、怪異の人面魚

真っ暗闇を少しだけ抜けた、十六夜に船が難破した。ある人面魚が人命救助を行ったが、魚は人間に恋がれるほど惹かれたが、なんせ人面魚なる身の上だった。海の怪異たる、ささいな怪異の端くれたる粗末な身の上だ。

だから、人面魚は自分を人間にするようにと魔女に懇願しに出向いた。魔女は依頼をまっとうした。魚だからしゃべれないけれど、類まれなる美女に変身をさせた。

さぁ、いざ上陸をして、人面魚こと人魚姫は知ることとなった。この世で誰よりも美しいという事象は、正義だ。皆が人魚姫に便宜をはかってくれて城のメイドにも雇われて、人魚姫はあの十六夜に出会った王子様に再会できた。

王子様は、魚の研究に熱心になっていた。

「私の身の丈よりも巨大な魚に助けられたのさ! いったい、なんだったんだろう。ぷかぷかしていたら陸地だったんだ。あの魚はいったい、どんな魚なんだろうね?」

人魚姫は答えなれない。胸がきゅっとした。

そして、あらゆるものを後悔した。王子様を助けたこと、でしゃばり。身の丈にあわぬ人界との関わりを持ったこと、浅はか。人魚姫になってまで美しくなってみせたこと、無駄な努力!

王子様は、世界各地の図鑑をひろげて、十六夜の巨大魚を捜していた。人魚姫は、そんな王子様に紅茶をそそぎ、休憩をうながし、それから退出して誰にも見られない裏庭で少し泣いた。正解はわからないけれど、間違いがあったことはわかった。わかった。わかる。

すべて、十六夜に迷った果てのこと。


END.

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