海の嫌われモノ

人間は海の死骸を食べるらしい。搾り取ってかじりつく。捻出してかじる。石油、深海の潮水。死体にむらがる苔みたいに、へばりつくほどの執念でこのところの人間たちは死骸をあさり続けている。

人間社会でも、死体を漁る輩なんて、喜ばれるものではない。
海でだって変わらない。

ゆえに、海に棲む高度な生命体は、人間と名を言うときにはほとんどの場合、人間をバカにして、小馬鹿にして、嘲っていた。今までの歴史で人間を可愛がるのは、人魚姫の一族くらいだ。

(それだって、セイレンとしての彼女たちが、人間のしゃれこうべを面白がって集めているくらいで、人間や、作家の想像する『愛情』とはかけ離れている)

つまるところ嫌われものなのだ。
人間たちは。

人間たちが、ゴミ箱にたかる虫を嫌うように。うじ虫を嫌悪するように。死骸を忌避するように。

だんだんと、海のなかでは、人間の居場所はなくなった。人間の知らぬ間に。

はてさて、陸のうえでは?

知らぬ間に、私たちの居場所は、無くなってはいやしないだろうか。まとまらない世界会議のニュースを見ながら、貴方はふと、心配に感ずるのである。


END.

読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。