ギリシャ魔女と現代人魚姫

砂糖の味がするほどあまい、あまい、恋人たち。いつも体を密着させて語らうから、あつあつだ。海の底より地上を眺めていた魔女は、海の中につくった『水面』からこれをながめて苦渋の面持ちとなる。

「ギリシャ神話の時代ならさぁ、遠慮なくカミナリを落としたりさぁ、片方を蛇にしてやったりさぁ、合法だったわけ」

「違反ですわ魔女さま」

「ギリシャの時代ならさぁ、風の精霊だろうが人魚姫の亡霊だろーがなんでも殺してよかった! コッチの気まぐれでさ!」

「まだ、神にしか権利がなかった時代の話を話す、あなたこそ亡霊の化身では?」

「人魚姫。アンタ、うちにわざわざきてそうやってイヤミを言うなんて、純真無垢な乙女はどこに消えたんだ? さっさと地上に戻りな!」

「魔女さまが、前の私を消したのですわ。あれから300年、私も神経が鋼の硬さになり、太さは楡の木の幹ほどもあります。こうして自在に動けるのだから、魔女さまに、こうしてお礼まわりさせていただいているのです」

「お礼周りの意味がさぁ!! ギリシャじゃないわ、現代ヤンキーなんだわ!!」

「これも、精霊の進化ですわ。魔女さま」

「俗世に塗れただけだろがいっ!!」

たまに、ギリシャ神話の生き残りな化石魔女さまも、正論は言う。


END. 

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