神様の粘土細工とひな祭り

海でも灯りをつけることはできた。発行する魚を連れてきて、或いはかれらの海域にいって、ときおり人魚たちは海灯りを楽しむことがある。

行事というほど大層ではない。習慣というほど頻繁ではない。ただ、その日の気分と、その気分になった人魚が人気者か否か、それに尽きる。人気者でないと「ふうん。いいね」で話は終わるので、人魚たちも所詮は神の創造物、俗物っぽいところがあるのである。

人気者が言い出すと、「あらすてき」「やってみましょう」人魚たちはわらわらして寄ってくる。人魚たちは何十匹もの集団で海域を横断し、深海へと潜ってゆく。

そして神秘のカラフルなぼんぼり、深海魚たちに囲まれながら、人魚たちだけの時間を過ごす。
いわゆる女子会である。

それが人魚のひな祭り。所詮は人魚も神の作品であるから、証拠に上半身なんて人間そっくりのへんてこなデザイを施されているから、人魚たちは、ごく自然と人間たちと同じようなことを結果的にしていることが多かった。例えば、ひな祭りとか。

所詮は神の手による粘土細工。不老不死にして悠久を活きる人魚でさえ。人気者でさえ。どんな命でさえ。

だから、私たちは、一瞬を楽しむべき生きものだった。神の気分で全てが変わり、明日には地球だって爆破されてるかもしれない。

だから、今はひな祭り、楽しみましょう。
みんな、みんな、命あるものみんなで。

灯りをつけましょう、ぼんぼりに。


END.

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