タイムアウト

水の星に棲む人魚姫たちは、本当はソラをどこでも泳げる。酸素なんて元から必要としてないのでソラだって泳げるのだ。

彼女たちは、そろそろかしらと、深層海流まで組み上げているポンプを通り越しながら話し合う。潮が引く時間かしら。日が落ちる時間かしら。このホシは、けっこう居心地がよかったから、残念。

深層海流を組み上げているポンプは、人間の海上工場に繋がっていて、こちらはセキユではなくてミズそのものを汲み上げる。これを人間という生きものが飲めるように改良して、なんだか海に流れてくる、あの透明のばきぼきする容器に詰める、とか。人間に化けた変わり者人魚姫の報告だ。

人魚姫たちは、ゴミ溜めになって濁ったポイントを避けて泳ぐ。日に日にそうしたポイントは増えるから、最近は蛇行しながら泳ぐのがクセになってしまった。
それも、ソラにあがれば、まっすぐ元通りになるのだけれど。

「明日にする?」
「100年後にする?」

人魚姫たちは、宇宙にもどって、別のホシを求めて漂流するタイミングをおしはかる。
ちょっとご近所にでかけます、くらいの感覚で。

あとに残すは、ゴミばかり。
この星で熟れてしまったゴミばかり。

星が、ゴミで埋め尽くされる前に、人魚姫たちはホシを去る。

残り時間はあと、すこし。


END.

読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。