フルーティのおしまい
ロリポップにして、ゆめかわ、メルヘン、そしてフルーティなショップ。そこで提供されるマーメイドのドリンクは、やっぱりポップでキュート。なので『映える』。
インスタバエめ、なんてインスタ蝿め、バエなんて男やら女からも悪口は聞こえる。
映えるを揶揄してバエをつけるんだから、皆やっぱり性格がわるい。本当は人間の性格なんて皆どこかしら歪んでいるのでは?
……なんてことを、メルヘンキューティーフルーティなマーメイド・ドリンクに生クリームを絞りながら、店長は考えた。
これをハエニ例える連中がいるなんて、ポップメルヘンな世界に棲む店長には、絶対にありえないことだ。まずないことだ。許せないし許さない。
きれいに髪の毛をトゥルンと巻いた女子たちを店内に迎えながら、マーメイド・ドリンクを提供しながら、店長は、ふと、竜宮城が海に沈んで、この世にほんもののマーメイドは見当たらない理由を一人で想像するのだ。
バエがとびかい、ハエがとび、女の子はほいほいと飛びつく。あら、ハエみたい。あれ? ここは、フルーティな甘い世界なのに。気がつけばハエがたかる。現実世界みたいに。
やがて、店長は貼り紙を出した。
たまにあることだ。大人気の有名店。本当に、たまに、あるのだから、ヒトのココロはよくわからない。こんなにキュートな可愛いものを愛好する技術者である店長。
彼は、ある日、貼り紙を壁に貼った。これでもう煩わされない。煩くない。バエも、映えも、なにもかも。
『店内、撮影禁止!!』
END.
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