勝島さんのあぶく銭の言い訳

勝島さんに金を貸してもすぐあぶくになって消えちまう。酒にしちまう。パチンコ店に入っちまう。女と遊んじまう。ぶくぶくしたあぶく銭しかもたない勝島さん。

小学校からの友人がある日、あらためるように、かしこまって勝島さんを注意した。そのとき、勝島さんはシラフで酔ってもない。真顔。でも、歯を見せて『ニヤリ』。

「うちのはなぁ、人魚姫なんだわぁ。なんでも祖先が王族で人魚姫を泡に変えちったフッたほうの色男の血筋とかで? だから、金も女も名誉もみぃんな溶けて消える運命を背負ってるわけだよ。うちは、みぃーんな、なあ。しょうがねえ話なんだ」

荒唐無稽だった。友人は、酔っぱらいの与太話と切り捨てたくなったが、にしても顔つきに凄みがある。勝島さんは酔ってはいない。今は。

金の催促をされて、気迫にのまれてうっかり千円を渡すと、あっさりすぐに勝島さんは酔っぱらいになってヘロヘロになったけど。

真相は闇、である。


END.

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