落ちた穴のした

穴には底がない。人間の業がなせる技か、堕ちてしまうと果てがない。果てしなく落ちつづける。

飛び降りで死のうとすると、死亡者の胃には穴が空いているという。飛び降りていくなかの急激なストレスにより、胃に穴が空く、というのだ。

それでも、死ねれば幸せだ。
死にきれなければもっと堕ちる。落ちたのに、さらなる地獄がまた幕を開ける。飛び降りは相当な高さがなければ、賭けである。
そして人間には恐怖心があり、飛び降りのさなかに一瞬で胃に穴を開けるほどの苦痛であり、高層マンションからの飛び降りは実は少し、件数が少ない。

ただ、怖いから。
それだけだ。

その高さこそ、救いになる、
けれど怖いから低めの階層から落ちて、死にきれずにさらなる地獄に堕ちる。
人間とは業に嵌まればどこまでも堕ちる。

さらに、生まれついての業がなせる不幸も多かった。それが人間である。生まれついての環境、親、立場。それがまず個々人によって穴の大きさを変えてしまう。

穴が見渡すかぎりに大きくても、本人が美しければ、美醜の問題でどうにかなるなら、そこから這い上がるものもいる。
しかし努力ではカバーしきれないものもある。

人間は、平等ではないのである。
人間は、平等ではないのである。

人間には、巨大な脳と手足があるから、地球という星そのものにも穴を開けていく。これがもたらす破滅。それこそは真に平等な破壊をもたらすだろう。

でも、おそらく最後の人類、たったひとり、少数残っていく人類という人々は、それこそ、最上流の上流階級の人間であろう。

人間は、落ちていくスピードが、そも違うのだ。
人間は、平等ではない。

人間は、平等ではない。


END.

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